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極道令嬢はエルフに転生したけどごく普通の人生を過ごしたい。  作者: TOMO103
第2章 天翔山脈の「亡霊」退治 ~空中巡洋艦で大陸への出航~
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#5 旅立ち

 #5 旅立ち

 

 そんなこんなでリルミアは冒険者ギルドで改めて冒険者登録を無事に済ませ、半年間の初心者向け冒険者講座も修了した。

 さあこれで自由気ままに冒険者でもするかー、と意気込んでいた。


 だがしかし。

 

 転生先でも世の中はそう甘くなかった。

 これがラノベなら主人公キャラはチート能力を授かって無双したり、元々持っていた軍事知識や科学知識でやはりチートしつつ活躍する話が多いがそうはならない理由があった。

 理由は単純。()()()()()()()()のである。

 早い話が転生者インフレ。転生者の供給過剰。

 

 冒険者ギルドで聞いた話ではこのラティス帝国の転生者だけで地方自治体が一個作れるくらいの人数が転生しているらしい。

 当然冒険者ギルドで募集される転生者向け(つまり一般市民の冒険者よりも能力の高いリルミアのような転生冒険者)のそこそこ難易度が高い仕事は少ないパイの奪い合いになりあっという間に定員オーバーになってしまう。

 

 異世界転生してまで就職難にあえぐとは思わなかった。

 それでも薬草やアイテム材料の採取等のちまちました小さな依頼を地味にこなしたがそれでは収入にも限度があった。オマケに転生者給付金が支給される一年間ももうすぐ終わってしまう。

 うっかり女神のあんまりなミスによって非常識に上乗せされたその能力を発揮する機会もなく過ごしていたのである。

 

 ともあれリルミアは就職難にあえいでいた。

 とにかく冒険者以外でも何でもいいから収入源を確保しようと。


(……まずい、これじゃ普通の人生を過ごすどころの騒ぎじゃない)

 

 ただ単純に仕事を探すだけならば、選り好みをしなければそれなりに仕事先は見つけられるだろう。

 何しろリルミアは美少女エルフである。

 容姿が一般的な水準より遥かに上である。

 だから水商売であったりダンサーや役者であったり、R18な風俗関連であったり。


 実際そういう仕事を勧められたり、その手の店にスカウトされたのも一回や二回ではなかった。

   とはいえいくら容姿が水準以上とはいってもリルミアはダンスや役者のような芸能系スキルは無いし風俗に至ってはその仕事を否定する気は無いものの単純に全く興味が無かった。

 

 そして。

 色々なアルバイトや時たま見つかる軽い冒険者の仕事をしつつレベル上げをしながらやっと見つけたのがレストラン兼酒場のウェイトレスだった。

 その酒場はこの街、アクアフィールドの中央広場の近くにある。

 

 そこは円形の広場の中心に大きな噴水があってそこから放射状に通りが伸びている。


 通りのそれぞれが市役所のある行政区画、市場に繋がる商業区画、寺院や神殿に繋がる宗教区画、競馬場や闘技場、カジノに繋がる娯楽区画、港(民間港と軍港がある)に繋がる港湾区画に繋がっている。


 それ以外にも住宅区画やスラム街区画や畑や牧場に繋がる農業区画へと何本も通りが伸びていた。

 

 ちなみにこの街の名前「アクアフィールド」はその名前の如く港湾区画から市街地に掛けて縦横無尽にはしる運河の様子にちなんだ名前である。



 

 さて、ここで話は#1の冒頭の光景に戻る。

 リルミアの機嫌がめっちゃ悪いのは無理もない。

 

 やっと見つけたバイト先の店で料理や他の客にイチャモンを付け、オマケに自分の尻を撫でたゴロツキにキレたリルミアはまずその場で尻を撫でたゴロツキの腕を掴むと思いっきり頭突きをかましひるんだ所を玲菜だった頃に護身術として学んでいた合気道の投げ技で投げ飛ばしたのである。

 

 まさか一見おとなしくウェイトレスをしていた華奢なエルフの美少女が反撃するなど思ってもいなかったゴロツキはまともに床に叩きつけられた。

 そこからはまるでハリウッド映画のような客を巻き込んでの大乱闘になりリルミアの精霊魔法とゴロツキの反撃で店は壊滅、リルミアは働き出した初日にクビになったのである。


 そして店長に自分が半殺しにしたゴロツキを店の外に捨ててこいと怒鳴られたリルミアはゴロツキをどうしようか悩んでいた。

 

「よし、こいつら社会的に抹殺してやろ」

 

 美少女エルフにあるまじき邪悪な微笑みを浮かべるリルミア。

 

 リルミアは精霊魔法で眼の前の建物に絡みついている蔦を操作してゴロツキの服をビリビリに破くとそのまま蔦でぐるぐる巻きにして自分が働く店の前の中央広場にある噴水前に捨ててきたのである。


 全裸で放置されたゴロツキ達はあっという間に警備兵に見つかり猥褻罪で連行されていった。


 なんだかんだ言っても元極道令嬢。敵と認めた相手には容赦なく徹底的に報復するリルミアであった。


 


「はぁ…………どーしよ」

 

 リルミアはため息を付くと肩を落としてまた仕事を探すべく取り敢えず冒険者ギルドへと向かった。

 まだまだ前途多難である。

 

「はああぁぁぁぁぁ………普通の人生を過ごしたいだけなのに」

 

 リルミアは今度は更に長い長いため息をついた。

 やっと見つけた収入源が無くなってしまったのだ。

 仕方無く冒険者ギルドへとすぐに出来るような依頼がないか探そうとと考えてはいるもののそれが見つかる保証は無かった。




 

 アクアフィールドの冒険者ギルドは市場のある商業区画と港湾区画にほど近いエリアにある。

 歩きながら財布の中身と残り少なくなった転生者給付金の残額を思い出す。


「やばいなぁ………」


 再びため息を付きつつ冒険者ギルドに入る。

 相変わらず冒険者ギルドは賑わっていた。


 取り敢えず仕事募集の掲示板に目をやると色々な仕事があった。


 商人のキャラバンの護衛。

 モンスターの群体の討伐。

 この辺はパーティを組んでいないと難しいし中には魔導機兵や装甲車必須のものもありそれを所有もしていなければ操縦免許も持っていないリルミアには無理な話であった。

 他には採取もあるがこれは採取対象の知識がある程度必要である。


「うーん…やはり装甲車や魔導機兵の免許も持ってた方がいいんだろうけどなぁ………」

「あれ、リルミアじゃない」


 肩をぽんと叩かれて振り向くとそこには知った顔がいた。


「昶さん!」

「久しぶり、どうしたの?依頼探し?」

「はい…でもよさそうな依頼がなかなか見つからなくて……」

「あー……こっちのギルドじゃLvが上がると確かに依頼を見つけるのは難しいかもね、大陸に渡れば冒険者や傭兵の仕事なんていくらでもあるんだけど」

「大陸ですか…」


 このラティス帝国の領土は列島と大陸がある。今リルミアがいるアクアフィールドの街や王都のラティスポリスは列島州の海岸線沿いにある街である。

 そして列島州の東側に大陸がありそこにもラティス帝国の領土がある。


 大陸は未だに20年前の世界大戦による大破壊からの復興もなされておらず、それに伴う治安の悪化やモンスターの出現、更には魔導種と呼称される特殊モンスターが出る事も多く冒険者や傭兵の需要も多い。

 そして国境では軍隊同士による武力衝突もごくたまにではあるが未だに散発的に発生している。


 その程度の基本的な情報はリルミアも把握していた。

 問題なのはまだ冒険者としては初心者の自分にそのような厳しいと土地でそれが勤まるか、である。


「不安?」

「はい…」

「問題ないと思うよ?そこの冒険者ギルドで良さそうな依頼があれば受ければいいし……それにリルミアの実力なら大丈夫じゃないかな」

「ここよりは仕事見つけやすいんでしょうか……?」

「大陸ならここより確実に多いね、向こうの方が復興需要もあるし基本的に人手不足だし、そのかわり治安は決して良いとは言えないからそれなりの覚悟は必要だけどね、ただ問題なのは……」

「ただ、何です?」

「今はとある事情で大陸方面への民間航路が運行休止になってるのよ」

「事情?」

「そ、このラティス大陸の列島州から大陸に行く航路の途中で魔導種災害が多発してる所があって今は自衛できる空中軍艦かその護衛のついた大型飛行船しか手段が無いの、それであたしの艦もそれで出動要請が来てるくらいでね」

「大型飛行船ですか……そうなると渡航予算がちょっと…って、え?昶さん船乗りなんですか?」

「うん、これでも空中航空巡洋艦の艦長やっててさ、リルミアにその気があるならあたしの艦が明日の午後に大陸へ向けて出航するんだけど便乗する?それにあたしの部隊で個人戦闘の基本訓練くらいはしてあげられるよ?」


 悪い話ではない。

 それに歴戦の傭兵部隊の基本訓練なら冒険者としての経験値だって上げられるはずである。


「わかりました、お言葉に甘えさせていただきます」

「決定ね、じゃあ明日の朝に中央広場に迎えをよこすよ」

「よろしくお願いします、昶さん」


 方針は決まった。


 翌日の朝。

 リルミアはこれまで世話になっていた神殿に戻ると神官達にそのお礼を言って荷物をまとめた。

 とは言ってもストレージボックスに着替え一式や簡単な化粧品や野営するための小型テントや調理器具を入れる位でそう大した荷物量ではないのだが。

 あとは愛用の小型リボルバーとそのホルスターを腰に装備して旅立つ用意はできた。

 正直なことを言えばお得意の居合抜きを使っての接近戦用に日本刀が欲しいが生憎このあたりの武器屋には無く大陸に渡ってから手に入れるしかないだろう。


 そして世話になった神官達に見送られてリルミアは神殿を後にした。


「さて、行きますか!」


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