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パラドックス ~旅をして知る世界の謎~  作者: ゆきたか
第一章 師匠との出会い、そして旅立ち
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第4話 秘境


 僕たちは古代龍が潜んでいる『アビスス』という森に向かっていた。

これがシエンさんが受けてる依頼だ。


――――――――――――――――

 魔物危険度:Sランク

    報酬:金貨500枚

  討伐対象:古代龍

  依頼内容:アビススに潜む古代龍を討伐し、その遺体を回収せよ。

――――――――――――――――


 向かう途中でシエンさんにいろいろ分からなかったことについて聞いた。

 まず古代龍とは、「龍」と言う魔物の一種らしい。子供でも10メートル、大人になると最大で30メートルを超えると言われている。そしてその力は強大。その中でも古代龍はとりわけ絶大な力を持っていて、人々の間では別名『世界最強の生物』、『魔物の王』などと呼ばれているそうだ。シエンさんがこの街『イミティス』に来たのは、イミティスの冒険者ギルドに、Sランクの魔物討伐依頼があることを風の便りで聞いたからだそうだ。

 話を聞けば聞くほど不安になってくる。僕の体はいつの間にか震えていた。

 すると突然シエンさんが僕の頭を撫でてくる。


「心配すんな。君を危険に晒すようなことは絶対にしない」


 そう言ってにっこりと笑った。その笑顔を見て、まだ少し怖いが、体の震えがさっきよりも落ち着いた。

 シエンさんの笑顔はどうしてこんなに温かいんだろう。そう思いながら、僕は森に向かって歩き続ける。




―――――――――――――――




 しばらく歩いた後、僕たちは広大な森の前で立ち止まる。

 ここがアビスス....視界に収まらないほどの広大な森。

 そしてその森の中はとても暗く何があるのか分からない。今は昼間で太陽は高い位置にある。それでもこの森の中はまるで夜のように暗かった。

 一言で言うなら「深淵」。どこまでも闇が続いていて、底が見えない穴の中を見ているようだった。


「よっと」

「わっ!」


 アビススを見て絶句していると、シエンさんが突然僕のことを抱きかかえてきた。


「この中に入ったら絶対に声を出すな。いいな?」

「は、はい」

「よし、そんじゃしっかり捕まってろ」

「え?...うへっ!」


 シエンさんは森の中に向かって走り出した。速い。びっくりして変な声出ちゃった。

 

 中に入ると本当に何も見えない。目を開けたり閉じたりしてもほぼ明るさが変わらないほど。こんな真っ暗な場所に本当に魔物が潜んでいるのかな?けどシエンさんはお構いなしにどんどん奥へと進んでいく。




 


 走り始めてから十数分後、ようやく目が暗闇に慣れてきた。

 さっきまで全く見えなかった森の中が見えるようになった。日の光が当たってないからか、地面には草一本生えていない。だが、地面に光を通さないほどの大量の葉が生えてる木がたくさん生えていた。

 シエンさんは、こんなに視界が悪い中、目の前にある大量の木をしっかり避けながら進んでいた。しかも速度が落ちる気配が全くない。自分だったら絶対に途中で木にぶつかる。

 そこからしばらくすると、奥の方に光が見えた。シエンさんはその光に向かって走っていく。


「着いたぞ」


 森の中を抜けた。そこにはとても大きい湖があった。


「わぁ」


 僕は思わず嘆声をもらす。湖の水はガラスよりも透き通っていて、日の光が水面を反射してまるでダイヤモンドのように輝いていた。こんなに水が透明で綺麗な湖があるんだ。

 だがこのあとシエンさんが発した一言で僕は衝撃を受ける。

 

「これ湖じゃなくて《《泉》》だからな?」

「えっ!?」


 今なんて!? 泉!? こんなに大きい泉があるの!?

 するとシエンさんがこの泉について説明してくれた。


「この『アビススの泉』はな、アイテール大陸の秘境の一つで世界最大の泉って言われてんだ。多くの冒険者や商人がこの泉を一目見るためにアビススに入っていくんだが、そのほとんどが消息を絶っている。この泉に向かう途中で方向感覚が狂って、森の中で彷徨い続け、そのまま魔物に殺されちまうからだ」


 そのまま説明を続ける。


「この森の危険性が認知されている今でも、この泉のために森に入って消息を絶つ人があとを絶たない。冒険者はともかく、商人が命を懸けてまでこの泉を目指す理由は……まあこの水を飲んでみたら分かる。一回飲んでみろ」


 そう言われて僕は泉のそばでしゃがみ、手ですくって飲んでみる。


「っ!!?」


 すると身体に変化が起きた。まるで自分の身体を新しく作り変えられるような感覚に襲われる。だがそれは数秒くらいでおさまった。そして僕は慌てて自分の体に異常がないか触って確認してみる。確認しているうちにあることに気づいた。


 「あれ?」


 僕は思わず声を漏らして首を傾げる。

 シエンさんはニヤッと笑った。


「気づいたか? つまりそういうことだ」


 身体にあった無数の傷や痣が一つ残らず消えてる。腕も、足も、お腹も、顔も、あらゆる個所にあった傷や痣が全て。あと少し喉を痛めていたがその痛みも消えている。


「し、シエンさん。これは....」

「この泉にはありとあらゆる傷や病を治す力があるんだ。その効き目から別名神の秘薬(エリクサー)とも呼ばれている。そしてそれを手に入れるために金に捕らわれた馬鹿な商人どもが護衛などを数人雇ってこの森に入っていくんだ。この森の魔物危険度は最低でもBランク以上あるから、中途半端な実力の護衛を数人雇っただけで生きて帰れるはずがねえのに」


 シエンさんは何かに呆れたようにそう言った。

 でもその商人さんたちの気持ちも分かる。この水を高い金額で売ればきっとものすごい稼げるに違いない。それほどの効き目だった。こんなに気分が良いのは初めてだ。今ならなんだってできそうな気がする。

 

 この泉がすごいことは分かったけど、なんでここに来たのだろうか?この森に入ったのは古代龍を討伐するためであって、この泉が目的じゃない。

 僕はそのことについて尋ねた。


「何でここに来たんですか?」

「まあ、理由は二つある。一つ目はただ単に君の傷と痣だらけだった身体を治してやりたいっていう純粋な俺の優しさだ」


 シエンさんはニカっと笑う。


「そして二つ目は、この森はとても広いが、魔物が水分補給できる場所がここ一つしかねえんだ。つまりここで待ってれば、いずれ喉の渇きを潤すために古代龍が水を飲みにやってくるはずだ。古代龍を見つけるまであんな暗い中ずっと探し続けるのは、俺は嫌だし君だって嫌だろう?」


 なるほど……すごい。そこまで考えてたんだ。

 シエンさんに出会ってからずっと驚かされてばっかだ。

 僕はいつの間にかキラキラした目でシエンさんを見つめていた。


 するとどこからか、大地が揺れるほどの大きな足音が聞こえた。


「お! 来たな」


 シエンさんは僕を抱きかかえて後ろに生えていた木の枝に飛び移った。

 数秒後、木の陰からとんでもなく大きい《《怪物》》が姿を現す。



 古代龍の..........お出ましだ。

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