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極道令嬢はエルフに転生したけどごく普通の人生を過ごしたい。  作者: TOMO103
第2章 天翔山脈の「亡霊」退治 ~空中巡洋艦で大陸への出航~
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#9 天翔山脈の亡霊(2)


 #9 天翔山脈の亡霊(2)


 艦橋の窓の向こうには巨大な山脈が立ちはだかっていた。


「これより本艦は「回廊」に入る、機関室はいつでも全力を出せるように、戦闘員は配置につけ、索敵は厳に!」


 空中航空巡洋艦イディナロークは天翔山脈の谷間、回廊と呼ばれる航路へと全長200mの巨体を踏み入れた。


「じゃああたしはCICで砲術の指揮をしに行くわよ」

「任せたわよリトラ」

「ええ、任されたわ、期待してて」

「帰還したウインドミルから報告、天候は厚く垂れ込めた雲によって天翔連山の頂上や尾根は隠されているとのことですが雲海上は天候良好との事です、尚「亡霊」は未だ見つかっておりません艦長」

「では私は予定通りミスティックシャドウⅡで瑞嵐2機と直掩に出ます」

「うん、じゃあ亜耶も予定通りに」

「では行ってきます、昶」


 亜耶とリトラは踵を返すと艦橋から出ていった。


「……ドラゴン退治、ですか」

「そ、既にこの近傍空域で旅客飛行船とその護衛の駆逐艦が撃沈されてるの」

「でもそれって国益にかかわる物流経路の確保って事なんだから帝国軍の仕事なんじゃ…どうして昶さん達傭兵部隊に?」

「単純に戦力不足、まだ正規軍は大戦前みたいな戦力の再編ができてないし、それに今の練度の低い帝国軍が相手をしたところでいたずらに被害を大きくするだけだからね」

「そんなに今の帝国軍は……」

「ま、あたしと亜耶が近衛騎士の資格持ちってのもあるけどさ、それ以前にあたし達はそれだけお偉方にも恐れられてるってことよ、それに成功報酬が大きい仕事だからね」

「仕事、ですか」

「そ、仕事……ところでリルミア、質問なんだけど」

「え?なんです?」

「さっき間違いなく「違和感を感じた」のよね?」

「えっ……」


 リルミアは昶の言わんとする事に思い当たる。


「………魔力を感じるレーダーの役目ですか」

「うん、撃沈された駆逐艦は敵を探知する間もなく撃沈されてるの、だから少しでも魔力を感じられる人材が必要なの」

「お世話になってますしそれくらいなら」

「ありがと、報酬ははずむから……麻衣、リルミアをマストの見張り台に案内してあげて、リルミア、見張り台には伝声管があるから異常を感じたらすぐに教えて」

「やってみます」

「わかりました、こちらです」


 麻衣は艦橋の後部にある巡洋艦にしては大きく高いマストへとリルミアを連れて行った。


「さて、ドラゴン退治を始めますか」


 昶は軍帽を被り直した。





「うわあ…凄い見晴らしだあ」


 リルミアはマスト上部にある見張り台から周囲を見渡した。

 左右にはそびえる山々、そしてその頂上と尾根を完全に覆い隠す分厚い雲。


「ん?」


 後方から聞こえる鋭い金属音に振り向くと飛行甲板からミスティックシャドウⅣが離艦するのが見えた。

 ミスティックシャドウⅣはマストにいるリルミアに手を振ると上昇してイディナロークの直掩をする為にその上空に位置を取る。

 続いて2機の瑞嵐が離艦し左右にバンクするとそれぞれ右舷と左舷に分かれて所定の位置についた。





「各部、魔力反応に変化は?」

「まだありません」

「亜耶からはどう?」

「ミスティックシャドウⅣからはまだ何も」

「CICからも索敵機器での光学観測では未だ発見できていないとの事です」

「歯がゆいな……こっちから打って出られないのは趣味じゃないのよね」

「亜耶は出撃中だしここは彼女に頼るようかもね」


 昶は艦橋からじっと前方に目を凝らしながら呟いた。




 「………ん?」


 リルミアはこの前感じたのとよく似た得体の知れない違和感にぞくりとなった。

 目を閉じて一回深呼吸をしてもう一度集中してみる。


(やはりこの前同じ感覚だ)


「うっ!!……何これ!」


 突然脳裏にビジョンが浮かんだ。

 黒い禍々しい姿の巨大なドラゴンが山々の間から周囲の木々や岩石を巻き上げながら飛び立つ姿。

 それは高度を取ると大きく羽ばたき、そして一鳴きするとこちらに向かってくるビジョンだった。


「これって……!!」


 リルミアは伝声管に向かって叫んだ。


「昶さん!!黒くて大きなドラゴンがこちらに向かってくるビジョンを見ました!!」

「間違いないのね?それで方向は?」

「えーと……右斜め上の前よりの方向です!」

「ありがとう、危ないと思ったら直ぐに戻っていいからね!」

「はい!」




 艦内にけたたましく警報が鳴り響いた。


「総員砲雷撃戦用意!!配置につけ!!トパーズ1とテンペスト小隊は牽制を!方向は方位0から45!上方を優先的に!」

「艦長、「亡霊」らしきドラゴンを視認!方位20!」

「大きい……!両舷最大戦速!!」


 昶が見る限り頭部から尻尾の先まで軽く見積もっても100mは確実にあるだろう。


「やれやれ、軍艦対巨大生物とは特撮映画かしらね」

「艦長、そんなのんびりした事言ってる場合じゃ……!」

「「亡霊」、高速でこちらに向かってきます!」

「各部署は既に戦闘準備完了とのことです」


 「亡霊」は一旦旋回するとイディナロークの正面に位置を取る。

 ブレスを撃つには絶好のポジションである……しかし。


「変です……何故ブレスを撃ってこないの?!」

「ふうん…面白いじゃない、バカでかいトカゲの分際で」


 昶は何かを察した表情で頷いた。


「チキンレースをするつもりよ、「亡霊」さんは……来るわよ!操舵手!あたしの言うとおりに操艦して、進路このまま!」

「はいっ!」


 「亡霊」がヴェイパーを引きながら突進してくる。


「まだよ……まだまだ」

「しかし艦長!」

「まだ進路このまま!!」


 「亡霊」はブレスを撃つ素振りすら見せずに一直線に向かってくる。


「かっ、艦長まだですか!」

「まだ駄目よ、下手に避けたらブレスであの世行きにするつもりよあいつは」


 昶は前方を睨みながらタイミングを測る。


「艦長!!」

「進路このまま!!」


 悲鳴のような声を操舵手が上げる。


「艦長、衝突します!!」

「今よ!左傾斜角30、艦首下げ15度!」


 「亡霊」がたまらずに左に回避した。

 少し遅れてイディナロークが動く。

 次の瞬間、イディナロークと「亡霊」がギリギリ、衝突寸前ですれ違った。

 ドン!!という衝撃波で艦が揺れる。

 「亡霊」は首を振って鳴きながら急旋回をして再び向かってくる。


「昶!CICはいつでも射撃出来るわよ!まったく無茶すんじゃ無いわよ、死ぬかと思ったわ」

「ごめんごめん、主砲撃てぇっ!!」


 イディナロークの20.3cm主砲が一斉に火を吹いた。

 次々に命中し爆炎が上がる。


「やった!?」

「いえ、多分まだよ」


 昶の言葉と同時に爆炎をまとわりつかせながら「亡霊」が再び姿を表した。

 「亡霊」が大きな口を開けて息を吸い込む。


「取り舵一杯!!ブレスが来るぞ!!」


 イディナロークが艦体を傾けて急速に左へ回頭する。




 ミスティックシャドウⅣのモニター越しに上空から見ていた亜耶は機体をダイブさせつつ120mmアサルトライフルを連射してブレスを吐こうとする「亡霊」を牽制する。

 それに気づいた「亡霊」はブレスを吐くのやめるとその巨体を急旋回させて射線から回避する。


「くっ、思ったより旋回半径が小さい!!」


 続いて2機の瑞嵐が交互に機首の30mm機関砲の射撃を加えるが全て硬い鱗に弾かれてしまう。


「やはり30mmじゃ効かないか、これならっ!!」


 亜耶は射撃モードをグレネードランチャーに切り替え再度「亡霊」を狙い撃った。

 それは「亡霊」の胴体に命中した。

 「亡霊」は不愉快そうに鳴くとミスティックシャドウⅡに向かってきた。


「なんて硬い……魔導機兵の武装じゃ歯が立たない!」





「亜耶でも苦労するか……」


 昶はミスティックシャドウⅣと「亡霊」が水平ロールシザーズでドッグファイトをするのを目で追いながら指示をとばす。

 

「各砲塔は各自の判断で砲撃を続行!索敵班は見失うな!」


 その時、突如としてばっと翼を広げた「亡霊」がその空気抵抗を利用して急減速をかけた。


「何する気!?」





「っ!!」


 亜耶は咄嗟に操縦桿を押し込んだ。急激に方向転換をして向かってくる「亡霊」の姿がホロモニターに映る。

 

「間に合わない!!」


 次の瞬間、高速で突進してきた「亡霊」はその巨大な脚でミスティックシャドウⅣを掴んだ。

 「亡霊」に掴まれて機体は急減速、激しいGが亜耶を襲った。

 亜耶の意識がかき消える。


「うぁっ……」


 操縦桿から手が離れてだらりと垂れ下がった。亜耶はぴくりとも動かない。

 

 「亡霊」が脚を離したついでに機体を蹴り落とす。

 ミスティックシャドウⅣがコントロールを失って墜ちて行く。



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