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52 イリスのポーション作成

「物を浮かせられる範囲は、魔力が届く範囲と考えていいわ。この杖を使うと魔力が届く範囲が広がるの。自分の魔力が届く範囲を魔力場というんだけど、魔力場の中であれば物を空中に浮かせたり移動させられるわ」


魔力が届く範囲ならベッドに寝転んだまま電気のスイッチをつけたり消したり出来そうだな。リモコン代わりになって凄く便利そうだ。


「作業部屋について来て。魔法使いの杖の使い方を見せてあげるわ」


おれはイリスに続いて作業部屋に入って作業台を挟んでイリスの正面に立った。

イリスはいつのまにか右手に持っていた杖を素材の入っている棚に向けた。すると棚からポーション瓶、蓋、魔力草、魔力結晶が飛んできて作業台の上で停止した。

次に水が入った樽が作業台の横まで飛んできて、ポーション瓶が樽に飛び込んで水を汲んで作業台の上30cmで停止した。

そこからは本当に魔法だった。イリスを中央に左手側に魔力結晶、魔力草の順に並び、右手側に魔力結晶、ポーション瓶、蓋が並んだ。

イリスは空中に浮かぶ左の魔力結晶に杖から魔力を放出し即座に魔力結晶からの魔力線を10本魔力草に通して特性粒を使った。ほぼ同時に右手側に浮かぶ魔力結晶に手をかざすと魔力結晶の奥、つまりポーション瓶の上に魔力球が作られた。その魔力球に特性粒が現れている魔力草が飛び込んですぐに元の左側に戻る。青くなった魔力球がスッと小さくなり青く輝く雫がポトンとポーション瓶に落ちると即座にポーションの蓋が締められた。


「はい、出来上がり。杖を使うと手で持たなくて済むからこんな風に楽に中級魔力ポーションを作れるのよ」


うぉーっ!凄い!薬術師ってこんなに魔法使いっぽいのか!イリスがポーションを作っているところははじめてみたけど、こんなにカッコイイなんて!


「イリス、凄くかっこよかったよ!」


「あら、ありがとう。リョーマにそう言われると嬉しいわ。杖を使いこなせればリョーマも出来るようになるわよ」


「わかった!使いこなせるように練習するよ!」


「そうね、頑張ってね。それとリョーマにプレゼントしたその杖にはほかの市販の杖にはない特殊機能があるからそれも説明しておくわ」


え!?特殊機能とは?


「その杖は形態変化してネックレスになるのよ。凄いでしょ?私の杖も同じ機能が有るんだけどね、デザインも良いから期待していいわよ!」


おー、それなら持ち運びがしやすくていいな。


「ネックレスか杖になれと意識すれば形態変化するから試してみなさい」


「わかった」


おれは杖を握ってネックレスになれと意識した。すると杖は縮小していって持ち手部分から杖の先端までの茨模様になっていた箇所がチェーンに変化してネックレスになった。


「それを首にかけるとサイズが調整されるわよ」


首にかけるとサイズがピッタリに調整されたようだ。


「いいわね!似合っているわ!」


「ありがとう!たしかにカッコイイネックレスになったね。これならいつでもつけていられるよ」


「ええ、魔法使いの杖はポーション作成以外にも色々と役に立つからいつでも身に付けているといいわ。あ、そろそろ戻った方がいいんじゃない?」


そうだ、明日は朝から仕事だし夜は美玲の鑑定や呪い対策をするからしっかり休まないとな。


「そうだね。今夜は色々有るからそろそろ寝ないとだ。じゃ、戻るよ、ありがとうね」


「ええ、頑張ってらっしゃい」


そう言ってイリスは鞄に入れたポーション一式と小袋を手渡してくれた。


「小袋は今日の分の報酬よ。それとポーション一式は忘れていかないようにね」


あ、これは忘れてったらダメだな。危なかった。もう一度戻ってくることになるとこだった。


「うん、ありがとう、またね!」


おれはイリスに挨拶をしてホテルに戻った。

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