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92 弟子の館

 それからしばらくして変身ポーションの効果が切れてミゲルさん、イリス、おれの順で元の姿に戻った。


「よし、エルフの里に戻るか」


 ミゲルさんが出してあったテーブルと椅子を異空間収納で指輪にしまった。来た道を戻ってエルフの里に着いた。さっきは里からしれっと出てきたおれ達だけど、里の入口でエルフの兵士に止められた。


「おい、ここから先に人間は入れない。引き返せ」


「あー、僕はフルーレティ様の弟子のミゲル・クロテッド。弟子を連れてきた」


 ミゲルさんは冒険者登録証を兵士にみせた。兵士は登録証を確認した途端対応を変えた。


「ミゲル様、承知致しました。里に入る事を許可致します。弟子の館を利用して頂きます。フルーレティ様への面会のタイミングは館に連絡が入りますのでそれまで待機をお願いします。道中はこの杖を持ってください」


「ああ、わかった」


 兵士は自分の持っていた杖をミゲルさんに渡した。


 おれ達はエルフの里の中に入り道を進んで、先程転移してきた公衆浴場を通り過ぎて里の奥にある館にたどり着いた。


 道中、里のエルフに注目されたが師匠の手に兵士の杖が握られていることに気がつくとさっと眼をそらしていたのでミゲルさんにきいてみると、フルーレティの弟子はエルフの里では一定の立場があることを教えてくれた。まあ待遇が悪いわけではないからいいか。


「ここが弟子の館だ。とりあえず入ろうか」


「はい。でも先に迎えが来たみたいですよ」


「そうだな」


「ミゲル様、お帰りなさいませ」


「ああ、マッツ久しぶりだな。弟子を連れて来たぞ」


「ミゲル様の活躍は存じておりましたので来れられるのはいつになるかとずっとお待ちしておりました。なかなか来られないのでお忘れになってしまったのかと心配しておりましたよ」


「ハハハ、これでも僕は早い方だろう?エルフは長寿だから弟子を連れて戻るのは数百年先でもおかしくないんだからな」


「そうですね。実際ミゲル様と同時期にフルーレティ様の弟子になられた方はまだ1人も戻ってきておりませんね」


「そうだろう。おっと、話は中に入ってからにしよう。こっちの2人が弟子だ。イリスとリョーマだ。よろしく頼むよ」


「イリス・グレイシアよ。よろしくね」


「リョーマ・カミキです。よろしくお願いします」


「イリス様とリョーマ様ですね。よろしくお願いします。私は弟子の館の管理人のマッツです。館にようこそ」


 おれ達はマッツと挨拶を交わした。その後館を案内してもらい館の2階に部屋を与えられた。


「フルーレティ様への面会については改めて連絡が有りますのでそれまで部屋にて旅の疲れを癒してください。食事の準備が整いましたらお呼びに参ります」


「わかった。僕はマッツと下で話をしてくるから君たちはゆっくりしてくれ」


「師匠、わかりました。じゃ、私は少しリョーマの部屋にお邪魔するわね」


「ああ、わかった」


 ミゲルさんはマッツさんと館の1階に移動して、おれとイリスはおれの部屋に入った。

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