6-9(91) 整備員たち
星屑の砂時計をコップに注ぐと、深い深い藍色にラメが浮いて見える。ビンに入っている間は、透明な容器なのに全く見えない。何度見ても不思議。カーデンのグラスを見ながら考える。
今はちょっとした飲み会の最中だ。雪風の整備をしてくれている作業員たちに、僕が差し入れを持ってきた、ということになっている。しかし実際僕が持ってきた酒を飲んでいるのはカーデンともう1人の老人のみで、他の人々が飲んでいるのはその2人の在庫だ。
星屑の砂時計は、控えめに言ってかなりクセのある味だ。というか不味い。さらに入手手段が(僕の知る限りでは)あの酒場しかなく、しかも高価。しかしカーデンさんみたいな、カフディに古くから居る人にとっては懐かしい味らしい。だからそんな癖強い酒は、彼らに押し付けた。
「しかし丁寧に扱っているみたいですね〜」
作業員の1人が話しかけてくる。こうしてフランクに話しかけてくれた方がやりやすいから、酒というものは偉大である。
「そうそう、ひずみゲージも概ね許容範囲内でしたよ」
「バッテリもレンズもまだ交換いらないです。物持ちいいですね〜」
「ははは、宇宙でいきなりぶっ壊れて漂流とか嫌ですからね。でも皆さんの整備のおかげで、いつもすんなり動いてくれますよ」
確かに普段丁寧に扱ってはいるが、その上で丁寧な整備がなければ艦はすぐダメになる。長持ちする理由は、使用者だけにあるわけではない。
「砲身はそれなりにすり減っていたので取り替える予定です。初速と精度が改善するはずです」
「ジェネレーターは酷いですよ。親方が治すと言ったので治しますが…正直新型に置き換えたほうが安いですよ?」
「あれの癖を覚えるのに苦労しましたから、手放したくないんですよね…例え修理で癖が変わるとしても」
「愛ですね〜」
「愛ですな〜」
「愛があるのなら、あの回し方はしないほうがいいと思いますな」
「それは…まぁ予想外の攻撃だったし、自分だけならまだしも乗員増えてしまっていたし…」
緊急時には、艦本体と中身を守るために、一部に過負荷をかけざるを得ない。生きて帰れば修理ができるが、死んでしまえばいそうもいかない。
まぁあの時は、もうちょっとギリギリでの展開でも良かったかも知れないが…
「乗員といえば、来てましたよ」
「こちらに?ご迷惑をかけてませんでした…?」
「えぇそれは問題なく。しかしやりますね。あんな美少女2人も、どこで捕まえたんですか?」
「「2人…?」」
整備員の言葉に、カーデンさんと僕の言葉が重なった。
読んでいただきありがとうございます。
誤字報告も感謝です。
2025/05/25 執筆完了
2025/05/27 投稿




