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異世界出会い系・齋藤《サイト》  作者:
異世界出会い系サイト
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後日談


 目を覚ますと知らない天井であった。

 身体を起こそうとすると激痛が走る。


「ぅづっ!」


 身体中の痛みであれが夢では無かった事を実感する。

 しかし、最後の記憶が定かではない。

 最後、蟒蛇とぶつかりあって俺は勝ったのか?それとアクナは無事なのか?


 痛む身体を無理して起こす。

 そこで布団の中に何かいることに気づく。


「あったかい?……ん?アクナっ!?」


 布団を軽く捲るとそこにはアクナがうずくまって寝ていた。


 何故、アクナが俺と一緒にベットに寝ているのか全く訳が分からない。

 困惑が頭の中で広がる一方、アクナが無事な事に安堵して肩を落とす。


「……んっ」


 アクナが瞼を擦りながら身体を起こす。


「あーおはよう」


「ん……おはようなのです」


 まだ、寝ぼけているようで何処かうつらうつらだ。


「あの後、何があったのか知っているか?」


「んー、あの後……」


 ぼさついた髪の毛を弄りながらアクナは暫し考え込む。

 そこで始めて驚いたように目を丸くしたかと思うと今度は顔を林檎のように真っ赤に染まる。


「ち、違うのです」


「え?何が?」


「これは違くて」


 もごもごとひたすら何かを否定している。


「あの、ですからこれは、貴方と寝ていたのは……」


 下手くそな言葉で喋るアクナ。

 相当動揺しているようでしどろもどろであるがアクナが言いたいことが何なのか何となくロフトは察した。


「あっ……」


 一緒のベットに寝ていた事に対して否定しているんだ。

 そこはあまり考えないでおこうと考えていたのにこんな反応をされてしまうと此方も気恥ずかしくなってきてしまう。


「いや、気にしてないというか、寧ろ嬉しかったし」


 考えてみれば朝チュンで女の子が横で眠っているなんて経験今までしてこなかった。

 一瞬ではあるがなんかリア充の気分を味わえた気がした。


「嬉し!? か、かかか勘違いするなです!これは治癒の魔法の為だったのですっ。治癒魔法は発動中常に接触していないと駄目なので渋々一緒のベットにいたわけでっそうでなければ純潔と貞操を重んじるエルフが人間と同衾する訳なくてなくて」


「治癒の魔法?」


 火や風以外にもそんな魔法があることに驚く。

 しかし、考えてみれば折れた腕が痛むが動くようになっているし、火傷の後もない。


「これ、アクナが治してくれたのか?」


「……大体はそうなのです」


「ありがとう。おかげで入院生活はまのがれそうだ」


 高校時代、骨を折って散々入院したのにまた病院生活を送らなきゃならなくなるのは嫌だった。


「感謝するのですよ……」


「けど、治癒の魔法って凄いな……一日其処らで骨がくっつくなんて」


 俺の言葉にアクナは呆れたように呟く。


「何を言ってるのです、お前はもう一週間も寝てたのですよ」


「え?一週間!?」



 ロフトがその驚愕な事実を聞いてまず最初に思ったのは仕事の事であった。

 経った一年しかまだ働いていないが仕事に対しての責任感はある。一週間も連絡もいれずに休んだとなるとかなりまずいだろう。

 そもそも、一週間も行方を眩ましたとなると親が捜索願いを警察に出しているに違いない。

 帰った後の騒ぎを想像して頭を抱える。


「どうしたのです?」


「いや何でもない……それでアクナ、蟒蛇はどうなったんだ?というか、俺が意識を失った後一体何があったんだ?」


 ノックの音と共に嗄れた声が聞こえた。


「入るよ」


「あ、族長……」


 アクナが族長と呟く。

 現れたのは老齢の女性であった。

 見た目だけで言えば80位だろうか。

 皺だらけであるが整った顔立ちをしており、若い頃は相当の美人だった事は分かる。



「どうやら、目覚めたようだね?英雄さんよ」


 英雄。それを指すのは自分以外この場にいない。

 しかし、自分が英雄だなんて呼ばれるのに強い抵抗を覚えてしまう。


「何故、族長は気付いたのですか?」


 アクナは動揺しつつ族長に尋ねる。

 確かにまだ起きてから時間は幾ばくも立っていない。


「そりゃあお前さんの魔力が乱れていたからね」


「なっ……」


 その意味がロフトには分からなかったがアクナは何を言い出すか意味しているのか分かったようで物凄く動揺していた。


「アクナに感謝しな。一週間つっききりでお前さんの看病をしていたんだから」


「アクナが」


「人嫌いのこの子がかいがいしく身体を吹いたり傷を癒したりしてるんだからたまげたもんよ」


 そこまでされていたことを知ってしまうと気恥ずかしさと申し訳なさが沸いてきてしまい何て言えばいいか困ってしまう。


「……そうだったんですか」


「ぞ、ぞくちょう!? 」


 一方暴露されたアクナは動揺を露にしていた。

 その様子を見て族長は嬉しそうに笑みを浮かべる。



「良いことだ。なあ、英雄さんよ」


「え?はい。えーと、アクナありがとう」


 ロフトの感謝に気まずそうに目をそらしながら少女は答える。


「……どうもなのです。で族長は何のようで来たのです?」


「ん?ああ悪いねえ、二人仲睦まじくしてるときに邪魔しちまって」


「してないのですっ。冷やかしはしないで用件を話すです」


「おやおや怖い子だね。まあいいさ、用件も何も事の顛末を英雄さんに話してやらないと困るだろうさ?お前じゃ知らない事情もあるしね」


「……手短に頼むです」


「ふーむ……そうさね、お前さん喉乾いたろう?アクナ茶を出してなりなさい」


「……それは、私は席を離せと、そういうことなのですね」


 アクナは何処か不満気な様子を見せるも立ち上がり、部屋を出ていた。


 アクナが席を外したのを確認すると俺はずっと気になっていた事を老婆に尋ねた。


「あの蟒蛇は死んだんですか?」


「……ふむ、死んださ。お前さんが確かに殺したさ」


 蟒蛇が死んだ。

 それを聞きほっと息を吐く。


「あ、けど、あれは……そもそも殺して良い存在だったのですか?一応、森の神だったんですよね?」


「蟒蛇様は確かにこの森に君臨する神だった。だが、その崇拝は力による恐怖から基づく物だ。好き好んで崇め奉っていた訳ではない。だからお前さんは英雄なのだよ」


 考えてみれば元来、神とは畏怖の対象だった。

 畏敬の念を込めあの蟒蛇が神と呼んでいたとするなら、討伐しても何も問題はないと言うことだ。

 そして神を討伐するなど只の人が出来る筈もなく、自分が映画と呼ばれるのも納得がいくがどうしても慣れない。


「その英雄ってのは慣れないから普通にロフトと呼んでもらっても良いですか?そもそも自分は英雄の器なんかじゃないんで」


「まあ、わしは構わんよ。外の連中がどう呼ぶかは強制するつもりはないが」


「そこは皆に周知して貰いたいのですけど」


「周知位はしてやるさ。強制は出来ないと言うだけ」


 その言葉に何の違いがあるのだろうか?

 そんな疑問が顔に出ていたようで。


「わしの言い回しが気になるかい?簡単な話さ。我々は閉鎖したコミュニティで生きている一族だだからね。他人を縛る行為はしてないようにしてるのさ」


「話がそれちまったね。まず、倒れたお前さんを此処まで運んだのはアクナだ。しかし困ったことに着いた途端、アクナは気絶しちまったのさ。まあ、今考えれば仕方のないことさ。一日近くかけてこの村まで帰ってきたんだから」


「アクナも俺も気絶してしまった。もしかして蟒蛇の生け贄から逃げてきたと思われましたか?」


「ふむ、頭の回転が早いね。そう誰もが思ったさ。そして恐怖した。だから急ぎ生け贄を出さねばならないと思ったさ」


「アクナを……また生け贄にしようとは思わなかったんですか?」


「かっかっか、随分と直球な事だ。ま、皆思わなかったさ。アクナだからね」


「アクナだから?」


「始めて会ったアクナはどうだった?」


「無表情で、死を受け入れていました……」


「若くして親が死んでしまってからはあの子はずっとそうさ……自分のせいで親が死んだ事をずっと後悔しているのさ」


「アクナのせいで?」


「あの子の親は蟒蛇様に食われたのさ。アクナを庇ってね」


「蟒蛇は毎年生け贄を出せば襲わないんじゃなかったんですか?」


「正確には違う。部分的に生息を許して貰えるのさ。言わば我々は家畜。畜舎から逃げた家畜は問答無用で食われるのさ」


「それがアクナ達だったってことですね」


「ああだからだろう。今回、生け贄に立候補したのは贖罪のつもりだったのだろうね」


 生け贄に立候補?


「立候補って……」


「知らなかったのかい?あの子が自ら生け贄に立候補したんだ」


「それは……止めな……っ」


 口から出そうになった疑問を噛みこむ。

 止めたけど、止めれなかった。

 そういうことだ。彼らエルフは生き方を強制出来ない。

 だから、止めれなかった。

 それは悔しかったに違いない。

 無力感を覚えたに違いない。

 だから、この言葉を口に出すのは余りにも失礼過ぎる。


「優しい人間だねあんたは」


「俺は、優しくなんてないです……」


「わしらは止めれなかった。彼女の選択を強制して曲げることは出来なかった」


「だからなのさ。アクナがお前を連れて村に現れた時、誰も責めようなんて思わなかったのは。優しくて賢い子だから自分が逃げたらどうなるかなんて良くわかっていた筈さ。それでも逃げてきたアクナを我々は嬉しく思った位さ。何かがアクナを変えたとね」


「それで誰が代わりの生け贄になるかは直ぐに決まったさ。そして、戦士たちと共に神殿に向かってもらった訳」


「直ぐに決まるものなんですか?」


「皆、まだ若いアクナを行かせちまった事を後悔していたからね」


「ま、結局それも無駄足だったがね。戦士達はさぞ驚いただろうね。神が殺されていたのだから」


 かっかっかっと可笑しそうに笑う。


「急ぎ戻った奴等は支離滅裂でね。全く話に成らなかったさ。唯一生け贄に名乗り出た子だけがね落ち着いて言ったのさ神が死んだとね」


「ま、その後は村中で大騒ぎさ。神を討伐するなんて偉業を達成したのだからね。だと言うのに肝心のアクナは部屋に籠って出てこない。お前さんが目が覚めるまで離れないって言うもんだから困ったもんさ。なあ、アクナ」


「族長、そろそろ押さえきれなくなりそうです」


 いつのまにか戻って来ていたアクナ。

 恐らく壁の向こうで会話を聞いていたのだろう。

 アクナは片手に竜巻を起こす。

 無表情であったがそれがとてつもなく恐ろしく感じた。


「すまないすまない。そう怒るでない」


 アクナは次に此方に振り向くと無表情ながら頬を赤く染め睨むような目で此方を見てきた。


「勘違いするなです。私は命を助けて貰ったお礼として当然の事をしたまでなのです」


「いや助けられたのは俺も同じだよ」


「助けた覚えなんて無いのです」


「ふむふむ仲睦まじいじゃないか。時間がアクナを変えると思っていたけど、やっぱ女は男でかわっちまうもんだね」



 途端、風が吹き荒れる。

 老婆の回りは穏やかなで微塵の風も起きない。

 恐ろしく速く精密な魔法。

 俺でなきゃ見逃しちゃうね。


「すまなかったよ。わしも年甲斐もなくはしゃいでしまったみたいだ。もう英雄なんていないと思っていたからね」


「次は無いのです」


 族長はロフトの方を向き直り、真剣な表情を浮かべる。


「ロフト殿、遅れながら言わせて頂く。アクナを、そして村を救って頂き感謝致す」


「いや、はい」


 深々と頭を下げる族長にロフトは戸惑ってしまう。

 しかし、ある疑念を思いだし、族長に尋ねる。



「……貴方は蟒蛇が火に弱いことを知っていましたよね?」



「かっかっか、可笑しな事を言う。何故、そう思うんだい?」


「あのお供え物には手が付けられた様子が無かったからです。お供え物としての意味が無いならする必要が無いのに何年、何百年もそうしてきたのに理由が必ずあると思ったからです」


「ほう」


「あのお供え物は蟒蛇の為の物ではなく蟒蛇を殺す誰かの為だったのですね」


 酒と武器。

 あれらは全て蟒蛇を殺す為の物だった。

 そう考えれば辻褄が合う。



「ふむふむ、賢いとは思っていたがここまでとは、まったくお前さんには本当に驚かされる。正解だ。そうさ、わしは知っていた蟒蛇の弱点をな。しかし、知っているのはわしだけだ。代々族長から族長へ蟒蛇の事を口伝されてきた」


「自分達で討伐しようとはしてみなかったのですか?」


 ロフトにでも為せたのだ。

 あれだけの量の武器や酒があれば誰にだって討伐出来たのではないかと思った。


「理由は幾つかある。そもそも火の適性を持たぬ我等では実現は難しい。それと蟒蛇は賢い。かつて我等が挑み負けたときに自分が火に弱いことをよく知っておる。だから水辺から基本奴は離れない」


「例外があの神殿って事ですね……」


「ああ、だが奴は恐ろしく感覚が鋭い。戦士たちを潜ませても直ぐに気づかれる。ましてや酒を蒔いて火をつける暇なんて与えてくれないさ。だから、それをお前さんが誤魔化したのは驚いたさ」


「それはまあ、運が良かったのかもしれません。僕の知る生物と同じ特長を盛ってたので。……それと火の魔法を禁忌としているのも蟒蛇が関係しているのですか?」


「その通りだ。火を使えば蟒蛇は我々を敵と見なすだろうからな。料理以外外で焚き火すらも行わん」


「だからずっと耐えてきたさ我等は。いつしか救世主が現れると信じてな」


「……」


「話が長くなっちまったね……邪魔者はそろそろおいとまさせてもらうよ」


「あんまアクナをからかわないであげて下さいよ」


 アクナのこの様子だと余り冗談が得意な方では無さそうだ。

 また来るとだけ族長は言って部屋から出ていた。

 それを見届けた後、アクナはため息を吐く。


「族長にも困ったものです……」


「それだけアクナが心配だったんでしょ」


「ま、そうかもしれませんね」


 アクナが向き直る。


「本題はここからなのです。ロフト、お前を呼んだのはきっと私なのだと思うのです」


 俺の無茶苦茶な理論を彼女はまだ信じてくれているようで。


「あの時、確かに思ったのです。自分で生け贄になろうと思っていたのにいざ目の前に為れば死ぬのが怖かったのです」


「まあ俺も死ぬの怖かったし普通じゃない?」


「そうなのです。それが普通なのです。そして絶対的な死を前にして諦めた者それが私。死を前にして立ち上がった者それがお前。ロフトは自分が英雄の器なんかじゃないって言っていたけれどそんなこと無いのです」


「いやいや、ヒーローって柄じゃないしな」


「そんな事無いのです」


「いや」


「貴方は私の英雄(ヒーロー)でしたよ」


 微笑むアクナにそう言われ、心臓がドキッとする。

 誰かに認められる事はこそばゆいけど、それ以上に嬉しかった。


「あ、ありがとう」


「それで呼んでしまったのは仕方ないのでわたしが責任をとってお前の面倒はみるのです」


「あー」


 どうしよう。


「感謝するのですよ。エルフである私が人間に尽くしてやるなんて普通あり得ないのですからっ」


「う、うん」


 どうしよう。

 普通に帰れることをどう伝えれば良いのだろうか。


「……考え物だな」




――――――――――――――――――――


深い森の奥。

スマホを片手に歩く青年の姿がある。


「ここはどこだ?」


青年はあたりを見回しながら、呟く。

その背には多くの獣の死骸の山。


「まずは、街を探さないとな」


青年は……


「斎藤俊平……いや!!出会い厨ロフト・シュバルツを俺は殺さないといけない」


否!!


山村俊哉は歩き出す。





一章完結です。評価、感想お願い致します。


もう一個の方作品頑張って更新します。

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