33 店番
「イリス今日もよろしくお願いしまーす。」
おれは薬術師イリスの店のドアをあけて挨拶した。
「ん?おまえは誰だ?イリスは居ないぞ。」
あれ?知らない男がイリスは居ないって言ってる。しかも全身甲冑を着込んでいるし顔は少しいかつい。
「あ、私はここでイリスの仕事のお手伝いをしているリョーマと言います。イリスは何処かご存知ですか?」
「おう。おまえがリョーマか。イリスからきいている。おれはこの街の兵士のマークだ。イリスは素材を買い取りに冒険者ギルドに行っている。おれはおまえが来るまでの店の番を頼まれたのだ。」
「そうでしたか。承知いたしました。おつとめご苦労さまです。」
「いいのだ。ここの薬には助けられているからな。とりあえず、おれはここまでだな。ではな。」
「ありがとうございます。」
おれはマークを見送った。
この時間に買い出しに行くってことは何か緊急事態か?と、考えていると
カランカラン
「おう、下級治療ポーションくれや。」
うわっ、お客さんが来てしまった。革鎧を装備して腰ベルトに剣を指している。冒険者ってやつかな。おれはここで接客したことないけどとりあえず対応しないと
「い、いらっしゃいませー」
「……おめー誰だ?」
「わ、私はここで手伝いをしているリョーマです。よろしくお願いします。」
「なんだ店員か。なら下級治療ポーション1本くれや。」
うわー、これおれが接客しなきゃならないやつか……。まあしょうがない、おれも社会人経験は長い。何とか乗り切ろう。
「下級治療ポーションですね。」
下級治療ポーションならいつも作っているからわかる。おれは品質維持の魔道具から下級治療ポーションを1本取り出した。イリスは前にこれを銀貨5枚で売っているって言ってたな。
「こちらですね。下級治療ポーション1本で銀貨5枚です。」
「おう。銀貨5枚だ。」
おれは銀貨を受け取って下級治療ポーションを渡した。
「毎度ありがとうございマース。」
「おう。また頼むわ。」
接客が終わったと思い気を抜こうとしたらまたドアが開いた。うわっ、また客かー。
「ただいまー。」
イリスだった。助かった。
「お、イリス出かけてたのか。」
「あら、アレクス来てたの?下級治療ポーションかしら?」
「おう。いまあいつから買ったとこだ。」
「リョーマ来てたのね。リョーマに接客させちゃったみたいね。問題無かったかしら?」
「おう。下級治療ポーション1本を銀貨5枚で買っただけだからな。」
「あら、良かったわ。」
「じゃあな。」
アレクスさんはそう言って店から出ていった。
「リョーマ助かったわ。」
「あぁ、役に立てたようで良かったよ。いきなりの接客だったけど簡単な注文で助かったよ。」
「下級治療ポーション1本だったものね。せっかくだから少しこっちの仕事も教えるわ。もしかしたらたまにこっちに出てもらうこともあるかもしれないしね。」
おれはアレクスから受け取った銀貨をイリスに渡して接客のレクチャーを受けた。これでいつでも店番も出来るわねと言われた。まあ、働かせて貰っているしポーション作成も教えて貰っているから出来ることは増やしていかないとな。
ひと段落ついたのでおれはポーション作成に取り掛かった。




