死にたくない
今日、彼女ができた。
高校二年にして、人生初めての彼女である。
入学してから、今まで同じクラス、友達としては付き合っていた。
今日、勇気を振り絞り告白してみたのだ。
返事は、もちろんOKである。
自分は今、世界で一番幸せでる。
彼女の家の近所まで一緒に帰り、「バイバイ」と手を振りながら、僕は家路に着いた。
嬉しくて顔が緩んでいるのがわかる。
落ち着かない気持ちを整理し、顔を進行方向に向けた。
と、その時だ。
前方から数人の人が血相を変えて、こちらに向かってくるのであった。
僕の横を通り過ぎて行く。
よく見れば、その後ろからも大人から帰宅中の学生まで、数々やってくるではないか。
「何かあったんですか?」
僕の問いかけを無視し、全員が後方に向かむのであった。
ただ事じゃない何かが起きてるに違いない。
僕は、そう思った。
クルりと切り替えし、僕も後方に向かった。
事故であった。
トラックが家のコンクリートの塀に正面から、めり込んでいる。
トラックのドライバーは自力で這い出たようだが、どうやらトラックと塀に人間が挟まれたようだ。
この事故である、間違いなく挟まれた人間は死んでしまっているだろう。
バンパーと塀の間から、わずかに血のような物が滴っている。
「学生みたいよ」
野次馬の誰かが言った。
トラックのドライバーは、頭を抱えて地べたに座っている。
微かにサイレンの音が聞こえてきた。
誰かが通報したのだろう、パトカー、消防車が到着した。
少し遅れて救急車も到着。
トラックの牽引フックにロープを掛け消防車で引っ張る。
その間、警察は現場にロープを張り、野次馬を遠ざけた。
ガコン
という鈍い音とともに、ゆっくりとトラックが後方に動く。
塀と隙間ができ、救急隊員がタンカーを持って現場に向かう。
腕、足は異常な向きをし、胸の辺りからは血が滲んでいる。
顔面は軽く変形していたが、咄嗟に腕で隠したのだろう、原型は留めていた。
見覚えがある。
あの顔、あの制服、あの背丈。
まぎれもない。
被害者は僕だ。
死んでいるのは僕だ。
今日、僕は死にました。