3 才能開花サービス
「まあ、とりあえず座ってください。」
うーん。なんか普通じゃない状況なんだけど、この女性は自分に危害を加える気は無いと言っているし、雰囲気は落ち着いている。とりあえず座って話をきいてみるか。
「私は才能開花サービスの石原と言います。まずは概要についてご案内しますね。質問は随時してください。」
才能開花サービスって...。なんじゃそりゃ。胡散臭い会社ですって自己紹介しているような社名じゃないか。てか本当にそんなサービスを提供する会社が有ったら、何年も前から有名になっているのではないか...
「才能開花サービスは、今月はじめました。」
今月創業だったぁ...。
「才能開花サービスは、人がそれぞれ持っている才能を見つけ、伸ばして、活用出来るようサポートします。」
しますって...もしかしてまだ何もしていないのでは...。というか、才能を見つける?
「いきなりで申し訳無いんですけども、才能を見つけるって?そんな事が可能なものなんですか?」
「はい。人が持つ才能の欠片を可視化することが出来るので、かなり正確にわかりますよ。」
なんだそのオーバーテクノロジーは...。そんなことが出来る技術なんて今まで一度も聞いたことがないぞ。これは、あれだな。うん、新手の詐欺だ。
「そうですか。お話はよく分かりました。ではお仕事頑張ってください。私はこれから用事が有るので帰りますね。お時間有難うございました。」
おれは立ち上がって丁寧にお辞儀をして部屋のドアに向かった。ガチャガチャ。ドアがあかなーい!
「まだ説明は終わってませんよ」
肩を震わせて後ろを振り向くと石原さんがすぐ後ろにいた。この部屋からは出させないという事のようだ。うわぁー。変なのに引っかかったみたいだぁ。と内心思っていると。彼女が悲しそうな表情を浮かべている。
「信じられないようですね。なら、貴方の才能の欠片を見せます。そうしたら信じてくれませんか?」
えー。まだこの路線でオレを騙そうとしているのか...。諦めてくれよ。
「いや、才能なんてわかるわけないですよね?そりゃ、身体的特徴から少しは想像出来ることもあるかも知れないですけど、そんなの背が高いからバスケットボールで有利かも知れないとかそんな感じですよね?そんな情報なんの役にも立たないですから。」
ピシャリと言ってやった。
「いえ、そんな当てずっぽうでは無く、もっと正確にわかります。」
はー。どうせ、貴方には投資の才能が有りますとかなんとか言って騙すんだろ?そんな話なら聞いたことがあるんだぞ。
「じゃあ見せてください。私の才能を。」
とりあえず、向こうの話を聞いて頃合をみてドアを開けさせよう。話を聞かなきゃ部屋からは出してくれないようだし。最悪隙を見つけて警察に電話しよう。
「承知しました。では、この紙に両手を10秒程ついてください。」
ハイハイ、わかりましたよー。オレはソファーから腰を浮かせて紙に両手をついて10数えた。
すると、紙に幾何学模様が浮かんでぼんやりと発光した。驚いていると、
「はい。出たようですね。もう手をどけても良いですよ。」
言われるまま手を紙から離すと幾何学模様は消えて文字が浮かび上がってきた。