表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

戦隊物はややこしい

作者: よーも

 この物語は今は現代、詳しく言えば2020年7月、日本のとある地域の平和を守る三人の正義の味方の日常の物語である



 ”ミーンミンミン”とアパートの外でセミが鳴いている。うるさい、泣きたいのはこっちなんだぞ・・・。このくそ暑い時期に節電だかなんだか知らないがエアコンを止められたんだからな


 そう思いながらアパートの一室で畳の上にうつ伏せで倒れている少年がいた


「ただいまー。あれ、レッドだけ?イエローはどこに行ったの?」


 玄関からロングヘアーの少女が買い物袋を持って入ってきた


「お帰り、ブルー。イエローはデートだってよ」


 レッドと呼ばれた少年はゆっくり起き上がりながら買い物袋を受け取り、中からアイスキャンディーを取りだしくわえながら答えた


「へー、暑いのによくやるねー」


 ブルーと呼ばれた少女は買ってきた物を冷蔵庫に入れ同じくアイスキャンディーを頬張ほおばりレッドの横に座った


「アイツ何人彼女いるんだっけ、5人位か?」


「この前聞いたら27人って言ってたよ」


「そんなに居るのか・・・アイツ怪人で死ぬより女で死にそうだな」


「私たちは暑さで死にそうだけどねー」


「ハハハ、違いねえ」


 そんな話をしていると玄関が開いてメガネをかけた少年が入ってきた


「ただいま帰りました」


「お帰り、イエロー。暑かったろ?」


 "ほらよ"とレッドは言いながらアイスキャンディーをイエローと呼ぶ少年に投げた


「ありがとうございます、レッド。いただきます」


「しかしえらい早かったな、フラれたか?」


 レッドは笑いながら、横に座るイエローに聞いた


「いえ、今日はプールに行ったんですが人が多過ぎて帰って来たんですよ」


「そっかー、今日は一段と暑いからねー、仕方ないよ」


 と話をしていると部屋のテレビが勝手についた


「あっ、怪人が暴れだしたのか司令官?」


 テレビの前で身構えていると司令官と呼ばれた渋みのあるおじさんが映った


赤沢(あかざわ)拓哉たくや青原あおはら美琴みこと黄多野きたのしゅう。3人とも揃っているな」


「おう、赤沢いるぜ!」


「青原も居るよー」


「黄多野、待機しています」


 三人が要るのを確認した司令官は背景に地図を映した


「よろしい、怪人が町で暴れだした。すぐに向かってくれ」


「いいけどよー、交通費とかは・・・」


「ない、自らの足で行くか自腹でいってくれたまえ」


「デスヨネー、ハハハ」


「では諸君らの健闘を祈る」


 そう言うとテレビは電源が落ちた


「さて、気が乗らねえけど行くか」


レッド=赤沢拓哉が渋々外にでる


「悪いことする人は月に代わって、お仕置きよ!」


 ブルー=青原美琴が張り切って出ていった


「微妙に古いですよブルー」


 イエロー=黄多野秀があとを追って外に出る



 街では青い猫型怪人が暴れていた


「ふふふ、どうだい?僕の秘密道具・・・じゃなくて発明品の恐ろしさは」


 猫型怪人はお腹に付いているポケットから銃を取り出すとビルに向けて撃った。するとビルはあっという間に溶けてしまった


「フハハハハ!良いぞ猫型怪人ドラ○もんよ、その調子で世界制服計画を進行させるのだ!」


「ガルダー様、ドラ○もんではなくネコナンダーでふ」


 後ろで軍服を来たガルダーと呼ばれた男は悪の秘密結社セイフクダーのボスである。そしてそのとなりにいるのが量産型怪人デフォーである


「え?ネコナンダーって名前よりドラ○もんの方がしっくり来ないか?」


「きまふけど色々だめでふ。特に著作権でふね」


「悪がそんな物に怯えてどうするんだ!」


「ごもっともでふ。では・・・地球破壊爆弾を使うでふ、ドラえもん!」


「伏せ字は付けておけ!あと破壊しちゃダメだから!地球はいるからね!?ねえ、ドラ○もん?何で出そうとしてるの?しまってくれない?デフォーよりもボスの私の命令を優先して!」


 コントをやっているようにしか見えないが実際はかなり強い集団で国家機密を数分で盗み出すテクノロジーに加え軍隊が来ようとも物ともしない強さである


「そこまでだ!」


「うむ!?何奴!」


 ガルターは声のした方を向くと2人の少年と1人の少女がいた。少年たちは腕時計型変身アタッチメントに指をかざし叫んだ


「「「変身!」」」


 突如周りが強い光に包まれたかと思うとすぐに光が消え、3人の戦隊ヒーローがいた


「全てを壊すは全なる太陽、悪の野望を燃やし尽くすよ!アースレッド!」


「全てを癒すは聖なる水、悪の心を流してあげます、アースブルー!」


「全てを守るは母なる大地、悪の力を受け止めるぜ!アースイエロー!」


「「「地球戦隊、アースレンジャー!」」」


 戦隊物特有の決めポーズをして、三人はビルから飛び降りた


「うぬぅ!でたなお笑い戦隊!」


「「「はいどーも、三人そろってアースレンジャーでーす!・・・ってなんでやねん!」」」

 

 仕切り直して戦闘体制にはいるアースレンジャーとガルダーであった


「またしても私の世界()()計画を邪魔するか!アースレンジャー!」


 アースレッドに指を指しながらガルダーは高らかに叫んだ


「世界()()なんて絶対させない!あと人に指を指すな!」


 アースレッドも負けじとガルダーに指を指しながら叫んだ


「貴様も指を指しているではないか!人の事を注意する前に自分が注意するべきではないか!」


 そんな子供のケンカみたいなのをしている二人をよそ目にアースブルーとアースイエローはポツリと呟いた


「何で俺(私)達こんな奴らに苦戦してるんだろう・・・」


 何か重大な食い違いをしている気がするアースブルーとアースイエローだったが特に気にせずデフォーとネコナンダーに向かい、戦闘態勢をとった


「ふふふ、やる気十分って感じだねぇ、アースレンジャー。いいよ、相手をしてあげるよ!」 


 ネコナンダーとデフォーも戦闘態勢をとった・・・が


「いくぜ、イエロー!」


「はい、レッド!」


 その一言を聞いたネコナンダーは盛大にずっこけた


「何してるでふ?ネコナンダー」


「あ、あれ?おかしいな、僕の聴覚センサーに異常が無ければあいつ等はイエローをレッドと呼んでブルーをイエローと呼んだような気がするんだけど・・・」


 ネコナンダーはお尻を打ち付けたのか摩りながら立ち上がったのを見ながらデフォーはなんだ、というような感じで首を横に振っていた


「ああ、そんなことでふか、簡単でふよ。彼らはニックネームと戦隊カラーが違う色なんでふ。紛らわしいでふよねぇ」


「なんじゃそりゃ!」


 再びネコナンダーはずっこけた


「何でそんな面倒なことになっているんだい!?」


「なんでって言われてもなぁ、戦隊カラーが決まる前に親睦を深めるためにニックネームを決めたんだ」


「はい、そしてそれぞれの特性に合わせてカラーが決まったのでこんなややこしい感じになっているのです」


 アースイエローとアースブルーはバツが悪そうに答えた


「へぇ、そんな感じでカラーは決まっているのか・・・って納得いくわけないでしょ!」


 ネコナンダーとアースイエローたちの話をよそにガルダーとアースレッドは激闘を繰り広げていた


「・・・だから何故理解せん!女子生徒のセーラー服のスカーフこそ華だろうか!」


「違うよ!セーラー服はねぇ、スカートをクルリと(ひるがえ)した時のフワッとした感じがいいんだよ!」


 ・・・失敬、激闘ではなくバカなことだったようだ。そしてアースレッドの意外な一面が分かった。彼女は百合なのだろう。なぜなら彼女はスカートをはいた事が無いからフワッとした感じが分かるはずが無い


「ぐぬぬ・・・やはりココは世界制服計画を実行し、貴様達にスカーフの良さを教えてくれるわ!」


「やってみなさいよ!私は絶対にスカーフなんて認めないんだから!」


 アースレッドはどーんと構えてガルダーが計画を実行するのを待っていた・・・待つなよ正義のヒーロー!


「ふははははははは!後悔しても遅いぞ、アースレンジャー!ネコナンダーよ、あの最終兵器を使用してしまえ!」


 ガルダーは超ハイテンションモードでネコナンダーに命令した


「しかたないなぁ、ガルダー様は。も○もボックス~」


 どこかで見たような感じの電話ボックスを取り出したネコナンダーは中に入った


「・・・あ、しまった!乗せられたー!」


 時すでに遅し、正気に帰ったアースレッドは走ってネコナンダーに向かうがガルダーに邪魔をされた


「くくく、後悔しても遅いといったであろう?アースレッドよ」


「ちくしょーーーーーーーーーーーーー!」


 アールレッドの叫びが空に響きわたったその瞬間であった


「もしも、世界制服計画が成功したら」


 電話ボックスの中からそんな声が聞こえたのは・・・やってくれたなアースレッドよ



「これが今回の事件の報告書です」


 とある作戦室で報告書を読み終えた男が顔をあげた


 周りには頭を抱えたおじさん達だらけだった。彼らは警察の上層部や、ヒーロー開発局の上の人たちだ


「なにをやっているんだあの三バカレンジャーは・・・」


「申し訳ありません、すべて私の責任です」


 司令官が警察に頭を下げていた・・・セーラー服で


「しかし・・・何故女性だけでなく我々男もセーラー服になっているんでしょうなぁ?」


 警察も難しい顔をしながら考えこんでいた・・・やはりセーラー服で


「それについてですがガルダーに聞いたところ、計画書には全人類をセーラー服にする計画、と書いてありネコナンダーの道具でそのまま実現されたものかと予想します」


 私も報告書に目を通しながら報告した・・・セーラー服で


 そう、まさにさっき言った通り全人類がセーラー服になったのだ、男も女もすべて。そしてセーラー服になってダメージを受けているガルダーたちを捕まえ今回の話を聞いたのだ


「そのネコナンダーの道具で元にもどせないのかね?」


「無理です、使いきりの道具なうえ、たまたま出来た未知の物体を材料にしているため二度と作ることは出来ないそうです」


 作戦室にまるで通夜のような暗い雰囲気が流れた


「・・・アースレンジャーは今回をもって解散、今後は警察に治安維持を任せてもらう。異論はないな」


 全員が無言で賛同した、この後アースレンジャー達の行方を知るものは誰もいない。


「しばらくするときっと皆慣れますよ。いままでセーラー服で生きていたかのように」


「「「慣れたくないわ!!!」」」


 そんな声が響く夏の空・・・悪に負けた、というか欲望に負けたヒーローのお話だったとさ。チャンチャン

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ