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魔法少女をあきらめない! ~筋肉神に愛された少女~  作者: ぽんこつ少尉@『転ショタ3巻/コミカライズ3巻発売中』
第三章

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第22話 魔法少女は大海をのぞむ

交換日記[魔法神]


野蛮で粗暴で暴力的でちんちくりんな自称魔法少女の脳筋娘と、優しく聡明でスタイルすら非の打ち所のない我が愛しの魔女っ娘が、ついに旅立ちの日を迎えましたぞ。

感無量でございますなあ……。

 森林の大海亭で朝食を摂った後、アリッサさんにしばしの別れを告げて、わたしとアデリナはクラナス王からいただいた馬に乗り、シーレファイスを後にしました。


 アデリナの馬は王子様が乗るような白馬で、わたしの馬は栗色の毛をしています。

 ぱかぱかぱかぱか。蹄の音が心地良く響いていました。

 長い林道を抜けると道らしきものがなくなり、草原をひたすら進みます。


 魔物に襲われるたびにアデリナを馬番にして、馬を降りたわたしが殴って追い払います。その役割は逆でも可能なのですが、アデリナの体力を考えるとなるべく動かさないように気を遣ったほうが良い気がします。


 ちなみに鎧竜の子は、わたしが背負った革製のリュックサックの中から顔を出しています。でもクラナス王からいただいたこの子の()は中々にキモいので、紙袋に詰めてアデリナのバックパックにそっと忍ばせました。


「蓮華、バックパックからわしゃわしゃ聞こえる」

「気のせいでは?」


 目的地のアリアーナ神権国家やリリフレイア神殿国はとても遠く、直接そこへ向かうルートはまだ解明されてすらいません。地球だったら飛行機で目的地までひとっ飛びなのですが、地図のないレアルガルドではそうもいかないそうです。


 わたしたちはこれから先、多少の遠回りをしても国家や人里のあるルートを辿って旅をしなければなりません。

 そんなわけで、まず最初に向かう先はシーレファイスの西方に位置するアルタイルという国だそうです。


「アデリナ、アルタイルというのはどんな国なの?」

「猫がいる。山ほど。可愛いぞ。だが残念ながら犬はいない。猫と仲が悪いから。可愛いんだけどな」


 何言ってんだ、この人……。


「他には?」

「賢人の都と言われているよ。小高い丘に神殿があって、内部の図書館には多くの書物があるんだが……」


 突然言葉を切りました。

 もしや魔物でも現れたかと思ったのですが、その気配はありません。

 蹄ぱかぱか。草原を吹き抜ける風が心地良いです。


「書物が?」


 アデリナは少しの間、思考するように切れ長の瞳を閉じて、ぽつりと呟きました。


「うーむ。いや、石盤遺跡か……」

「石盤遺跡? 魔導文明のもとになったと言われる遺跡は、もっともっと北のアラドニアにあるのではなかったの?」

「うん。もちろんアルタイルに黒の石盤遺跡があるわけじゃない。だけど、石盤遺跡の写本が秘蔵されていると父から聞いたことがある」


 え……。


「そ、それって、もしかして魔導書や魔術書なの?」

「どうだろうか。あたしも見たことがないから、なんとも言えないな」


 アデリナが長い青髪を傾けて、苦笑いを浮かべます。


「何せ黒の石盤遺跡に近づくものは、魔王が問答無用で斬殺するからなあ。本当に写本なのかどうかもあやしい」

「斬殺……」

「うん。魔王は剣士らしい。それも、とんでもない腕を持ったやつだ」


 わたしとアデリナは力を失った黑竜にさえ勝てませんでした。けれども、魔王は一度完全体の黑竜から力を奪い取っているのです。おそらく今のわたしやアデリナでは、秒ともたずに殺されてしまうでしょう。


「魔王は黒の石盤遺跡が秘める力を独占したいのでしょうか?」

「どうかな。黒の石盤遺跡が強力な魔導書なのだとしたら、魔王が魔導先進国だったアラドニアの魔導文明を完全に滅ぼしたってのはどうにも腑に落ちないんだよなあ。アラドニアの魔導文明を利用することもできたはずだから」


 そっか……。

 でも、だとするならば――。


「封印……?」


 何気なく呟いた言葉に、アデリナがうなずきます。


「その可能性は低くない。魔王ですら封印せねばならない秘密(ちから)が、あの黒の石盤遺跡にはあるのかもしれない」


 ぞわり、と皮膚が粟立ちました。

 わたしのもといた世界にも、そういった兵器はいくつか存在しています。核兵器や細菌兵器、毒ガスなどです。

 もしも黒の石盤遺跡がそういった類のものなら、わたしはそれを手に入れるべきではないのでしょう。魔法少女にはなりたいけれど、制御できないほどに持て余す強力な力であるならば、持ちたくはありません。


「まあまだ想像段階だ。あたしは魔導書魔術書には興味がないし、蓮華が自分で見て決めればいいよ」

「そうですね。あ、でもわたし、レアルガルド文字は読めませんから、あの――」

「わかってるよ。あたしが読み聞かせながら教えるから、徐々におぼえるといい。図書館なら紙とペンも借りられるだろ」


 優しい……!


「ありがとう、アデリナ」


 写本が何冊存在するかは知りませんが、もしもその知識を得ることが危険だと判断したときには、残りの知識は破棄しましょう。必要があれば、写本の焚書(ふんしょ)も考えなければならないかもしれません。そこらへんはクラナス王の出番でしょうか。


 蹄の音、ぱかぱかぱかぱか。

 しばらくすると、風に潮の臭いがのってきました。


「……? アルタイルは海が近いの?」


 アデリナが懐から地図を取り出し、馬上で広げます。

 縮小されたとはいえ、とても大きな地図です。白馬さんは若干迷惑そうな表情をしている気がしますが、ここは我慢してもらいましょう。


「そうみたいだ。そろそろ見えてくるんじゃないか」

「アルタイル?」

「海だよ。地図によればアルタイルはセラリア海の海峡を船で渡った少し先だ。シーレファイス近辺というか、ドリイル地方内ならまだ地図の信頼性は高い。たぶん間違いないだろ」


 そう言いながら、アデリナは地図を丁寧にたたんで懐へと入れます。

 出したときから謎でしたが、いったいどこにしまっているのでしょうか。


「地図、どこに入れているの?」

「胸の谷間だ」


 ぱかぱかぱかぱか。ゆさゆさゆさゆさ。

 なんですか、それは嫌味ですか?

 わたしは引き攣りそうな笑顔で忠告して差し上げます。


「……汗でインクが消えますよ」


 アデリナが目を見開いて眉根を寄せました。


「冗談に決まってるだろ。胸鎧の内側に暗器入れがある。ナイフと一緒に収めている」

「ああ、そう……」


 ぅぅ……恥かいた。


「お、見ろよ蓮華。海だぞ」

「ほんとだ」


 海が見えてきました。陽光を受けて黄金色に輝いていて。とても綺麗。

 セラリア海です。向こう側に陸地が見えますので、どうやら海峡のようです。


 わたしたちは海岸に出て、北方に馬を歩かせます。

 穏やかで、広大で。波音をバックに、わたしたちは海岸沿いを北寄りに進みます。


「船はどこにあるの?」

「もう少し先に交易船の経営をしている一族がいる」

「顔見知り?」

「一応な。こんなでも王族だからな」


 そう言って、アデリナが無邪気に笑いました。

 王族の持つ人脈は、旅を続けることにおいてとても心強いことです。

 そう思っていた時期が、わたしにもありました。



交換日記[筋肉神]


なんだと貴様!? 言い過ぎではないか!

貴様の娘なぞあれだっ、その~っ、筋肉の欠片もないせいでスタイルが女性らしくすらりとしていて、顔なんぞひどいくらいに整っていて、ちょっとばかりすごい魔法が連発できるだけのただのイケメン娘ではないかっ! ……むぅ?

……だ、だがうちの娘とて脳内だけは乙女なのだぞっ!



交換日記[七宝蓮華]


なんがもうごべんだざいぃぃ……。゜゜(´□`。)°゜。



交換日記[アデリナ・リオカルト]


蓮華いじめんな!(`-´メ)

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