26 虫除け
今日は陽射しが強くて暖かいからキャンプに来た。中学生の龍翔は部活があるというので昼飯代を渡して別行動で、妻と梨央の3人でのデイキャンプだ。
「着いたよー。」
「ねー、パパやっぱり帰ろうにゃ。梨央はイヤだにゃ。」
「梨央、大丈夫だって、虫除け飲んだでしょ?今日1日は虫が近づいてこないよ。」
「うー、本当かにゃー。このキャンプ場は去年蜂が梨央の頭にとまったんだにゃ。ここは危険なキャンプ場なんだにゃ。」
そう、ここは去年バーベキューをしていたら蜂が梨央の頭にとまった場所だ。その時はおれが持っていた空のペットボトルで頭の蜂を弾き飛ばしたので梨央が刺されたりはしなかった。けどその日から梨央は蜂を大嫌いになった。
「まあ、試してみようよ。まあ、普通にしてれば蜂もはなかなか近寄っては来ないし大丈夫だよ。」
「そうよー。それにパパのお薬は凄くよく効くからもしもの時も安心でしょー。パパもママもお薬飲んだんだから3倍平気よっ。」
「んー。ならいいんだにゃ。とりあえず遊ぶにゃー。」
おれ達はテーブルと椅子だけ準備して遊び始めた。デイキャンプの時はわざわざテントはたてないでこれくらいの方が楽でいい。もしも雨降ったらちゃちゃっと片付けて車に乗れば良いだけだしね。
とりあえず奥の広場でゴムボールでキャッチボールしたり、凧あげして遊んだ。凧あげって、実は凄い楽しい。最近の凧はカイトとかいってホームセンターとかおもちゃ屋に売っているんだけど、千円位で安いんだよね。で、実際凧で遊んでいると凄く目立つ。
風に向かって梨央と走り出す。梨央のスピードに合わせて走って、ある程度風をつかんだと感じたら手を離す。そうして上手くいくと凧は空に昇っていく。そしたら梨央に止まってもらって凧に向き直って一緒に紐を伸ばしていく。どんどん空にあがっていく凧をみていると梨央もおれもテンションが上がってくる。で、限界近くまで凧が高く上がると風が強くて場合によっては2人で支えてないとコントロール出来なくなりそうになったりして自然に2人で協力して遊べる。で、そんなことしていると、凧が上がっているのを周りの人が見ているのに気づく。みんなから良いの持っているなーなんて見られている気がしてくる。そうすると梨央もなんだか得意気な顔になってきた。私がこの凧をあげてるのよってセリフが聴こえてきそうだ。
ま、ここまでは良かったんだけど、風が強くなり過ぎたからいったん紐を巻こうと梨央に声をかけた時に上空の風が更に強くなったみたいで梨央の手から紐が抜けてしまった。そうなると周りからは、あーあやっちゃったなーみたいな目で見られるんだけどそんなことは気にせずに凧を追いかける。人に当たったら危険だからね。
すぐに凧は落ちてきた。凧は木にぶつかって地面に落ちた。おれと梨央はすぐにそこに追いついて凧を拾った。
「ふー、人にぶつからなくて良かったー。」
「凧も壊れて無さそうだにゃ!」
ブーーー、ブーーー、ブーーー
ん?何か音が。
「パパ、蜂がいるにゃ!!」
「うわっ。」
でっかい蜂が木の近くに沢山いた。けど、寄って来ない。なんだか5m位離れた場所でこちらを向いてホバリングしているようだ。
「蜂が寄って来ないな。」
「うん。」
「とりあえずここから離れよう。」
おれと梨央はそっとその場から離れた。蜂も追って来ないようだ。
「ふーー。蜂こっち来なくて良かったにゃー。」
「うん。これは虫除けが効いたっぽいね。」
「パパの虫除け凄く良く効いたにゃ!」
おれたちは妻の所に帰って今までの事を話したら、おれが怒られた。
「涼馬さん。危ない事はしないでくださいね!梨央はまだ小3なんだから凧を高く上げすぎたらこうなることは予想出来るでしょ。人に落ちてきた凧が当たってたら大変でしたよ!」
「はい。すみません。」
「梨央も怖かったでしょ?本当に蜂に刺されたりしなかった?」
「うん!蜂が近づいて来なかったから大丈夫にゃ!パパの薬が効いたにゃ。」
「そっか。良かったわ。薬が効いたのは良いけど、梨央も気をつけるのよ。」
「わかったにゃ。」
「うん。そしたらお弁当食べましょ。」
「はーい!」
おれ達はデイキャンプを満喫して家に帰った。
家で部活から帰ってきた龍翔に梨央が今日のデイキャンプの事を話していた。
「へー、その虫除けもかなりの効果だったんだねー。刺されなくて良かったね。おれも今日は体臭剤使ったらさ、シャツはもちろん靴下まで臭くならなったよ。」
「えー、それは本当かにゃ?」
「本当だって。なんなら匂い嗅ぐか?」
「……いや、遠慮しますにゃ。」
うん。誰もサッカーの練習後の靴下の匂いなんて嗅ぎたくないね。
「本当に全然匂いしないんだって……。」
匂いは嗅いでないけど、体臭剤も効果はあったみたいだ。




