第12話 勇気と無謀
「それじゃ、安藤先輩の罰ゲームは『1人でお風呂に入る』でいいですか?」
ふと思い出したように香織が罰ゲームの内容の提案をした。ちなみに、『安藤』っていうのはナオトの名字でショウは杉原って名字だったりする。
「それじゃ罰ゲームとして普通すぎないか?」
もっともらしい疑問を投げかける俺。
「えへへ〜これでいいんです♪で、みなさんいいですか?」
みんなよく分かってないながらも賛成した。俺的にはナオトの罰ゲームなんかどうでもいいと言えばどうでもいい。
「では、安藤先輩の罰ゲームは『1人でお風呂に入る』で♪安藤先輩もそれでいいですね?」
「・・・・・」
ナオトは相変わらずまだ燃え尽きたままで、無意識にだろうか頭が上下したような気がした。まぁナオトに罰ゲームの拒否権なんかないんだけど・・・
「それじゃ、温泉に行きましょう♪」
そして香織は当たり前のように話を続けた。
「え、近くにあるのか?」
「敷地内にあるんです♪もちろん源泉たれ流しですよ!」
・・・マ、マジっすか?ていうか、たれ流さないで下さい。普通にかけ流してよ・・・
「よし!今から温泉行くぞ!すぐに温泉行くぞ!!!」
「ナオト、いつ復活したんだ?」
「そんな細かい事気にするな!さっさと温泉行く準備しろ!」
「お前、いつから温泉好きになったんだ?」
「何を言う心の友ショウよ!俺は昔から温泉大好きだぞ?」
「「初めて聞いた・・・」」
俺とショウの言葉が重なった。
そしてふいに香織の声がかけられた。
「安藤先輩?先輩は“1人でお風呂”ですよ?」
にっこり笑顔の香織はちょっと、怖かった・・・
カポーン・・・・・
青葉家の温泉。
水の流れる音と、鹿威しの音が響き渡る。風流とかは分からないが、水の音と竹が石を叩く音が心地よく身体に流れて来て、見渡せば枯山水など視覚も楽しむ事が出来、これぞ日本の庭園って感じがする。
正直、西洋の城に温泉なんてって思ったけど、下手な高級旅館の温泉よりも日本っぽいかもしれない。この場所だけ。
そんな静かで趣の溢れる温泉に場違いとも思えるくぐもった声が聞こえる。
「諸君!これより我々は玉砕を覚悟で任務にあたる事になる!」
「・・・・・」
「・・・・・」
ところで、なぜここにナオトがいるのだろうか?確かに別荘内にある風呂(といっても流石は青葉家の別荘でヤケにデカかったが)に押し込んだハズだ。つっかえ棒もして完全に出口を塞いだのに。
「なんでここにお前がいるんだ?」
「ふっ、愚問だ。漢にはやらなければならない時があるのだ!!!」
答えになってない答えが返ってきた。
「あっそ・・・」
ごめんなさい、ついていけません。
「おぃ!なぜそんなにテンションが低いんだ!この塀の向こうには楽園が広がっているんだぞ!」
お前のテンションが異常なんだ・・・とは思ったけど、言わない。
「そんな事よりもそんなに大声出してもいいのか?」
そしてショウの冷静なツッコミに慌てて声を潜めるナオト。
「!? 危ない、これは超極秘ミッションだった。これより先は物音一つ禁止する!」
「音立ててるのはナオトだけだけどな・・・」
「ユキ、極秘ミッションだって言ってるだろ!静かにしろ!!!」
「つーか、お前、俺たちが黙認してやってんだから少しは自重しろよ・・・」
「その事には感謝している。俺にこんなチャンスを与えてくれたのだから!あぁ神よ、アーメン・・・」
いつからこいつはキリシタンになったんだ?時々暴走するナオトはわけが分からなくなる。無理にでも追い返せばよかった。今はナオトに同情した事を後悔している。ナオトを温泉に近づけさせない策を取った香織の人を見る目もなかなかのものだ。
「へいへい。勝手にやってろ」
ごめんなさい女湯に入ってるみなさん。俺にはこのナオトを止めることは出来ませんでした・・・
次回予告
第13話 ナオトの野望
お前らこれは漢のロマンだろ!






