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1-17.救出作戦

月も雲間に隠れた夜、帝都の外れに佇む“深層収容塔”は、不気味な静寂を湛えていた。

外壁は厚い石と鋼で覆われ、四方に監視灯が灯る。かつては戦犯や政治犯の隔離を目的としていたその場所は、今や帝国にとって“異質”な存在を閉じ込める牢獄と化している。


その最深部、誰の目も届かぬ地下牢の一角で、一人の少女が鉄格子越しに膝を抱えていた。


巫女、セリナ=フィリア。


かすかな祈りのように、唇が動く。

声なき旋律――それは、かつて精霊たちがこの大地に響かせていた“歌”だった。


(……聞こえる。どこかで、精霊がざわめいている……)

(いいえ――誰かが、呼んでいる……)


セリナは目を閉じ、静かに胸に手を当てる。

それは誰かが流した怒りと悲しみの声――けれど、その奥に確かな温もりがあった。

共鳴者。

自分と同じく、精霊の声に心を揺らす存在が、確かに近づいている。


「……来てくれるのね」

彼女の頬に、かすかな安堵の色が差した。


* * *


その頃、収容塔の裏手――物資搬入口に面した排気路口で、レオン=アステリアは息を潜めていた。

すぐ隣では、シアン=トルヴァーンが古びた制御盤を操作している。


「……ほら、開いたぞ。昔の設計が残ってて助かったな」

「帝国の技術、使いこなせるのか?」

「皮肉だろ。だがこういうのは慣れてる。逃げる前は、ここに出入りしてたからな」


二人は身を低くし、薄暗い通路を進む。

壁の向こうからは兵の靴音がときおり響くが、シアンの案内に従えば、監視の網をすり抜けることができた。


レオンの胸の奥では、何かが脈打っていた。

熱い。

肌の内側に、火種のような気配が渦巻いている。


(……まただ。この感じ――精霊が、何かを訴えてる……)


「止まれ。こっちに兵がくる」

シアンの小声に、レオンは立ち止まった。

すぐそばの通路を、銃を構えた帝国兵が二人通り過ぎる。


が、その瞬間――


「……っ」

レオンの意識に、鮮烈な“声”が響いた。

遠く、深く。鋼鉄の奥から誰かが叫んでいる。


(……助けて……)


「誰だ……!」

レオンが思わず声を漏らした瞬間、彼の周囲の空気が淡く青白く光を帯びた。

それに気づいた兵士たちが振り返りかける――


しかし、不意に天井から降る塵が彼らの視界を遮り、わずかな間を作った。


「今だ、行け!」


シアンの声に、レオンは駆け出した。


それは“偶然”ではなかった。

共鳴者の力が、無意識に周囲へ影響を及ぼし始めていた。


(俺は……精霊と繋がり始めている……?)


戸惑いと確信の狭間で、彼は進む。

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