74 魔法のバッグ
カランカラン
「あ、戻ってきたわね」
「うん、おまたせ」
おれは両手に持っているコンビニ袋をカウンターに置いた。
「ほら、たくさん買ってきたから好きなの選んで良いよ」
イリスはコンビニ袋から取り出した商品をカウンターに並べはじめた。眼がキラキラしている。なんだか微笑みを浮かべてヨダレを口の端から垂らしている……
「イ、イリス?」
「ハッ、な、なにかしら?」
あ、帰ってきたみたいだ。
「いや、精神がぶっ飛んでいたような気がしたんだけど」
「ちょ、ちょっとお菓子の世界に迷い込んでいたわ。この量のお菓子は魅惑的だわ。ハッ、もしかしてこれは魅了魔法なのっ!?」
いや、まだぶっ飛んでいるな。
「これは普通のお菓子だよ。地球の日本ならそれこそ何処でも買えるお菓子だね」
「地球の日本……。お菓子の国なのね……」
うん、何か勘違いしているな。
「まあお菓子も作っているけど他にも色々と作っている国だよ?まあいいや、イリスはどれがいい?」
「全部」
「え?全部?これ全部?」
「そうよ!選べるわけなんてないわ!どれも食べたことが無いお菓子なんだから!ねえ、全部にして、お願いリョーマ」
「えー、まぢか……。ならまた買ってこないといけないな」
「え!?じゃあ良いのっ!?やったーー!」
まあたしかに食べたことが無いお菓子なんて選べないし、全部食べてみたいだろうな。たくさん買ってきたおれの失敗だな……。まあいいか、イリスに喜んで貰えて良かったと思っておこう。
「うん、いいよ。もう1回買ってくるから待ってて」
おれはドアからコンビニに転移してまた両手にギリギリ持てる量のお菓子とスイーツを持って帰ってきた。コンビニの店員さんからどんだけ買うんだこの人?みたいな眼で見られたけど仕方がない。
「じゃ、これから選んで」
おれはもう一度イリスに言った。イリスは顔がだらしなくなっていたがおれの声で正気に戻ったようだ。
「いえ、選ばなくていいわ。師匠にも全部持っていきましょう。それがいいわ」
「あ、そうか、それもそうだね。けど両手が塞がるし結構重いんだよなー」
「それなら平気よ。私が持って行ってあげるわ」
「え?イリスそんなに力が有るようには見えないけど?」
「あー、リョーマは魔法のバッグは知らなかったかしら?魔法のバッグに入れたら重さはほとんど感じないから平気なのよ。それにこの部屋の物なら全部入る位の容量のバッグを持っているからその袋位なら余裕よ!」
うわぁー、魔法のバッグなんてものも有るのか。リゲルは本当に素敵アイテムがいっぱいだな。
「そっか、それならお願いするよ」
「ええ、今持ってくるわ」
イリスはそう言うとカウンター裏の作業部屋とは反対の部屋にある階段から二階に上がってバッグを持ってきた。ちなみに階段の有る部屋はキッチンになっていて二階はイリスの住居スペースになっているそうだがおれは入ったことはない。
イリスは持ってきたバッグにカウンターの上のコンビニ袋を入れていった。いや、本当に訳がわからないけど、バッグに大きいコンビニ袋を2つも入れたのにバッグは膨らんだ様子が全くない。凄いな。
「全部入ったわ。じゃあ師匠の所に行きましょうか」




