#4 実践訓練(2)
#4 実践訓練(2)
次の日からは魔法の時と同じように武器を使っての戦闘に関する座学や経験則からくる状況判断の仕方のトレーニングが始まった。
リルミアが生前、玲菜だった頃は学業の成績は優秀だったためにスポンジが水を吸収するように覚えていった。
リルミアの精霊魔法も元々才能があったらしくなんとか威力を絞ってコントロール出来るようになった。
射撃に関しても文句なしと昶の太鼓判があった。
そうなると次は剣技だがリルミアにとって問題なのはこの世界の剣は西洋剣が主という事である。
つまり玲菜が生前護身術として学んでいた居合抜きに西洋剣は全く向かないという問題があった。そこでリルミアは冒険者ギルドに頼んでこの世界の極東にあるという日本刀によく似た剣を倉庫から訓練用に貸し出してもらった。
どうやら日本刀のような細長い剣は多数を占める西洋剣を愛用する冒険者や剣技の経験者には頼りなく見えるらしく、それ故人気がないために出番がなくて文字通りのお蔵入りになっていたらしい。
基本的に西洋剣は日本刀のような斬撃ではなく、剣そのものの重量にまかせて振り回し相手を叩き切るという使われ方をする。
そして重量のある剣が命中すれば骨すら砕ける。防具を装備していたところで仮に刃を防ぐのに成功してもその衝撃は防げない。
要はほとんどの冒険者は斬る日本刀と叩き切る西洋剣は根本的に使い方が異なるために使い慣れた西洋剣から乗り換える者がいないのである。
ある日、剣技の実践訓練をやる事になった。相手は初日に昶に絡んだ大男である。
大男は戦斧を、リルミアは日本刀を選んだ。とはいっても訓練だからどちらも木製の練習用の物である。
剣技の教官であるリデアの前でリルミアと大男は向き合った。
大男はリルミアを見るとふん、と鼻で笑った。
リルミアは彼の歩き方や武器の扱いを見て(あ、こいつパワーしか取り柄の無い見掛け倒しだ)と直感した。
「エルフのお嬢ちゃん、今日は精霊魔法じゃなくて剣技の実践訓練だ、今のうちに棄権した方がいいぞ?」
「余計なお世話よ、それにあんたの方が私より格下だし」
「なっ、何だと!俺がお前より弱いってのか!!」
「あれ、そう聞こえなかった?もしかして顔と性格だけじゃなくて頭も悪いの?」
「こっ、このクソエルフ!後悔すんなよ!手加減しねえからな!!」
「はいそこまで、じゃあ始めるわよ」
リデアの指示で模擬戦闘のフィールドにお互いに向き合って構える。持つのは木製の練習用ではあるがそれでも危険はあるので刃の部分には布が巻いてあり威力軽減の魔法がエンチャントされている。
更に万一に備えて治癒魔法が使えるギルド所属の魔術師が待機している。
「始め!」
リデアの号令と同時に大男がダッシュして距離を詰めてきた。
「うおおおおおお!!!」
「はぁっ!」
大男の叫びとリルミアの気合が重なる。
すれ違いざまにガシンッ!と重い音が一回だけするとお互い背中を向けた状態で動きが止まった。
見ている受講生達が静まり返った。
「…………う……………」
うめき声と同時に大男が前のめりにゆっくりと倒れた。
「………見掛け倒しにも程ってもんがあるでしょ、しかも怪我させないように手加減してるのに」
リルミアの瞳が思わずジト目になる。
「もうちょっとはやるかと思ってたのに隙だらけじゃない」
「はい、そこまで!勝者リルミア!……ってちょっと!」
リデアの驚く声にリルミアが振り返ると起き上がった大男がリルミアの背後から掴みかかろうと手を伸ばしていた。
「やあっ!」
リルミアが伸ばされた手を掴むと大男の身体は大きく一回転して背中から地面に叩きつけられた。今度こそ大男は白目をむいて気絶した。
(合気道やっててよかった…………)
内心冷や汗をかきながらも冷静を装って受講生達の所へ戻る。
(でも………なんか違和感あるな、日本にいた頃の私はこんなに強く無かったんだけど)
戻るって体育座りで地面に座るとちょいちょいと肩をつつかれてリルミアは振り向く。感心した顔でこの前の魔術師の少女(マイアという名前らしい)が話しかけてきた。
「すごいね…………今の体術って見た事ないんだけど何あれ?」
「転生前にいた世界で護身術に習ってたの」
「そっかあ………こっちの世界にはそういうの教えてくれるところって冒険者ギルドくらいしか無いからちょっとうらやましいなあ」
「でも厳しいしそういうの教えてもらわなくても平穏にやっていけるのが一番だって」
「こら!!私語は慎みなさい!!」
「「す、すいませんっっ!!」」
リデアに怒られて思わず萎縮する二人であった。
とにかくそんなこんなでリルミアの半年間の受講は順調に進んでいった。
やはりエルフ特有の精霊魔法の能力と玲菜としての護身術、射撃の技術はプラスに働いたのである。
とにかく魔法関連やサバイバル技術、薬草に関する簡単な薬学等の座学もトップレベルの成績を出したリルミアは無事に全ての受講課程を修了した。
「さて、冒険者稼業を始めるとしますか!」
受け取ったばかりの冒険者養成課程修了証の入った木筒を握りしめ、リルミアは依頼者探しをする事にした。
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