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第9話 膝枕

(こんな鉄の塊が空を飛ぶなんてありえない!!!)


と、理系を選択している癖にこんな批判を脳内で連発している俺。いや、声に出したら白い目で見られる事は分かりきっている。でも無理なものは無理!分かるだろ?この気持ち。




軽井沢旅行出発の日、待ち合わせの青葉邸(家というより邸宅と言う方がしっくりくる)で俺たちが見たものは庭の一角にあるペリポートに留まっている巨大ヘリ。何ていうのかは知らないが、前部と後部の二箇所にそれぞれ2対ずつあるプロペラという時点で俺たちの認識している『ヘリコプター』と違う。内装もここはどこの高級ホテルですか?って程広い。というか、ここが本当にヘリの中だとは考えられないほどの豪華さだ。俺はこの時点で不覚にも安心してしまっていた・・・


香織が軽井沢までヘリで行くと言い出した時、俺は一瞬硬直した。そして必死になって反対を表明した。高校生の交通手段じゃないだろうと、自分では至極最もな事を言っているつもりだった。しかし初めて乗るヘリコプターに興奮した沙織とナオトを筆頭にその場の全員が俺の主張を無視。ここに民主主義における俺の敗退が決まった。それでも内装を見てこれなら大丈夫かもしれないと思っていた。そう数分前までは・・・



この旅行にはショウやナオト以外にも俺のクラスメイトが参加している。腰まである漆黒の髪には天使の輪が浮かび、清楚な雰囲気を漂わせる彼女の名前は眞鍋梓織(まなべしおり)。1年前、星雲高校の入学式で知りあい、同じクラス、席も目の前だったという縁から話をするようになった。ショウやナオトたちと共に休日に遊びに行くこともあるほどの仲だ。まぁ、女友達筆頭(?)みたいな感じだろうか?ちなみに、本人の前では言えないが俺的には男友達扱いだったりする。


その梓織は俺の左側で初めてのヘリコプターに興奮したナオトのマシンガントークを笑いながら聞き流している。俺の右側では窓の外の見ながらはしゃいだように騒ぐ沙織に苦笑いを浮かべながらも相槌を打っているショウ。そして俺はなるべく外が見えないようにうつむき、ガタガタと震えながら真っ青になっていた。



ヘリが浮かび始めて10秒後、まだ余裕。


それから20秒後、多分大丈夫。


1分後、すでに後悔し始めた俺。


ヘリが上空千メートルを超える高さを飛び始めてからはもう気分が悪いわ、眩暈(めまい)がするような気がして・・・程なく完全グロッキー状態に陥った。

ついさっきまでは俺の隣で楽しそうに話しかけていた香織も、俺が何も反応を示さなくなった事に飽きたのか、何も言わず俺の左腕に自分の右腕を絡ませながら笑顔を振りまいている。普段なら腕を振りほどこうとするだろうが、今の俺はそんな余裕はない。ショウもナオトも梓織も我が妹も、真っ青になっている俺に気付きながらも完全無視。香織に至ってはいつもは抵抗する俺が嫌がらないもんだから「今のうちに充電♪」とか言いながら普段簡単には出来ない事を楽しんでいるフシが見える。・・・お前たち、俺の事が心配じゃないのか? 俺、マジで死にそうなんだけど・・・ 「ははは、こんな事考えられるんならまだ余裕だな」そんな強がりを思いながらもだんだん目の前がブラックアウトしていく・・・

既に限界を超えていたようだ。




みんなの笑った声が聞こえる。木々のザワザワとした音が聞こえ、ひんやりとした風が頬を撫でる。目を開けると青々と茂った大きな木の間から快晴の空が見えた。


気付いた時には既に軽井沢に到着しており、俺は日陰になった緑の芝生の上で寝ていた。みんなは少し離れたところでピクニックのようにシートを広げ昼食を取っている。


「あ、起きましたか?」

頭の上から香織らしき声が聞こえる。まだ完全に覚醒していない俺がボーっとしていると、

「みなさぁ〜ん!起きたみたいですよ〜」

という声が再び頭の上から聞こえ、その声に反応するかのようにバタバタとこちらに近付いてくる足音が聞こえた。


「おはよ〜♪」

「よく寝てましたね」

「気持ちよかったか〜?」

思い思いの言葉を口にしながら近づいてくる御一行様。ちなみに、上から沙織、梓織、ナオトの順。

「ん〜・・・つーか、最悪だったよ。気持ちいいわけないだろ。今もまだ宙に浮いてる感じがして気持ち悪い」

「お前、今の状況が分かってないだろ?」

「は・・・?」

そう、ショウに指摘されて始めて気付いたのだが、俺は香織に膝枕された状態で眠っていたのだ。

「ちょっと、気持ちが悪いってどういう事ですか!?」


香織が俺の言葉に反応して怒っているが、その声はなんだか嬉しそうでもあった。

見渡さずとも分かる。みんなのどのようにいじってやろうかと考えているようなちょっとムカつく顔。

そして、ついさっきまで文句を言っていた事も忘れて、香織が少し頬を赤らめながらも満面の笑みを浮かべている姿を。

というわけで無事(?)に再開することが出来ました。

待っててくれた人はいるのかなぁ〜?いたらいいなぁ〜・・・笑w

よかったら再びよろしくお願いしますo(_ _*)o



次回予告


第10話 西洋の城!?

あ、俺こんなラブホ見たことあるかも!

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