87 ハイエルフとは
「世界樹?世界樹というのは木ですか?」
おれのイメージで世界樹というものはRPGゲームの仲間を生き返らせることが出来る葉っぱの木だ。
「そうだね。一言で言えば木だ。しかし、木と言う概念からは程遠いものだよ。そこに師匠はいる」
木らしく無い木なんだな。まあ、たしかに世界樹の木って物凄く大きくて雲を突き抜けているほどだと言うイメージもある。
「わかりました。教えてくれてありがとうございます。ところで、世界樹に居るということはそこに家があるということですか?」
「家といえば家だが、一般的に想像するような家では無いな」
うーん、豪邸か城といったところか?
「師匠はハイエルフだ。ハイエルフは樹と共に生まれ樹と共に育つといわれる種族だ。その師匠が樹に家になれと願えば樹は家になる。だから世界樹そのものが師匠の家だな」
なるほど、ハイエルフというのはとんでもなく超常的な種族なんだな。
「そうですか、そしたら決まった場所に扉があるというわけではないんですね」
「そうだな。世界樹自体にはもちろん扉は無いし師匠が扉を願っていたとしても何処にあるかはわからないな。だがそれがどうしたのだ?」
「師匠、リョーマは扉が有ればどこにでも転移することが出来るんですよ」
あ、イリスがお菓子の世界から戻ってきたみたいだ。
「おおー、最愛の弟子イリスよ、よくぞこちらの世界に戻ってきた」
「こちらの世界って、私はずっとここに居ましたよ」
「……うん、そうだな。それで今の転移の話は本当かい?」
「ええ、本当ですよ。今回ここに来るのにもリョーマの転移で移動して来ましたし。トロンハからマンザーナまで一瞬でした」
「そうか、なら実際それが出来るかどうか見せてくれないか?」
「わかりました。そしたら一旦トロンハに行って何か証拠になりそうなものを持って帰ってきますね。何が良いかな」
「リョーマ、それなら冒険者ギルドに私が依頼を出しているマイナスアップルの採取依頼を受けてきなさい。そしたら受注票がもらえるからそれを持ってきたら証拠になるわ。師匠、それでいいですか?」
「ああ、それでいいよ。リョーマ君もそれでいいかい?」
「はい、大丈夫です。ではトロンハの冒険者ギルドに行ってきます」
おれはソファーから立ち上がり入ってきた扉に向かった。イリスがミゲルさんに転移する瞬間をみせようとミゲルさんを連れて後を追ってきた。
「じゃ、リョーマ間違えないようにね。マイナスアップルよ。あ、もしも誰かに受注されて依頼票が無かったらマイナスオレンジかマイナスチェリーでも良いからね」
「わかった。とりあえずイリスが依頼を出しているマイナスなんたらってのを受けてくるよ」
おれは扉を開けてトロンハの冒険者ギルドに転移した。




