四日目
前回の投稿からかなり時間が経ってしまいました。春休み中には更新しようと思っていたのですが…
1ヶ月ごとくらいの頻度で投稿したいな~
私は例のクレーンゲームの前に仁王立ちになる。このゲームに出会って、三日が過ぎた。
今日こそは、景品を手に入れてみせる‼ 心の中でそう叫んだ後、財布のファスナーを開ける。百円玉を五枚取り出し、握り締めて額の前に持っていく。
獲れますように!
目をぎゅっと瞑り祈ってから、コインを投入口に滑らせる。
点灯したボタンを操作し、クレーンを動かす。
カカカカ……と音を立てながら動くクレーンに、全神経を集中させる。
今だ‼
私はボタンから手を離す。
相変わらず軋んだ音を立てながらアームは下降し、一つのぬいぐるみを掴んだ。
ここからだ。
私は口の中の唾液を飲み込む。アームが上がっていく。それに這い寄るようにぬいぐるみが動き出す。
私は手を握り締める。
アームが上がっていく。ぶら下がる人形は増え続ける。カカカカ……という音が、ガガガガ……へと変化する。
やがて、許容量を越えたアームはガギッという音と共に開き、人形たちは重力に従い底へ向かう。
握り締めていた手汗を制服のスカートで拭き、クレーンが最初の位置に戻るまで待った。
私は玄関のドアを開ける。
「お帰り~」
「……ただいま」
居間からお母さんが声を掛けてきた。
「最近帰ってくるの遅いけど、どうしたの?」
「……別に。何でも」
「……そう。もし困ったことがあったら言ってね」
私はそれに答えず、そのまま部屋に入った。
カバンを肩に掛けたまま、自分の机を見る。整理のされていないプリント類やノート、ゲームセンターでの景品などが崩れており、勉強机としての機能の大部分を殺してしまっている。この間、国語の先生が、身の回りの整理整頓状況は、その人の心境を表しているという話をしていた。
本当に、この状況は私の心の状態を如実に示している。そう思って、私は口元を歪めて笑みを浮かべる。
何気なく、一番上の書類を拾い上げる。
「……はんっ」
思わず鼻で笑う。昨日返却された模試の成績表だった。英語・数学・国語の三教科の合計が600点満点中129点。45444人中36262位、偏差値は41.2だった。
そういえば、前の席のトガシは、383点をとったと騒がれていた。偏差値ではどれくらいなのだろうか。少し気になったので、計算してみる。
偏差値をS、自分の得点をx、平均点をa、更に標準偏差と呼ばれる値をsと置くと
S={(x-a)/s}+50
と表される。
まず、私の得点から標準偏差の値を求める。この模試の平均点は202.8点と印刷されている。さっきの等式に値を代入して計算すると……標準偏差は約8.39となる。従って、トガシの偏差値は……約71.5だ。そういえば、成績表の裏に大学ごとの偏差値が載っていた。トガシの偏差値に近い大学を探す。
……難関国立大学合格レベルだった。
沸き上がってきたのは、驚きだけではなかった。
「……私だって、……」
これ位の偏差値はあった、という言葉はかろうじて飲み込んだ。
ベッドに仰向けに倒れ込み、目を閉じた。