謝罪
グレイが泊まっている宿に一台の馬車が留まる。
恰幅のよい大柄の男が降りてきた。
「ん?」
「何だ?
コフィの匂いか?」
この宿はコフィを提供しているのだろうか?
「よろしいか?」
「すまんが、コチラに‘グレイ’という冒険者が逗留していると思う。 繋ぎを頼む。」
「あ、ハイ。 すみませんが何方様でしょうか?
お名前を伺っても?」
女将が対応してくれている。
小さいがしっかりした宿の様だ。
「や、すまん。 私は‘ヒューズ’の冒険者ギルドでマスターをしている‘バース’と申します。」
「は? ギルドマスター!??」
「ハイ、グレイ様は当方にお泊りになっています。
今は中庭の方におります! 」
慌て気味の女将がギルマスを案内した。
「コチラでございます。
グレイさん、お客様ですがよろしいですか?」
慌てても確認は怠らない。
「どちら様でしょうか?」
シフォンが受け取る。
「ハイ。
ギルドマスターの‘バース’様です。」
「よお、いいかい?」
コチラの返事がある前に、ギルマスが進み出る。
「謝罪しにきた。
きちんと謝らせてもらえないだろうか?」
え?
謝る!??
「俺が謝罪するんじゃなくて?」
困惑しているとシフォンが補助してくれる。
「先程の女性職員の件では?」
「旦那様の話からですと、ギルド側の失態ととれます。
一歩間違えれば大惨事になっていたかと!
部下の管理不行きです。」
シフォンはスッパリと言い放つ。
「奥さんの言う通りだ。 コチラの重大なる過失だ!」
捉えようによっては失礼とも言える言動にも動じない。
「で。 嫁さんでイイんだよな、コチラさんは?」
ギルマスが確認をとってきた。
「あ、ハイ。 俺の嫁………妻のシフォンです!」
シフォンは軽く頭を下げる。
「ん。 確かに‘ちゃんとした’女性だな!」
「‘デュッセ’のギルドマスターの‘バース’だ。
よろしく。」
ギルマスはきちんとシフォンに対し自己紹介をする。
受けたシフォンは改めて頭を下げた。
と。
「旦那様、‘ちゃんと’とはどういった意味での言葉でしょうか?」
空気が冷える!
おい、ギルマス。
何口走ってんだぁ〜!!!?
「いえね。 国元から連れてきたのは‘成人’か?
って訊かれたの!」
「それだけ! 他に、意味はないっ!!!!」
女性には‘禁句’が多々ある。
笑い転げるギルマスがいた。
「いや。 本当に面白いな、お前さんは!」
少し落ち着いてきた様だ。
「じゃ、真面目な話しだ。」
「先程は誠にすまん。
仕事柄〜‘遊び’が過ぎた様なんだ!」
「ココは場所がら‘いろんな’人間が出入りするんだよ。
中には‘侵攻用’の工作員もいる………。
冒険者とかに化けてな!」
「そんなんで、ココでは‘調査部門’を設置しているんだ。
所謂、人の防護壁だ!
‘シエル’はソコのメンバーなんだ。」
「お前さん‘グレイ’を、ちょっと腕の立つ‘普通の’冒険者だと思ったらしい。」
粗方の事情・経過説明をしてくれる。
「改めて、謝罪する。」
「グレイが踏みとどまってくれたお陰で惨事にならずに済んだ!
グレイの魔法攻撃が放たれていたら〜お前を罪人にしてしまう所だった………。」
「‘シエル’の命を獲らずに済ませてくれて感謝する!」
ギルマスは深々と頭を下げた。
「解りました。 謝罪を受けます!」
「コチラも否がないワケではないので。 この時点で終わりにしましょう!」
握手で和解を契った。
「で。
着いた時から気になっていたんだが…………。」
「この匂いってコフィだよな?
とても良い匂い……………いや、香りだ♪ 」
ギルマスが鼻を動かしながら、香りを愉しむ様に訊いてきた。
「ハイ。 露店で見つけて商会から購入しました。
俺はこの淹れ方が好きなんです♪ 〜飲んでみますか?」
「頂く!」
ギルマスは即答だった。
コーヒー愛好家が増えそうだ♪
あ。
バルトルさんに怒られるか!???
コフィから始まった‘人’との繋がり。
この繋がりが、グレイの今後の人生に永く関わっていきます。




