72 身分証明証
受付カウンターから入口側に向かう途中でイリスがこういってきた。
「リョーマ、何時水魔法なんて覚えたの?」
「さっきだよ。イリスの店に来る前に石原さんから自衛の手段は必要だと言われてスキルオーブでね」
「そうなの、それは良かったわね。攻撃魔法が使えるようになれば冒険者として引っ張りだこになるわよ。あまり魔法を使える冒険者はいないし、水魔法は飲み水の確保が出来るから大人気よ。そのおかげで冒険者ランクに優遇がついたわね」
「そっか、水魔法にして良かったよ。冒険者ランクのCってどんな立ち位置になるの?」
「Cランクだと冒険者だと一人前と言われるラインね。冒険者ギルドからの信用もそれだけ有る人物という証明になるわよ」
おー、おれはリゲルで信用を得ることが出来たんだな。
「イリスに紹介してもらった効果もあったみたいだし、紹介してもらって良かったよ」
「そうね、私の店のポーションはある意味この街の冒険者ギルドを支えているからね。多分私からの紹介と魔力操作、ポーション作成のスキルで登録時ランクDになると思っていたけど、ランクCになれたのは良かったわ。言った通り信用がある証明になるからリゲルで行動するのには不自由しないでしょうね」
「ま、身分証明証としては良いものが手に入ったってことだね」
「そうね。落ち着いたらクエストを受けてみなさい。Cランクだと1年間クエストを受けないと冒険者登録が抹消か降格されちゃうからね」
「そっか、せっかくの身分証明証だから抹消は避けたいね。この問題が終わったら何かやってみるよ」
「ええ、それがいいわ。じゃ、帰りましょうか。帰りは転移で帰りましょう、私も転移出来るのか気になるわ」
「あ、たしかに問題ないか確認したいね。そしたら、あの入口のドアを使おうか。おれの後ろをすぐについてきてね」
「わかったわ」
おれはおれ達の後に誰も着いてこないタイミングを見計らって扉を開いてイリスの店に入った。後ろを振り向くと今回はイリスもいる。一緒についてこれたようだ。
「凄いわね。違和感も何も無く私の店に転移したわね」
「そうだね。イリスも問題なさそうだから転移で師匠のとこに行くのは大丈夫そうだね」
「ええ、楽しみだわ。全く移動に時間が必要無いし何時でもここに戻ってこれるなら何時でも行けるわね」
「うん、そういえばイリスの師匠に会いに行くのに持っていく手土産は何がいいかな?」
「そうねー、師匠は甘い物が好きだから、この前のバームクーヘンとかチョコレートがいいんじゃない?……と、いうかあなた今度私にチョコレート持って来るって言ってたけど持ってきてないわね。ちょうどいいから私の分と師匠の分を準備しなさい!」
あ、忘れてた……。とりあえず一度地球に戻って買ってくるか。
「あーー、ごめん。今から買ってくるよ。ちょっとまってて」
おれは日本の服に着替えてイリスの店から自宅に戻った。リゲルの服だと知り合いに会ったらコスプレでもしてると思われちゃうだろうからな。




