第6話 さよなら
昼休み、俺はショウとナオトに連れられて1年の校舎まで来ていた。
というか、俺の悪友二人が無抵抗の俺を1年の校舎に連れていくために荒縄で縛ろうとした事には驚いた。
『お前たちはこんな趣味があったのか!?』
『俺を変な世界に引き吊り込まないでくれ!』
『変態プレイはお前たち2人で楽しんでくれ!』
などと騒ぎ立ててようやく逃れることが出来たのだ。
昨日シリアスな現場を目撃していたクラスメイトは昨日とは違った意味で唖然としていたが・・・
というか俺たちも昨日の今日でよくやるものだ・・・(←まるで他人事)
「ったく、お前らまで来んでいいだろぉ〜が」
「まぁまぁ〜」
「お前・・・楽しがってるだろ・・・」
「そんな事ないさぁ〜♪」
ナオトの頭の上に音符マークが見えるのは気のせいだろうか・・・
そんな事をしているうちに1年の校舎に到着した。そこでふと俺は足を止める。
「どうした?怖じ気づいたとかはなしだぞ?」
「いや、ナオト・・・ 青葉って何組だ?」
「は・・・? ショウ?」
とナオトはショウに向かって振り返った。
「・・・ちょっと待ってろ」
ショウはそう言い残すと携帯電話を取り出しどこかへかけ始める。
「お前ら、手際悪いな」
「うっさい!お前こそ知っとけ」
とナオトと軽口を叩いているうちにショウの電話は終わったようだ。
「3組らしい。行くぞ!」
「さっすがショウ頼りになるねぇ〜」
「お前は全く役に立ってないけどね・・・」
「・・・・・」
そうして俺は軽口を叩き合っている二人を置いて1年の校舎に入って行った。
俺は今1年3組の教室前にいる。悪友2人は俺がちゃんと向かっているのを確認するといずこかへと去っていった。一応空気は読めるみたいだ。
入り口付近にいた男子生徒に青葉を呼び出してもらうと青葉は沙織に付き添われながらやってきた。そして俺はそのまま青葉を連れ出し、今は屋上に二人して立っている。
「・・・・・」
「・・・・・」
もうそろそろ5月になるというのに屋上ではまだ冷たい風が二人の頬を通り過ぎていった。
「・・・悪かったな」
「え・・・?」
「言い過ぎた。悪かった」
「ううん・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・じゃあな」
「え? 待って!!!」
言うだけ言って屋上から立ち去ろうとする俺の前に青葉は回りこみ、少し興奮した声色で慌てて呼び止めた。
「あ、あの・・・」
「なんだ?」
「先輩・・・やっぱり先輩の事が好きです。私じゃダメなんですか?」
青葉は今にも泣き出しそうな顔をしながらも俺をじっと見つめながらはっきりした口調で再び告白してくる。青葉の気持ちがしっかりと伝わってくる分、俺も逃げるわけにはいかないと感じた。だから再びはっきりと答えを口にする。
「悪いな・・・」
「な、なんで・・・?」
青葉は少し青ざめた顔をしながら、それでも俺に詰め寄ってきた。
「・・・お前の気持ちは嬉しかったが、俺は今恋愛は出来そうにないんだ」
「え?」
「だから悪いな。これ以上一緒にいてもお前を傷つけるだけだろうから・・・」
「・・・・・」
「じゃあな・・・」
俺は青葉のふわふわした頭を2度3度ぽんぽんと叩きながら屋上の出口に向かった。
青葉は泣いているのかもう追いかけてくる気配も見せず、俺も振り返ることはなかった。
屋上から校舎に入ったところでショウとナオト、それに沙織と出くわした。
「お前ら、見てたのか・・・」
「バカ兄貴ッ!!!」
そう短く叫ぶと沙織は青葉の元にかけていき、ショウとナオトはそれをただ守っている。まぁこの二人が青葉の元へ行ったとしても何も出来ないだろう。
「・・・今度は殴りかかってこないのか?」
自虐的に言った俺の言葉にナオトはキザったらしく肩をすこめたかと思うと、
「お前がちゃんと考えて決めた事だしな。これ以上俺がどうこう言えるわけがないだろう。それに・・・」
「・・・ん?」
「ふっ・・・」
ナオトとショウは意味深につぶやき、それぞれナオトは俺の右肩、ショウは俺の左肩を軽く叩くとそれ以上何も言わずに立ち去った。
「お、おい!」
俺はわけが分からず取り残さる。
(つーか、あいつら立ち聞きしてた事ごまかして逃げやがったな?)
屋上ではまだ沙織と青葉が何か話をしている。慰めてでもいるのだろうか?
俺は静かにそこを立ち去って自分の教室に向かった。
ちょうどその時、昼休み終了を告げる予鈴が鳴り響いた。
ここまでで第1章完!って感じでしょうか。
でもまだ続きますw
よかったら今後もよろしくお付き合いくださいo(_ _*)o
次回予告
第7話 友達として
ショウ・・・これはお前の差し金か?