白い猫
よろしくです!
最後です!
最後でいいのかなって思うけど、とりま最後です。
地響きのように怒鳴り声を上げるご主人様に、ベルミンとヴォルトは飛び起きた。
今何時だ!? …ってまだ3時過ぎではないか!
一体なぜ早い時間にご主人様はおかえりになった?!
困惑しているのはヴォルトだけではないらしい。ベルミンも部屋の中を右往左往して混乱している様子だ。
「なななな、なんでご主人様が!?!? っていうか早く片付けしないと!! あぁ、仕事何も終わってないしー!!」
そう言ってヴォルトにムーっとした顔を見せる。
そうは言っても過去には戻れないだろう。ベルミンは早く片付けをしに行くがよい。理由は知らんが、ご主人様は今腹の虫が悪いらしい… 私はそちらを見てくる。
「ニャァ!」
「えっ? 何ヴォル?」
部屋をうろちょろしていたベルミンは突然の声に足を止め、ヴォルトの方を見たが既に部屋を後にする尻尾だけが見えた。
「ちょ、ちょっとまってっ!! 私も行く!!」
ベルミンもヴォルトの後を追って二階の部屋を後にした。まず真っ先に向かったのはトイレである。ヴォルトが散らかしてしまった。ペーパーを片付けなくてはならない。
一階に降りたベルミンは、玄関の方から聞こえてくるご主人様の大声が大泣きしている声だと分かった。
「ヴォルトはこんな時にどこに行ってるのよよー!! 片付けくらい手伝いなさーいっ!」
ものの四、五分程で掃除を終わらせると次にベルミンはご主人様の元へ向かった。厨房は基本的にご主人様は出入りされないので散らかっていてもバレないと判断したのだろう。
ベルミンがご主人様の声のする方を辿って行くと玄関に着いた。暴れている訳ではなさそうだ。
「ご主人様っ!! お、お、おかえりなさいませ。外で何があったんでしょうか? すごく悲しそうでございますが…」
早口で喋り、頭を下げるベルミン。顔を上げるとヴォルトを両手で上に持ち上げているご主人様の姿が見えた。ベルミンに背を向けているのでどんな表情なのか全く見えない。ヴォルトの姿もかろうじて耳やヒゲが見えるくらいでほとんどがご主人様の体に隠れている。
ベルミン、来るのが遅かったじゃないか… 一体何をしていたんだ…
「はぁぁあっ!?!? ヴォルのせいで散らかったトイレを掃除してたんでしょう!! 絶対許しませんからねっ!…… って、何よ今の声?」
誰とは失礼な。先程まで楽しく2人踊っていたじゃないか。ピアノとやらを使って…
ベルミンは自分が聞き取っている声の持ち主を理解した。
「ちょ、ヴォルなのっ??! なななな、何でヴォルの声が聞こえるの!?」
ベルミンの困惑は最もだが、ヴォルトはそれを理解した上でベルミンの問いを無視して話した。
なぜならこの時、ヴォルトにはもう時間が無かったからだ。
ベルミン、ご主人様は今、嘆き悲しんでおられる。私にはどうする事も出来ない… なぜならご主人様の悲しみは私に原因があるからだ。
そこで、一つ頼みがあるんだベルミン。聞いてくれるか?
ベルミンは頭の中で聞こえる声に耳を傾けながらヴォルトとご主人様を視界に入れていた。ご主人様はヴォルトを胸の前に引き寄せると、そのまま膝から崩れ落ちて更に大きな声で泣き始めた。窓ガラスが軋んだ。
「もう、何が何だか分かんないっ!! でも、ヴォルの頼みを聞いて欲しいって言うんならこれからも私と遊んでくれるって約束してよね! いいっ!?」
分かった、約束するよ。私はベルミンとこれからも遊ぶよ…
「そ、そう。 ……ありがと。 …で、頼みは何なの?」
ヴォルトの返答を聞いて少し照れ臭そうにお礼を言うベルミン。思い出したかのようにヴォルトのお願いを聞き直す。
ベルミン、ご主人様をこれからもよろしく頼む… ご主人様は悪くないし、誰が悪い訳でもないのだ。 そういう人生というだけの事なんだ…
よろしく頼むよ… ベルミン。
「え… それってどういう事?」
思っても見なかったヴォルトのお願いに理解が追いつかないベルミン。
そして、ヴォルトの声はベルミンの質問にまたしても無視をした。
いや、無視をした訳では無かった。先刻告げたように、彼にはタイムリミットが迫っていたのだ。それがタイムオーバーとなってしまった。
返事をしないヴォルトにもう一度問いかけるベルミン。
「ねぇ、ヴォル! どういう意味なのっ!?」
ベルミンはそう言ってヴォルトとご主人様の方へ近づいていったが、ご主人様の胸に強く抱きしめられているヴォルトを見た瞬間足が止まった。
「うそ…… そんな事… 有り得ないわよ…」
ベルミンが目の当たりにしたのは、微動だにしないヴォルトの姿だった。呼吸もしていなければ、彼の尻尾もご主人様の腕の下に垂れ下がっている。文字通り微動だにしていないのだ。
「ごめんなさい… ごめんなさい… あなたのせいじゃないのに… ごめんなさい…」
ベルミンはご主人様が泣いているだけでは無く謝っている事に気付いた。あなたとは誰なのか。ベルミンは思いたく無かったが目の前の状況はつまり、ご主人様がヴォルトを殺してしまったのだろう。
その時のベルミンにとっては最早ヴォルトの死以外受け取る事が出来なかった。
その後も、日が落ちて寒さが肌にひりつくまで二人と一匹は玄関で止まった時を感じていた。
ベルミンがやっとの事で発した言葉は、ご主人様お身体が冷えるといけませんのでどうぞ中に、であった。
ーーーー
それから、一週間が過ぎた。ご主人様は一度も部屋から出て来ることはなく、塞ぎ込んでいた。ベルミンはというと、こちらもやはりヴォルトの死は彼女にとって深い傷となんてしまった。しかしヴォルトとの約束を支えにご主人様の体調管理を始め、屋敷の仕事全般も手を緩める事なくしっかりこなしていた。
ただ、ベルミンは仕事の合間を見つけては二階のピアノの部屋へ向かい、あの時のステップを踏んでいた。床と靴底の擦れる音だけがその部屋にはあった。
「ヴォル… 一緒に遊んでくれるって…… 約束したじゃん!」
それが苛立ちなのか悲しみなのかベルミン本人にも分かっていなかった。おそらくそれら全てなんだろう。
キンコーン
いきなりの来客を知らせる鐘にビクつくベルミン。二階の窓から玄関側を見ると白いスーツを纏った紳士が一人立っていた。来客を出迎えにその部屋を去ろうとするが、入り口で立ち止まるベルミン。
「あの約束… 絶対守ってよね! 信じてるから!」
そう言い残して、ベルミンは走り去っていった。
ありがとうございました!!
是非全部読んだことない人は初めの方も読んでみてください!
自己満小説ですがw




