⑮最後の別れ
ヴィヴィアンの告白を聞いた後、シャルロッテはしばらく何も話せなかった。ただ、彼の温かい手の中で、静かに涙を流し続けた。彼女が作り出した偽りの世界で、みんなが彼女の苦しみを分かち合ってくれていたという事実に、彼女は心が震えるほどの感動を覚えていた。
「もう一度、ベルンに会いたい…」
静かにシャルロッテが呟いた。その声には、悲しみだけでなく、ベルンとの最後の時間を大切にしたいという、強い想いが込められていた。
「わかった。行こう」
ヴィヴィアンは、彼女の言葉に力強く頷いた。彼は、彼女がベルンとの最後の別れを望んでいることを理解していた。
二人は、アパートへと戻った。シャルロッテが魔法をかけることで、倒れていたベルンの幻影が現れる。彼は、シャルロッテが初めて出会った時と同じ、元気な笑顔を浮かべていた。
「シャル! どこに行ってたんだ? 心配したぞ」
「…ベルン」
幻影だと分かっていても、ベルンの姿を目にした瞬間、シャルロッテの瞳から再び涙が溢れ出した。
「ベルン…ごめんね。私、ずっと君の死を受け入れられなくて…みんなを巻き込んで…」
ベルンは、静かにシャルロッテの言葉を聞いていた。そして、彼女の涙を優しく拭うと、静かに語り始めた。
「君が僕のことを想ってくれる気持ちは、すごく嬉しい。でも、僕が本当に願っていたのは、君が幸せになることなんだ」
ベルンの言葉は、彼女の心の奥底にまで響いた。彼は、彼女が悲しみから立ち直り、前へと進むことを望んでいた。
「もう、大丈夫だ。僕のことは、忘れてくれてもいい。だから、どうか…君の未来を、君自身の足で歩いてくれ」
ベルンは、悲しみを乗り越えてほしいと願っていた。しかし、シャルロッテにはそれができなかった。彼を失った悲しみがあまりにも大きすぎたからだ。
「できないよ…ベルン…」
シャルロッテは、首を横に振った。
「君にはできるさ。だって、君は僕の知ってる魔女の中で、一番だ。一番、強い魔女だから」
その言葉を聞いた瞬間、シャルロッテの脳裏に、ヴィヴィアンや、友人たちの顔が次々と浮かんだ。彼らが、彼女を信じて、ずっとそばで支えてくれていたこと。その温かい友情の光が、彼女の心を照らした。
「ベルン…もう、大丈夫だよ」
シャルロッテは、静かに微笑んだ。それは、偽りの笑顔ではなかった。ベルンの死を受け入れ、前へと進む覚悟を決めた、彼女自身の本当の笑顔だった。
そして、彼女は、みんなの声が聞こえるかのように、力強く言った。
「私は、ベルンの死を受け入れる。」
その言葉が口から放たれた瞬間、ベルンの幻影は、光の粒子となって消えていった。




