4 鑑定紙
文字が浮かびあがった紙を石原さんが持ち上げた。
「拝見します。」
さっきの紙の反応には少し驚いた。あんな風に急に模様が出たり光ったりする紙はないと思うけど...もしかして、電子ペーパーってやつか?そういえば紙の質感は普通のものとは少し違っていたような気がするが。
そんなことを考えていると石原さんが言った。
「神木涼馬さん、37歳、」
って、えーーー!何で名前と年齢がわかるんだ?!おれは名乗って無いし年齢だって伝えていないのに??
「あ、ここに表示されます。違ってました?」
「いや、合ってますけど...なんなんですかその紙は?」
紙に触っただけで個人情報が抜き取られた?考えられるとしたら、あの紙に指紋を読み取る機能があって、それを交通違反をした時に青切符に捺すために取られた指紋を蓄積している警察のデータベースに照合したとかか?いやいや、そんなこと出来ないだろ。
「すみません、説明していませんでしたね。これは鑑定紙というもので、才能の欠片等を可視化するためのものです。人体に危険なものではないですよ。」
ニコリと微笑んでそんな返答がきたよ。いや、触っただけで個人情報特定される紙は危ないでしょ!?てか鑑定紙って何?フィクション?鑑定士さん?いゃぁー、もう混乱してきた。
「では、神木さんの才能の欠片をお伝えしますね。」
うわぁー。話が進んでいるよー。もういいや、才能の欠片?ですか、早く教えてください。そして解放してくださいっ。
「現在神木さんには、魔力操作、治癒魔法、ポーション作成、錬金術、走法の才能の欠片があるようです。」
もう意味がわかんないです。紙はまだ科学技術でもしかしたらどうにか再現出来るかもしれないようなことだったけど...。魔力とか治癒魔法とかフィクションですよね??もうやだよー。
「神木さん、貴方はとても素晴らしい才能の欠片をお持ちしています!その才能の欠片を成長させて、しっかりとした才能にしませんか?その為のサポートはしっかりとさせて頂きます。しっかりとした才能を獲得出来ましたら、その才能を活かしたお仕事をご紹介出来ます!」
いや、ホント何言ってんだ?魔法とか使えるようにしてくれるってこと?てか、もし万が一この話が本当で、そんな才能が合ってもそれを活かす仕事って何?魔法映画とかか?
「あのー...すみません。ほんと勘弁してください。さっきから仰っている意味がよくわからないです。魔法ですか?治癒魔法ってなんなんですか?そんな技術が有るなんて信じられないんですが。しかももしそんな技術があったとしてまともな仕事がある気がしないですよ?」
疑問を伝えてみた。もうこのあたりで引き下がって欲しいな。もう疲れてきた。。。
「仕事ならご心配なさらずとも大丈夫ですよ!神木さんの仰る通り、魔法という技術はこの地球では現在ほとんど使われておりません。ですが、地球と同じような環境の別の世界が有りまして、そちらでは地球よりも魔法の技術が発展しております。そちらでは、神木さんの才能の欠片を才能にすることも、伸ばすことも仕事にすることも可能なんです。」
並行宇宙ということか...?そりゃ、並行宇宙が存在する可能性は有るね。有るけどさ、そこに行くって何さ。行けないでしょ?
「はぁー。地球とは違う世界ですか。そうですか。全然意味がわからないですね。石原さんの仰っていることは全く信用出来ない話ですよ?そんな世界があって、魔法があるってことは証明出来ないですよね?何か証拠があるんですか?無いんならもう私は帰りたいので、この話を終わりにしましょうよ。」
ここまで言えばいいかな。証拠なんてある訳ないしな。
「あー、そうですね。でしたら、違う世界に見学に行きましょう。そして、そこで私が魔法の実演をします。そうしたら信じてくれますよね?」