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ニャオ!  作者: ざくろ
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ニャニャ

よろしくお願いします。

食堂へ朝食を食べにきたご主人様と私は、何十人もの人と食事が出来るような大きな机といくつもの椅子を素通りして、一番奥の席に腰かけた。

私には腰かけたというより、ご主人様の膝へ乗っかったといった方が正しい。

すると、ご主人様が椅子に腰掛けるタイミングを知っていたかの様に、一人の使用人が朝食を運んできた。朝食のいい香りが、先行して私の元へやって来る。それはご主人様も同じらしい。お腹いっぱいに鼻から息を吸うと、それをゆっくり味わってから吐息を漏らしていた。

「おはようございます。ご主人様」

ご主人様の隣までやって来たその使用人は、会釈しながら挨拶をした。

「おはよう、ベルミン。今日も素敵な朝食の様ね」

「はい。本日は、パン、ソーセージ、シチュー、それからデザートにバームクーヘンを用意して御座います。コーヒーと紅茶、どちらになさいますか?」

ご主人様は今日のメニューを聞いて嬉しそうだ。

「紅茶でお願い。早く食べたいわ!」

「かしこまりました。ただ今準備致します」

そういうと、ベルミンは手際良くテーブルの上に朝食を並べると紅茶を入れて会釈をし、ご主人様の斜め後ろに数歩下がった。

「それでは頂きましょう!」

そういうとご主人様は勢いよく朝食に食らいつく。私の朝食は?と思うかもしれないが、ご主人様が私に朝食を分けてくれるので、それで足りるのだ。私の分を別に用意してもらうなど、恐れ多くてたまらない。

ご主人様は既に半分程食べ終わり、それでも食べるスピードは緩まないまま、ベルミンに声をかけた。

「ベルミン、今日は午後から出かけるから、家の事は任せたわよ」

「かしこまりましたご主人様。例の方のところへ行かれるのですか?」

「ええ、そうよ。ヴァラク様ほど、身も心も美しい男性はいないわ。あぁ、早く会いたい」

ヴァラク様というのは、ご主人様が愛してやまない隣町の貴族の方である。私も一度見た事があるが、女性と見間違えるほど中性的な顔立ちをしていて、美しい女神の様な男性だったのは印象深い。

「ご主人様、つきましてはヴォル様もご一緒にお連れなさるのですね?」

ベルミンはご主人様が私も一緒に連れて行くものだと思っている様だが、そんな事は絶対に無い。

「ベルミン、残念だけれどヴァラク様にお会いしに行く時だけはヴォルは連れていけないの」

何故か?

それはヴァラク様がアレルギー持ちだからだ。私が一度しか会った事がないというのは、ヴァラク様がアレルギー持ちだという事を本人も含め誰も知らなかったからである。

鼻水は止まらないし、目は充血するしで、それはもう辛そうだった。

「左様でございますか」

ベルミンは特に疑問を持つわけでもなく、了解した、と言った様子だった。

しかしながら、少し残念そうな顔を見せているあたり、ベルミンは少しサボりたかったのではないかと思われる。別に私は言葉を話せるわけではないのだから、ご主人様がいないのならば好きにすればいいと思うのだが。何かに見られているその雰囲気がベルミンにとっては純粋にサボれない原因なのだろう。

「美味しかったわ、ご馳走様。片付けよろしくお願いねベルミン」

いつのまにか食べ終わっているご主人様。

私はご主人様から降りると、じっとしていた身体を伸ばして、大きく口を開けた。

口の中にまだ残る、ソーセージの香りを楽しんでいると、ご主人様に抱きかかえられた。

「それじゃあヴォル、行ってくるわね。くれぐれもベルミン達の邪魔はしないように大人しくしてるのよ?」

そういうと、私を床に下ろしてからそそくさと身支度を終えるとヴァラク様に会うために外へ出て行った。

「行ってらっしゃいませ、ご主人様」

玄関まで見送りに来ていたベルミン。

外にはご主人様を乗せるであろう馬車が一台止まっていた。

ゆっくりと閉まって行く扉。外から入ってくる冬の香りは、扉が閉まった後も私の体の周りをしばらく舞っていた。

その冬の香りが段々と薄くなっていく中、私の落ち着いた心も次第に薄くなって、代わりになって出てくるのは、ご主人様の前で優雅にする必要のない私のもう一つの心であった!!


久しぶりに私を包むこの感覚!


四つの足全てに力がみなぎる!


嗅覚、聴覚、触覚、視覚全てが、フィルターが取れたように鮮明に流れ込んでくるっ!


ご主人様の知らない、私の本当の姿…っ!!


「ンニャァァァァァアアアアアッッ!!!!」


大きい声を出したのもいつぶりだろうか。やはり気持ちがいい。私はこうでなくてはいけない。

チラリとベルミンの方を見ると…

残念そうな顔をしていた。先程言ったように、ベルミンはサボりたいのだけれど、しかしご主人様のいない空間で私が本来の自分になるということも知っているのだ。だからこれから起こる事も分かっているのであろう。それを考えると、ベルミンは憂鬱になるのだ。

そう、ここまではこの物語のプロローグと言ってもいい。

私とベルミン。

天に昇る思いと地に落とされた思い。

天国と地獄が鳴り響く!

最期まで読んでいただいてありがとうございます!


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