6-8(90) カーデン
「親方、お客様です」
「おう入れ」
控え室のドアを青年がノックし、声をかける。中からの反応を待ってドアを開け、僕に入るよう促した。
「そろそろくる頃だと思ったぜ?遅かったな」
「すいませんね。最近少し立て込んでいまして…」
そう言いながら、彼の目の前にビンを置く。この人、修理工のカーデンさんは、大の酒好きである。
「いつも悪いな」
「この程度でモチベ上がるなら十分ですよ」
「星屑の砂時計をこの程度呼びか。偉くなったもんだなぁ…また値上がっただろうに」
「言いませんよ。金額気にして飲む酒ほど不味いものはない、と、前に言っていたじゃないですか」
「おうよ。あれはこの世の真理だ」
「適用されるのが酒だけじゃなければ同意ですね」
「相変わらず可愛げねぇな。おい、打ち合わせしている奴らも呼んでこい。客からの差し入れだ。今日は中断でいいだろ」
カーデンが青年に声をかける。声をかけられた青年は困り顔でこっちを見た。まぁ普通、客の目の前じゃ言わんよな。
「皆さん呼んでください。4、5日程度なら遅れてもいいですから」
僕もそういえば、青年は笑顔で頷き、部屋を出ていった。
「爽やかな人ですね。弟子ですか?」
「勝手に着いて来ただけさ」
「振り払っていないのでしょう?」
「他の連中に気に入られてっからな」
そう言ったところでカーデンは、ビンを机に置いてこちらを見た。面白いものを見る目をしている。嫌な予感。
「お前こそどうなんだよ」
「何がです?」
「しらばっくれんじゃねーよ。エッジから聞いたぞ?別嬪さんつかまえたんだってな」
「…知り合いの妹さんです。乗せてるだけですよ」
「いいよな〜お前は。宇宙に出れば出会いがあんだもん」
背もたれに体を預けながら彼は言う。
「出ればいいじゃないですか。カフディはいつもサルベージ艦が足りてないですよ」
「自分で回収しなくなってから何年経ってると思ってやがる。腕が鈍ってもう無理よ。俺も出会い欲しいぜ…その知り合いどんな人?俺にも紹介してくんね?」
「さっきも言いましたが、僕についてきた人の姉です。ズボラでマイペースで、でも仕事の時は人が変わったように冷静で…」
「おぉいいな。ぜひ会いたい。仕事してるのか。どんな?」
「海軍。警備艦隊の司令です。わかりました連絡しますね、妹さん経由ならばきっと来てくれるでしょう」
「うそうそうそ冗談だろうがよ、いきなり会うヤツなんていねぇて。あ、さては俺からかって遊んでんだよな?そうだよな!?」
むかーしむかし、何かやらかしてから、彼は海軍が苦手だ。それは今も変わらないよう。
読んでいただきありがとうございます。
誤字報告も感謝です。
2025/05/23 執筆完了
2025/05/26 投稿




