①幸せな日常と小さな違和感
「ベルン、これ、絶対に美味しいから食べてみて!」
白いふわふわのロングヘアーを揺らしながら、シャルロッテはベルンの向かい側の席に座った。白とオレンジのミックスの髪は、まるで朝焼けの空のようだ。彼女のトレードマークである白いフード付きのコートは、ゆったりとしていて、その下に覗く黒いTシャツとデニムのホットパンツが、彼女の快活な雰囲気をさらに引き立てていた。
「はいはい、シャル。もういいって。君が作ったものは、いつも美味しいんだから」
ベルンは苦笑しながら、シャルロッテが差し出したパンケーキにフォークを刺した。彼の蜂蜜色の髪が、朝日に照らされてキラキラと輝いている。口に入れた途端、彼の顔が嬉しそうにほころんだ。
「でしょ? でしょ? 私ってば天才!」
シャルロッテは得意げに胸を張った。パンケーキには、彼女が庭で育てたハーブと、魔法で収穫した特別なベリーがたっぷりと乗せられていた。味もさることながら、その可愛らしい見た目も彼女の自慢だった。
「ああ、本当に天才だよ。僕の知ってる魔女の中で、一番だ」
ベルンがそう言うと、シャルロッテの赤い瞳が恥ずかしそうに揺れた。
二人は、東京の静かな住宅街にある、小さなアパートの一室で暮らしている。ベルンが人間であるため、魔法の存在を隠す必要があったが、二人の間では隠し事など何もなかった。彼との他愛もない日常が、シャルロッテにとって何よりも幸せだった。
「そろそろ行かないと、ヴィヴィアンに怒られちゃう」
ベルンとの朝食の時間を名残惜しく思いながらも、シャルロッテは立ち上がった。今日は、魔法女学院での定期テストの日。遅刻すれば、親友のヴィヴィアンから長々とお説教を食らうことになる。