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魔法少女をあきらめない! ~筋肉神に愛された少女~  作者: ぽんこつ少尉@『転ショタ3巻/コミカライズ3巻発売中』
第四章

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第35話 魔法少女は追跡する

交換日記[魔法神]


……ナマニクなどとDQNネームをつけるから、逃げ出しただけかもしれませんぞ?

 アデリナは当然として、どうやらわたし自身もまた、自分で考えていた以上に疲労が蓄積していたようです。

 目を覚ましたとき、窓から入り込む陽光はすでに直上にありました。


 チェックアウトの時間は聞いていませんが、どうやら髭おじさんはわたしたちを起こしてはくれなかったようです。

 わたしはセミダブルのベッドで身を起こし、隣で死んだように眠ったままのアデリナを揺り動かします。


「アデリナ」

「……ん……んんぅ……?」


 濃い色の瞳が微かに開き、きょろきょろと動いています。


「寝過ぎました。そろそろ出発しましょう」

「蓮華……」


 アデリナが上体を起こして額に手をあて、頭を左右に振りました。艶やかな青髪がさらさらと揺れています。

 わたしは一足先にベッドから降りて洋服を身にまといます。

 ちなみに昨夜のうちに洗濯済みです。すでに渇いているのは、アデリナが火の魔法で軽く炙ったからです。


「おかしいぞ」

「はい?」

「魔素の発生源が足りない」


 珍しく。珍しくです。

 アデリナは寝起きなのに寝ぼけ眼ではなく、鋭い口調で言いました。


「……? 何を言っているのかわかりませんが、早く服を着てください」


 その大きな胸肉は目の毒です。

 アデリナは歯を噛みしめて毛布を叩きつけ、すぐにストッキングのようなものを履き始めながら早口で言い捨てました。


「あぁ! くそっ、やられたか。蓮華、鎧竜の――ナマニクはいるか?」

「え?」


 魔素の発生源が足りない。つまり、アデリナとわたしと――……。

 わたしはナマニクさんの寝床にしていたリュックに視線を向けて、それがそこにないということに気がつきました。


「え……え……?」


 具足をつけ終えたアデリナが、胸鎧を頭から被って腕を通します。


「さらわれた。あたしの荷物もない」


 あるのは服と靴と、かさばるから盗らなかったと思われるアデリナのグレートソード・ドラゴンスレイヤーだけです。当然、金貨袋もありません。


 アデリナはばたばた走って汲み置きの水で顔を洗い、壁に立てかけたグレートソードへと胸鎧の背中を押しつけるようにして装備します。

 あたしはただ呆然としてしまって。


「何をしている。寝ぼけてる場合じゃないぞ。早く準備しろ」

「え、あ……」


 目を、とにかく目を覚まさなきゃ。

 わたしも汲み置きの水で顔を洗い、口をすすぎます。


「ナマニクさん……」


 冷たい水の感触で、頭が少し回ってきました。


 さらわれた? 誰に? 髭おじさん?


 ざわっと背筋が冷たくなりました。


 売られる? 殺される? そんなの嫌!


 シーレファイスの鎧竜が、黑竜から命がけで守った子。アデリナが、死んだ鎧竜のお腹から取り上げた子。わたしを親と勘違いしてしまった子。


 迂闊でした。完全に失敗しました。髭おじさんにナマニクさんを一瞬でも見られたときに、わたしたちは宿を変えておくべきだったのです。

 あの方は盗賊だったのでしょうか。


 アデリナがドアを乱暴に開けて、わたしを振り返ります。


「行くぞ」

「ええ」


 廊下に出て、わたしたちは片っ端からドアを開けて回ります。

 髭おじさんは、宿泊客がいっぱいで一部屋しか空いていない、と言っていたにもかかわらず、わたしたちの他には誰もいません。もちろん髭おじさんもです。


「ああ、クソ!」


 アデリナがぺちんと壁を叩きました。

 宿はすでにもぬけの殻でした。宿泊客の食材すらありません。おそらくここは宿などではなかったのでしょう。そう見せかけただけの盗賊のアジト、もしくはただの空き家――……。


 どこの盗賊かなどの手がかりが残っていないか、宿を一通り探してはみたのですが、やはり髭おじさんの正体に迫りそうなものは何もありません。


「わ、わたし、近くを走り回って捜してみます!」

「やめろ。デタラメに捜しても無駄だ」

「でも!」


 太陽はもう高く、時計がなくともすでに真昼なのだと想像がつきます。もしも盗賊が動くのだとしたら、まだ暗いうちからでしょう。盗まれてから時間が経過しすぎています。盗賊はすでに安全圏へと逃げ切ったはずです。

 それでも、じっとなんてしていられません。あの子はわたしのことを親だと思ってくれているのだから。


「やっぱりわたし――」

「落ち着け、蓮華。行き先が判明しても、二人そろってなきゃ出発もできない。少し考えさせてくれ」


 外からは露店の呼び込みや買い物客、旅人の声がしていました。

 ナマニクさんのことも気になりますが、わたしたちはこれで一文無しになってしまいました。騎竜がなくては、レアルガルド大陸の縦断にどれほどの時間がかかるかさえわかりません。

 ことによると一年。アデリナの歩く速さを考えれば、それ以上かも。

 わたしたちは足と、お金と、大切な友人を、たった一晩の油断ですべて失ってしまったのです。


「駄目だ。何も思いつかん。進むにせよ戻るにせよ、状況だけでも把握しておこう。その後に聞き込みだ」

「はい……」


 アデリナは小さなため息をつくと、苛立っていた表情をいつもの顔に戻して宿の裏、厩舎のあるほうへと歩を進めます。

 わたしもそれに倣って。


「あ……」

「くそ、やっぱりか。……ん?」


 予想はしていましたが、当然のように二頭の馬もいなくなっていました。

 けれども。けれども、藁の敷き詰められた馬の寝床には、毛玉がぽつりと正座していて。


「ランドルフさん?」

「?」


 ランドルフさんです。どういうわけか厩舎にいたみたいで。


「こんなところにいたのか」


 ランドルフさんが毛玉の中から細い腕を出し、顔を覆うように地面まで垂れていた前髪を左右から開けます。


「ランドルフ、お金なくなった。馬のもさもさ、温かかったのだがー……」


 あ~……お金がなくて厩舎に入り込んでいたということでしょうか……。曲がりなりにも王様なのに……。


「ランドルフ、あんたにはダーグアオンの件で借りがある。そういうときは言ってくれ。とはいえ、あたしたちも今し方無一文になってしまったところだが――」

「フォ、フォ、フォ」


 もさもさと身体を左右に揺らして、ランドルフさんが笑いました。


「ランドルフと同じか?」

「そうだ。ランドルフと同じだ。ところでランドルフ、あんた昨夜からずっとここで眠っていたのか?」


 もさもさがこくりとうなずきます。


「ランドルフ、寝てた。寝たり起きたりした。ランドルフ、頻尿」


 わたしとアデリナが同時に顔を見合わせてから、同じ質問を彼へとぶつけました。


「昨夜、ここにいた馬を盗んだやつを――」

「――見ませんでしたか!?」


 ランドルフさんはぱちくりとお目々を瞬かせて、人差し指を南西へと向けます。

 追跡開始です――!




交換日記[筋肉神]


うむ。せめてキンニクンであれば……。



交換日記[七宝蓮華]


(´;ω;`)



交換日記[アデリナ・リオカルト]


おまえらちょっと黙ってろ。

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