⑭友情の告白と覚悟
ヴィヴィアンの腕の中で、シャルロッテは静かに泣き続けた。彼の胸は、彼女の涙をただ受け止めるだけでなく、彼女の心の奥底にまで、あるメッセージを届けようとしていた。
「シャル、大丈夫だ」
ヴィヴィアンは、まるで呪文を唱えるかのように、何度もその言葉を繰り返した。彼の声は、彼女が作り出した偽りの世界を浄化する力を持っているかのようだった。
「僕たちは、君がこの世界を作ったことを、知っていた」
その言葉に、シャルロッテはハッと顔を上げた。赤い瞳に、驚きと混乱が浮かぶ。
「知っていた…?」
「ああ。僕も、アメリアも、みんな…君がベルンとの別れを受け入れられずに、この世界を繰り返していることに気づいていた」
ヴィヴィアンは、静かに語り始めた。彼の声には、深い悲しみと、それでも揺るがない友情の光が宿っていた。
「僕たちも、何度もベルンの死を経験した。最初は混乱したよ。でも、毎回、君が心からベルンのことを愛しているから、この世界から出られないんだと理解した。そして、僕たちは決めたんだ。君が真実に気づくその日まで、この世界に付き合おうって」
シャルロッテの心に、深い絶望と同時に、温かい光が灯った。自分が一人で抱え込んでいたと思っていた苦悩は、みんなも共有していたのだ。
「でも…どうして…」
「どうしてって、決まってるだろ」
ヴィヴィアンは、少し怒ったような、でも優しい声で言った。
「僕たちは、君の親友だからだ。君とのこの幸せな時間が、偽りだとしても、僕たちにとっては大切なものだったんだ」
彼の言葉は、彼女の心の傷を少しずつ癒していく。
「僕は、この世界を壊すために来たんじゃない。君を、そしてみんなを、この悲劇から救い出すために、ずっとそばにいたんだ」
ヴィヴィアンは、シャルロッテの手をそっと握った。彼の掌は、温かかった。
「シャル。君が、本当の世界に戻ることを決めるまで、僕たちは何度でも、何度でも、君のそばにいる。だから、どうか…自分を責めないでくれ」
シャルロッテの心に、一筋の希望が差し込んだ。それは、ベルンを失った悲しみを乗り越え、現実へと歩み出す勇気を与えてくれる光だった。彼女は、ヴィヴィアンの言葉に、力強く頷いた。
「ありがとう…ヴィヴィアン…」
彼女の瞳から流れる涙は、もう絶望の涙ではなかった。それは、愛と友情という、温かい光に満ちた涙だった。




