第3話 手作り弁当
「で、これはなんだ?」
なんかこのセリフはデフォルメ化してはないだろうか。常に同じ事を言っているような気がする・・・
「お弁当です♪ もちろん私の手作りですよ♪♪♪」
「・・・これから花見でもするのか?」
なぜか俺の机を占領している3段の重箱。
一番上は・・・中華?春雨やシュウマイやエビチリまでがぎっしりとつまっている。
二段目は・・・おせちだろうか?なんだかめでたそうな料理が並んでいる。よくもまぁここまで食材を揃えたものだ。
一番下が・・・フルーツの盛り合わせ。林檎や蜜柑、パイナップルやアボガドまで、これを選り取りみどりと言うのではないだろうか?
なんていうか、全ての段にツッコミを入れたいんだが。。
「ところでお前、白飯は食わないのか?」
「あ・・・入れるの忘れました」
「お〜俺も食べていい?」
「いただきます」
どこから現れたのか(まぁ席が隣と前なのだが)、箸をのばそうとしている悪友2人組・・・正確にはナオは既に春巻きを掴んでいる。
「それにしても凄いねぇ〜!かなり早く起きて作ったんじゃない?」
「はい、朝5時に起きて作り始めたんですが、手際が悪くって・・・ついさっき出来ました!お昼に間に合ってよかったです♪」
「・・・弁当作りの為に重役出勤!?」
「香織ちゃんやるねぇ〜」
呆れているショウと笑っているナオト。
ん〜分かりやすいやつらだ。
「よし、それじゃ俺は飯を食ってくる」
「ちょ、ちょっと待ったぁ〜!!!」
と席を立とうとした俺を慌てて押しとどめてくる。言うまでもなく、ちょっとネジが足りないお嬢様・・・見事なツッコミ!お前、吉本いけるんじゃないか?w
「なに・・・?」
「お昼はここにありますよ?(にっこり)」
・・・その笑顔が怖いんですけど。。
「いらん。俺は食堂行ってくる」
「せっかく村上先輩の為に作ってきたんですよ?(うるうる)」
「そんな事頼んだ覚えもないし、それに弁当作るために遅刻してくるとか、何考えてるんだ?」
「で、でも!村上先輩の為に作ってきたんですよ!?少しでもいいから食べてくださいよ!?」
俺は無視して席を立とうとするが腕に絡み付いて離れないお嬢様。
「やめろ。離せよ」
「・・・・・」
青葉が一瞬息を呑んだのが分かったが、敬幸は気付かなかったかのように完全に固まったお嬢様を振り払って食堂に向かった。
「お、おい!ちょっと待てよ!!!」
あとから追いかけてきたらしいナオトが追いついてきた。お嬢様のお弁当は泣く泣く諦めてきたらようだ。まぁ、問題ないので無視して歩き続ける。
「おぃ、急にどうしたんだよ!」
「なにが?」
「はぁ〜香織ちゃんが固まるハズよ」
「ん・・・?」
「その目。いい加減少しは落ち着け!」
「あ、ああ。悪い」
「まぁいいけどよ。で、どうしたんだ?」
「付き合う気がないのに受け取れるわけないだろーが」
「んな極端な・・・気がないってのは伝えてるわけだし、それくらいいいじゃん」
「期待を持たせるのもどうかと思うぞ?」
「・・・・・」
「・・・・・」
短い沈黙、その間にも俺たちは食堂に向かって歩き続けている。
その沈黙を先に破ったのはナオトの方だった。
「お堅いね〜」
「不器用ですから♪」
「あはははは! お前、まるで二重人格!!!」
「だまれ! 不器用だ言うてるだろーが!!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
「でも、もう少しくらい優しくしてやってもいいんじゃないか?」
食堂で俺は親子丼、ナオトはラーメンを持って席に着いた途端に口火を切られた。
「・・・・・」
「とりあえず俺たちと同じ感覚で話してやれよ。お前の気持ちくらいは分かってるけど、言い方は悪いがいい機会じゃないのか?」
「・・・考えておく」
「そうか。ま、前向きにな。あと、今日の事はちゃんと謝っておけよ?向こうは何も知らないんだから」
「そうだな。考えておく・・・」
「またそれか」
はぁ〜とこれ見よがしにため息をつくナオト。
それからは二人とも一言も口をきくこともなく、黙々と昼飯と向き合うのであった。
次回予告
第4話 取るべき距離
青葉が俺のこと嫌いになったんならこれ以上波風立てない為にも今のままがいいんじゃないのか?