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38 呪い

カランカラン


ドアを開けるとカウンターにイリスが見えた。


「いらっ…」


扉の音でイリスが客と思い声を出したがおれとわかって声をとめた。そして、多分おれの雰囲気がいつもと違うと感じておれの様子をうかがっている。


「イリス、おはよう。実は相談が有るんだけどいいかな?」


「……相談?いいわよ、どうしたの?」


「実は、ここ1年位おれの妻の体調が悪いんだ。それで病院に何軒も通っているんだけど原因もわかっていない。向こうで処方された薬もほとんど効果が無くて困っていたんだけど、前におれがここで作ってイリスに持って帰って使ってみて効果を見てみるといいって言われた薬をこの前おれがここの仕事を休んでいる間に使ったんだ。で、その間は妻の調子が良かったんだよ。使ったのは整腸剤だったんだけどね。最近はまた調子が悪いみたいなんだけど、もしこの前ここで作ったポーションに効果があったんだとしたら、何が良くて妻の体調を良くしたのかわかるかな?もしも何か考えつくことがあれば教えて欲しいんだ。」


説明とお願いをいっきにまくし立ててしまった。


「あ、えーと、リョーマの奥さんがリョーマの作った薬を使ったら体調が良くなったのはなぜか?ってことね。」


イリスがおれの言葉を要約して考えはじめてくれた。店に来るなり急にこんなことを言い出してしまって申し訳ない。


「うーん、そうねー、もしかしたら魔力欠乏状態かそれに近い何かの可能性があるわね。教本1で作れるポーションってリョーマの魔力を使って作るでしょ。下級魔力ポーション程じゃないんだけど、ポーションには魔力が含まれているから服用者の魔力を少しは回復させられるの。だから魔力欠乏状態の人が使うと一時的に楽になることがあるわね。」


美玲が魔力欠乏状態?魔法とか使っているわけでもないのに?


「うーん。おれの妻は地球にいるから魔法とか知らないし魔力が欠乏することがあるのかな?」


「それは私にはわからないわね。でも、リョーマの作ったポーションを飲んで症状が良くなって、しばらくしたらまた悪くなったというなら可能性はあるわね。例えばコカトリスの視線による石化なんだけどこれは呪いの一種なのよ。これは石化の病にかかりやすくなる呪いね。コカトリスの視線による呪いってね、視線を受けたら必ずかかるってわけではないの。かかりやすいのは魔力を使い過ぎて魔力がなくなっている人よ。魔力にはそれ自体で呪いを防ぐ力があるけど、それが無くなると防げなくなる。魔力を使って呪いを防いでいるとも言えるわね。だからもしも呪いをかけられ続けている状態だと、その呪いに抵抗するために魔力を使い続けてしまうことになってしまうわ。そうすると魔力欠乏状態になったりするのよ。で、本当に魔力が無くなると抵抗出来ずに呪いにかかってしまうわ。」


今イリスが言ったことがもし美玲に起こっているとなると美玲が呪われているってことか。呪いって地球でもきくけど実際はあるのか?


「なるほど、参考になったよ。ちなみになんだけど、呪いをかけられているかどうかって鑑定スキルでわかったりするかな?もしわかるなら今度おれが鑑定してみようと思うんだけど。」


「鑑定ならわかるかもしれないわ。でもリョーマはまだ鑑定スキルのレベルが足りないと思うわ。人間を鑑定して今まで状態が表示されたことある?」


「ないな。鑑定スキルのレベルをあげればいいのか?」


「えぇ、そうよ。私が役に立つ本を探してきてあげるわ。多分それを読んだら状態表示が出来るようになるから。多分少し時間がかかるからリョーマはポーションを作っておいてくれるかしら。」


「イリスありがとう!今日はおれタダ働きでも良いから、何とかお願いします!」


「わかったわ。探してくるわ。私が戻って来るまでポーション作りと店番は頼んだわよ。」


鞄を持って店を出て行くイリスを見送っておれはポーション作りをはじめた。

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