63 酒とチョコレート
「あら、ごめんなさいねエドアルド」
「おう、で、なんで今日は2人で来たんだ?」
「あ、今日は日頃お世話になっているエドアルドに贈り物を持ってきたんだ。受け取ってくれ」
おれは紙袋をエドアルドに渡した。
「お、なんだぁー?たしかに魔石は売っているがお前の世話をしてるって程じゃねぇと思うがな」
「前にあなたリョーマにおまけでスキルオーブをあげたでしょ?あのスキルオーブのスキルがリョーマの役に立ったのよ」
「おぉー、あれか!役にたったようで良かったぜ!で、なんのスキルだったんだ?」
おれがイリスに眼を向けたらイリスは頷いたのでおれは正直に話した。
「実はな、あのスキルオーブは鑑定のスキルオーブだったんだ。あれのおかげでおれは鑑定スキルを身に付けられたんだ。おかげで妻の体調不良の原因と対処法がわかったんだよ。エドアルドありがとうな!」
「な、なにぃーー!鑑定のスキルオーブだとー!?本当にか!?」
「ええ、本当よ」
「かーー、なんてこった。おれは金貨1000枚分のスキルオーブをやっちまったのかよ」
あ、エドアルドが悲しそうな顔になった。肩を落としてあからさまに落ち込んでいる。
「エドアルド、そういう事だからその御礼なんだよ。気に入ると思うから開けてくれ」
「そ、そうかよ。わーったよ、やっちまったもんは仕方がねえからな。だがよ、リョーマ今度鑑定が必要になったらお前に頼むからサービスしてくれよな」
そう言ってからエドアルドは紙袋から箱を2つと布袋1個を取り出した。まだ若干落ち込んでいるが立ち直ってきたみたいだ。
「箱が2つと布袋が1つか、何が入っているんだ?」
「ま、開けてみればわかるけど箱は酒だ。袋は酒のつまみに合う菓子だよ」
「酒か!いいじゃねぇーか!リョーマわかってるな!」
「まあ、エドアルドの趣味がわからなかったから2種類有るんだが、おれの地元でも人気が有る良い酒だ。こっちのがウィスキーで穀物が原料、でもう一個の方はブランデーで果物が原料なんだ。どっちも強い酒だけど、とりあえずそのままグラスに注いで飲むのがいいと思うぞ。」
「おう!ちょっと待ってろ、今グラス持ってくるからお前ら少し飲んでけよ!」
え?今仕事中だろ?大丈夫なのか?
「あら、良いわね。けど1杯だけよ」
良いんかい!?リゲルの労働環境は温いのか?
「おーし、グラス持ってきたぞ!リョーマ注いでくれ!」
ま、良いか。
「エドアルドが持ってきたグラスはでかいけど、とりあえずこれ位にしといた方が良いぞ」
おれはグラスに少しずつウィスキーとブランデーを注いだ。
「おいおいリョーマもっとドバっと入れろよ!」
「まあとりあえず飲んでみろって、とりあえずこっちのウィスキーからな。それとつまみにこの菓子も食べてみな」
布袋からチョコレートを取り出してエドアルドとイリスに渡した。
「じゃ、飲むか!カンパーイ!」
「「カンパーイ」」
エドアルドはグイッと一息でウィスキーを飲み干した。イリスはチビりと口をつけていた。
「なんじゃこりゃーーーー!美味いっ!美味すぎるぞリョーマ!」
「本当に強いお酒ね。けど美味しいわ。それとこのチョコレート、凄いいいわ」
エドアルドもイリスも気に入ったようだ。じゃ、次だ。
「次はこっちのブランデーな」
「おし、飲むぞ!」
エドアルドがそう言ってまた一口で飲み干した。イリスはまたチビりと口をつけたようだ。
「こっちも美味いな!」
「私はこっちのブランデーの方が好きね」
イリスはそう言ってチョコを食べている。なんか昼から賑やかで良いな。ま、おれは帰ったら寝る時間だからちょうどいいしな。あ、エドアルドが出来上がる前に魔石買っとかないとヤバそうだ。
「気に入ってくれてよかったよ。ま、まだまだ瓶には入ってるから後は仕事が終わってから飲んでくれ。とりあえずこの銀貨70枚分の魔石を売ってくれよ」
「お、そうだな。この酒はまた後で飲むことにするわ。これ以上飲んだら止まらなくなる!今持ってくるから待っててくれ」
エドアルドはそう言って店の奥に酒と菓子を持って行った。イリスはチョコレートを寂しそうに見送っていた。
「イリス、そんなにチョコレートが気に入ったなら次に来る時に持ってくるよ」
「リョーマ、約束よ!絶対だから忘れないで」
う、忘れないように気をつけよう。うん、これはマストな仕事だ。そう心に誓っているとエドアルドが帰ってきた。
「リョーマ、これが魔石だ」
「お、ありがとう。じゃ、おれ達はこれで帰るよ。またな」
「おう!ありがとうな!鑑定のスキルオーブよりあの酒が飲めた方が良かったぜ!またな!」
エドアルドにはまた酒を持ってこよう。おれとイリスはイリスの店に戻った。よし、次は石原さんの部屋だな。おれはイリスにまた明日来ると伝えて店の扉を開いた。




