その12:百万バッツの行方
レッシュが帰ってから三日、ハンターは久しぶりにオートエーガンを訪ねた。あくびま
じりに店内に入ると、ニオの元気な挨拶が聞こえてくる。
「いらっしゃい、ハンターさん。いつものね」
「ああ、頼むよ」
カウンターの席に着くと、背後の席ではクネスが一生懸命にペンを走らせている。原稿
の横にはメモの束があった。もしかしたらシェラから今回の冒険について詳しく聞いたの
かもしれない。
シェラはモップで床の掃除をしながら、いつものエプロン姿へと戻っていた。傭兵家業
はあの一日だけで、新たな依頼は入ってこないらしい。
「おまたせ、ハンターさん」
ニオがキッチンからハンター用の肉抜きAランチを持ってくる。
「おおっ、久しぶりだな。いただきます」
さっそく食べようと箸を割ると、ひょいっとニオは肉抜きAランチを取り上げた。
「なんだよ、いたずらか?」
無言で首を振るニオは、Aランチの代わりに手を差し出した。
「この間の保存食代九千バッツ、先に払ってよね」
「食べた後でいいだろ?」
「いえいえ、オートエーガンではツケの完済が注文を受け付ける条件ですので!」
営業スマイルで答えるニオにばれないよう、ハンターは小さく息を漏らした。
「まったく、百万バッツあるから逃げやしないっての」
内ポケットからレッシュにもらった封筒を、ハンターが得意げに取り出す。
「それが百万バッツ?」
ニオが尋ねるのも無理はなかった。封筒は薄っぺらで、どう考えても大量の札束が入っ
ているとは思えない。
「ん、なんだこりゃ!」
慌ててハンターが封筒を開けると、中には五万バッツと紙切れが一枚入っていた。
「確かにもらったときは、ずしりと重さも厚みもあったのに……」
あっけにとられているハンターから、ニオが紙切れを取り上げる。
そして、書いてある内容を読み始めた。
「領収書、ハンター=バウンティ様……九十五万バッツ!?」
「なっ、なにぃ!」
絶叫しながらハンターは、ニオの手から紙切れを取り返した。内容は――。
『領収書 ハンター=バウンティ様
九十五万バッツ
但しルームクリーニング代として
確かに領収いたしました。
レッシュ=セルフィッシュ』
ご丁寧に拇印まで押された領収書をにらみつつ、手がわなわな震えている。
一方ニオは一万バッツ札をハンターから取り上げると、代わりに千バッツ札をカウンター
へと置いていた。
「毎度ありがとうございまーす!」
心地よい挨拶と共に、ハンターの前に肉抜きAランチをおく。
「わたしも当然、これぐらいはもらう権利があるよね?」
横からひょいと顔を出したシェラが、四万バッツほど取り上げる。最後に残ったのは代
金を払っていない肉抜きAランチと、千バッツ札一枚だった。
「これじゃ、使った弾丸代にもならねえ……あいつはやっぱり根っからの盗賊だよ!」
ハンターのむなしい雄たけびがオートエーガンで響きわたる。どこからか『盗賊って呼
ぶな』という声が、聞こえてくる気がした。
〜END〜
どうも、水鏡樹です。最後まで読んでいただき、ありがとうございましたm(_ _)m
『マスカーレイドに異常なし!? 第3話 忘却の遺跡』いかがだったでしょうか?
今回はファンタジーらしく、ダンジョン(といっても、小さいものですが)と、
モンスターとのバトルを主に書いてみました。
ハンター、レッシュ、シェラの活躍はいかがだったでしょうか?
ぜひ評価&コメントもお聞かせくださいm(_ _)m
まだまだ『マスカーレイドに異常なし!?』はシリーズとして続いていきますので、
今後とも読んでいただければ幸いです♪
ちなみに本文に出てくるオーガー語は、
ちょっとした変換で読めるようになります。
暇があればこの謎にも挑戦してみてください。
ヒントは『一歩前へ!』です。
ではでは♪