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6-5(87) 酒場

 さてさて、別に僕はアトラクターを見るために、わざわざ不法侵入じみた方法で工業区に立ち入ったわけではない。目的地は、このロータリーの一角にある酒場だ。

 そう酒場。駅前とはいえ、こんなゴーストタウンに営業している酒場があるのだ。


 建物に向かって歩き扉を開けると、そこは落ち着いた雰囲気の酒場になっている。軽く見回せば、たまに見る連中が2人ほど見えた。軽く会釈しておく。そして店主の方に向き直る。


「お久しぶりです」

「…」


 僕の言葉に軽く頷く店主。彼はあまり喋らない。


「なんか軽いのを少し。あと持ち帰りで、星屑の砂時計を1本」


 後ろの方で、少し驚いた気配がする。


「…星屑で15です」

「また上がりましたね…贈り物なので選んでも?」


 店主は軽く頷き、動き出す。それについて僕も動く。後ろの2人は…まぁ常連なんだし、放置しても問題ないのだろう。

 店の奥の保管庫。そこに着き店主は振り返った。


「何か、」

「いえ別に。選びたいのは本当ですし。あ、これお土産です」


 バラした残骸の回路図を渡し、僕は倉庫を物色する。彼は元修理工であるから、特に説明なくとも仕組みは分かるだろう。棚から砂時計を模した瓶を取り、店主の元に戻る。


「…何故?」

「いかにもエネルギーを使いそうなものがありますから。ほんの気持ちです」

「…作れない」

「材料なら一式渡しますよ。当然セットです」

「密輸」

「まさか。バラしたら出てきたんですよ」


 話しながらカウンターに戻る。さっきの2人はいなくなり、カウンターにお金が置かれていた。そんなにヤバいやつに見えたのかな、僕。


「あぁそう、15でしたよね」

「…これで十分多い」


 そう言いながら、僕が渡した資料を指す店主。


「あれは気持ちですよ。星屑の砂時計の分は払います。何かお礼したいのであれば、軽い方をまけてくれるといいですね」


 カウンターに座りながらそう言うと、店主は軽く笑い、作業を始めた。


 この店主とここに来る客のほとんどは、カフディが採掘加工をしていた頃の住民だ。艦の配線系の修理の仕事がない間、趣味で始めた酒場がうまくいき、今もここに残っている、というのは、雪風の整備をしてくれているカーデンさんの談である。


 店主が振り向き、一杯のコップに入った酒を渡してくれた。青白い色で綺麗に透き通っている。


「はじめて見ますね」

「…恒星」

「なるほど…美味しい…」


 それはなんとも形容し難い、言うなれば夜明け前のような味がした。

お酒飲んだことないから味なんてわかんね!

読んでいただきありがとうございます。

誤字報告も感謝です。


2025/05/23 投稿

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