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極道令嬢はエルフに転生したけどごく普通の人生を過ごしたい。  作者: TOMO103
第2章 天翔山脈の「亡霊」退治 ~空中巡洋艦で大陸への出航~
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#8 天翔山脈の亡霊

 #8 天翔山脈の亡霊


 飛行甲板から自衛用のガンポッドと小型ロケット弾をスタブウイングに装備した汎用ヘリ「ウインドミル」2機が続けて離艦していった。

 これからイディナロークが越える「天翔山脈」の天候や状況の偵察に飛び立って行ったのである。

 それを艦長席から見送っていた昶が思わず愚痴をこぼす。


「まったく便利屋傭兵は気が重いわね、本国も……いや、あのお転婆女王様も酷使してくれるわ」

「仕方ないですよ、正規軍に戦力の余裕が無いどころか既に多数の犠牲者が出ていますから」

「……よりによって「亡霊」を討伐してくれとは……現状ではこれ以上の資料は無いんだよね麻衣」


 ぎっしりと書かれた資料の分厚いファイルをどすんと目の前の小さなテーブルにのせると昶ははあとため息をついた。


「天翔山脈の「亡霊」、その速力と高い運動性能及び火力で旅客飛行船とその護衛の駆逐艦を撃沈、生存者は無し、駆逐艦の魔力センサーに感知された頃には既に接近されていた為にろくな反撃もできず直撃弾を受け艦体が折れて爆沈、気づかれずに接近する事から付いたコードネームが「亡霊」……写真が残されていないとは言えこれは確定的ね」

「救助隊が生存者から聞いた話では100m級の身体に手足と別に翼を見たとの事です……最もその生存者もすぐに亡くなったので今となっては確認しようもありませんが」


「おそらく「亡霊」は魔導エンジンが発生させる魔力の反発効果を感知していると思われる、か……これじゃ嫌でも向こうから来るか」

「おそらくは…索敵に苦労しそうですね」

「そうね……ほぼ敵の種類は確定、それも魔導種最強の類か……もうすぐ天翔山脈の回廊航路に入るから各員対空警戒を厳にするように通達、ミスティックシャドウⅡと瑞嵐は偵察のウインドミルが戻り次第直掩に出撃、艦の速力はこのままで、予定通り進めるよ」

「了解しました」


 イディナロークの前方にはこの艦の最大高度を越える山脈とその頂上と尾根を隠す分厚い雲海が広がっている。

 通称「天翔回廊」と呼ばれる谷間の航路へとイディナロークは艦首を向けた。




 イディナロークの艦内には小さいが図書室がある。そこにあった精霊魔法の魔導書を見つけたリルミアはそれを読んでいた。

 しかしどうしても昨日の自分の不甲斐なさが思い出される。


「むー………」


 珍しくリルミアは悩んでいた。

 昨日飛行甲板でやった亜耶を相手にした近接戦闘の訓練。


「いや、亜耶さんは歴戦のベテラン傭兵なんだし勝てると思う方がおかしいのよね」


 一発くらいは入ったような気もするが全然その影響もなく、おまけにリルミアの動きは完全に読まれていた。

 強さの質とレベルに比較できない大きな差がある。そしてそれは今のリルミアには到底埋められるような差ではない。

 ………ここで考え込んでいても仕方ないか。

 リルミアは悩むのをやめて魔導書に没頭することにした。


「冒険者ギルドの図書室じゃ見たことの無い精霊魔法もあるんだ……ふうん、「サンダーブラスター」か…精霊魔法って稲妻の制御もできるのね」


 読み進めていくうちにリルミアはある事に気づいた。攻撃系の精霊魔法が多い。

 

「そっか、軍艦の図書室だから攻撃系の魔法をまとめた本が多いのか……あれ?」


 リルミアは妙な感覚に一瞬とらわれた。

 何かとてつもなく強大な魔力を持つ者の感覚。


「なんだろう今の感じ……気のせいじゃないよね」


 これまでに感じたことの無い違和感。


「よし、一応昶さんには話しておこう」


 


 艦内のあらゆる部署で天翔山脈を越える為の準備が進められていた。

 砲術科では砲塔や機銃の最終チェック及び弾薬の装填。

 機関科では主機とフライトリアクターの最終点検。

 魔術科では各武装や魔力関連機器の魔力補充。

 主計科では烹炊所(つまり厨房)で戦闘食の作り溜めとそれの各部署への配達。


 格納庫ではミスティックシャドウⅣの武装パックの設定とエンジン周りの部品交換とそのチェック、瑞嵐はそれぞれのハードポイントへの武器弾薬の取り付けが行われていた。


「はぁ……まったくツイてないわ、こんな時にシュツルムカノーネが使えないなんて」


 リトラは盛大にため息をついた。

 もしもシュツルムカノーネが使えればその大火力の機体は必ず役に立っていた事だろう。

 シュツルムカノーネは大掛かりな定期整備点検で現在バラされた各部のパーツの点検とその再組み立て中でとても出撃できる状態ではなかった。


 艦橋ではこの艦の艦長である昶と副長の麻衣、飛行隊と陸戦隊の隊長を兼任する亜耶、臨時砲術長のリトラが、それぞれのやるべき事の最後のすり合わせをしていた。 


「じゃあこの手筈でみんなお願い、亜耶はどう?魔力を感じる?」

「ええ、山脈の方向から」

「そう、じゃあみんな頼んだよ」

「「「了解しました艦長」」」

「それにしてもシュツルムカノーネが使えないのが痛いな……あれ?どうしたのリルミア」


 艦橋に入るドアの開く音に昶が振り向くとそこにはリルミアが立っていた。


「実は……」


 リルミアはさっき自分が感じた違和感を話した。


「なるほどね、多分その感覚は正しいと思うよ」

「私も同感です、リルミアさん」

「はい?」

「その感覚、おそらくはあの山脈の主たる「亡霊」の魔力を感じ取っているのだと思いますよ」

「……「亡霊」?昶さん、どういう事です?」

「この艦に出動要請が来てるってこの前話したでしょ?」

「ああ、はい」

「これから越える「天翔山脈」がその任務の場所なんですリルミアさん」

「そうなんですか……でもその出動要請ってどんな内容なんです?」


 昶はリルミアに向き直るとニヤリと笑った。


「異世界のお約束、大型ドラゴンの討伐要請」




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