64 石原さんとのお茶会
「神木さんいらっしゃいませ」
「石原さんこんばんは」
「昨日はいかがでしたか?」
石原さんの部屋に入るなり質問を受けた。しっかり説明しないとな。
「はい、昨日妻の鑑定をしたところやはり異世界からの呪いを受けていました。イリスが準備してくれたポーションの中に対応するものがあったので対処が出来まして妻は元気になりました。石原さんにも色々とお世話になりまして本当にありがとうございました」
「そうですか、何はともあれ奥様が元気になられたようで良かったです」
石原さんはそう言って微笑んだ。
「ええ、石原さんに出会ってこの仕事をはじめていなかったら打つ手が見つかることはなかったと思います。なので、私と妻から御礼をしたくてこちらを持ってきました。是非受け取ってください」
おれは石原さんに紙袋を差し出した。
「え、御礼ですか?私は才能開花サービスのサポートの一環でアドバイスをさせて頂いただけなので御礼等は不要ですよ」
石原さんは笑顔でそう言うが、これは気持ちなのでなんとか受け取ってもらいたい。
「いえ、私の妻は才能開花サービスに登録しているわけではありませんし、石原さんに受け取ってもらえないと妻が悲しんでしまいますので、受け取るのもサポートの一環としてなんとか受け取ってくれませんか?」
「そ、そうですか?そう言われるとそうかもしれませんね。では受け取らせて頂きます。神木さんありがとうございます」
石原さんが御礼の品を受け取ってくれた。このまま渡せないで持って帰ったら美玲は本当に悲しむだろうから受け取ってもらえて良かった。
「中身はお茶のセットとバームクーヘンとかお菓子なので、バームクーヘンは早めに食べてくださいね」
「まあ、バームクーヘンですか?私、実はバームクーヘンが大好きなんです。もし良かったら今ご一緒にいかがですか?」
さっきイリスのとこでお茶を飲んで、エドアルドのとこで酒も飲んだからあまり飲みたい気分では無いな。
だが、製薬会社の営業は目の前の人の誘いを断るなんてしない!懐をひらいてくれたならすぐに飛び込むのだっ!と、いうのは一昔前だな。今は色々と規制が有るから何でもかんでも誘いにはのれない。
けど、やっぱり人付き合いの本質は歩み寄りだし、石原さんは規制に縛られた営業先の相手じゃないからここはお付き合いしよう。なによりおれはバームクーヘンが好きだしね。
「はい、ご一緒します。もう少し詳しくお伝えしたいこともありますし、私もバームクーヘンが大好きなんです」
そう言うと石原さんはおれが渡したお茶をいれてくれた。
「ありがとうございます」
「神木さんの持ってきてくれた紅茶は私も好きなものでしたのでありがたいです」
石原さんには缶に茶葉が入ったものでおれの妻が好きな店の季節のセット品だ。
「あ、それなら良かったです。石原さんが喜んでいたと妻に伝えさせていただきます。その紅茶は妻が選んだんです」
「そうでしたか、奥様とは趣味が合いそうです」
石原さんはニコニコしながらバームクーヘンを食べて紅茶を飲んでいる。そろそろ伝えよう。
「石原さん、ちょっと妻にかかっていた呪いについてなんですが良いですか?」
「はい、それはお聞きしたい話でした」
「妻にかかっていた呪いは消滅の呪いというもので、呪い元はリゲルにいるフルーレティという相手でした。イリスに話したらイリスの師匠の師匠とのことでしたが、イリスはフルーレティの居場所は知らないようなので、知ってるであろう師匠の方を訪ねたいと思っています。石原さんはフルーレティについて何かご存知ないですか?」




