6-11(93) 貸宿
カフディは大型工業コロニーである。そしてかなり大型の艦船整備もできる設備と組織がある。であるから、まさに今僕がしてもらっているように、よく艦の改装や修理、新造を行っている。
ではその間、乗員はどうするのか、という問題が発生する。艦に泊まれるぐらい小規模な修理であれば問題ないが、大規模改装や機関載せ替えであれば、規模的にも音振動的にも、艦に泊まることは現実的ではない。
カフディの高級ホテルや、あるいは定期旅客船で他コロニーへ、というのもまず無い。カフディは工業製品は多いが、雑貨等々はベイスへと比べ大きく劣っている。そしてベイスへ級のサービスを提供するホテルは、値段が高い。コロニー間の旅客船も同様だ。そしてそんな金があれば、大抵の船乗りは自分の艦に使う。
では船乗りたちはどうしているのか?安い宿はあるのか?
需要があれば供給が生まれる。ホテルの機能を削りに削り、そして値段も落ちに落ちた、誰が言ったか鍵付きコンテナ。その名も貸宿。
鍵さえあればいいんだろと言わんばかりの構造になっていて、窓無し家具無し、かろうじて換気装置がある。床はコンクリートか金属剥き出し、風呂トイレはもちろんインターホンも無く、いちおう給電コンセントが1つ。
こんな部屋というより箱のような空間でも、重力があり、大きくは揺れず、宙賊に襲われる心配もない。隣の部屋がうるさかったら、壁殴ればだいたい静かになる。慣れれば快適…とまではいかなくとも、それなりに満足できる部屋だ。
そんなコンテナの1つを借り、その中に入る。寝袋敷いて寝転がり電気を消せば、そこはもう完全な暗闇だ。うそ、隅から明かりが入ってきてる。穴空いてんのかな?
慣れないうちは圧迫感とかあるけれど、宇宙艦でトラブった経験があれば、それよりマシ、と思う様になる。酸素残量とバッテリーの様子見ながらの漂流とか2度としたくねぇ。
暗闇の中で、改造について考える。保安系を増やして、外部コンテナのアタッチメントを付けておこう。大型ドローンの運用準備工事をしてもらって、その中継室を改造で作ってもらおう。せっかく大規模にバラしてるし、背伸びしすぎなければ載せられるぐらいのお金もあるし…
そんなことを考えながら、僕は眠りに落ちた。
書き溜めて、定期的に放出できるようにしようなどと考えていた割に、全然貯まらなかったので見切り発車します()
なるべく隔日投稿は維持したいです…
2025/06/13 執筆完了
2025/07/29 投稿




