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太古より、八百万の神々が住む蓬莱山の頂には、
不老不死の霊薬、澄花酒があるといわれている。
蓬莱山の高所に住む狼は、神々の藩屏として、
山の秩序と澄花酒を護っていた。
しかし、麓に人間が住むようになると、
澄花酒を狙う盗人や、狼信仰の魔除けの犠牲となり、
狼は絶滅してしまう。
憐れんだ天帝は、狼が二度と人間に襲われぬよう、
人の姿と、翼をもつ狼の二つの姿を与え、
威徳高い神獣、天狼として転生させた。
人間は蓬莱山に立ち入ることを禁じ、
麓にお社を建立し、天狼を祀るよう命じた。
天狼は、蓬莱山の高所に集落を築くと、
以降は下界と交わることなく暮らした。
群れで最も力ある狼を天狼主といい、
山の守護神として人間達に畏れ崇められた。