5-12(79) 3個警備艦隊
宙図に警報が出て、空間が歪み、艦が出現する。エーテル空間からのワープ解除は、通常宇宙においてはそう観測される。
『多いな』
「知り合いに声かけたからな」
次々とやってくる海軍の艦を見た輸送艦の乗組員が呟き、僕はそれに答える。
海軍も手を焼いた相手の、爆散していない残骸がある。我々を護衛したらそれを分ける、という内容を、べシーさん経由で海軍に伝えてもらったからだ。遠距離通信システム有能。
「10隻以上来ましたね…」
「20はいないので、3個警備艦隊といったところでしょうか。僕が連絡した時、べシーさんたちの隊は違う方面にいたので、多分居ないですけれど…」
カフディ域は、一応帝国海軍の警備範囲内である。定期パトロールこそほぼ無いが、呼べばこうして来てくれる。ただ最寄の海軍基地、ベイスヘ基地の管理範囲は広く、そしてカフディ域自体の重要度はそれほど高く無い。いや別にどうなってもいい訳では無いが、ベイスヘが管理している他の区画と比べると、相対的に重要度が低い。
したがって他区画を見回っている艦隊の方が多いことになる。逆によく3個艦隊も持ってこれたもんだ。
とっとと帰りたいので、ハッチを開けている海軍の輸送艦に、残骸たちを押し込む。彼らは彼らの格納用アトラクターを持っているので、僕がすることは、残骸を回転させて入れやすい向きに調整することと、引っかかりそうな出っ張りを切断することだ。普段のサルベージ作業と、そう変わりない。
ただ気になるのは、そばで似たようなことをしている巡洋艦の艦番号に見覚えがあることと、奥に居る駆逐艦にクローバーのマークが塗装してあるように見えることだ。
…なんで居るの?
…とりあえず近場の装甲巡洋艦と通信を繋ぐ。たぶんこれが指揮艦だろうし。
「来てくれてありがとう、ベイスヘの警備艦隊であってるか?」
『あぁそうだ。お前が殲滅したんだってな』
「まぁな。あんたがボスか?」
『いや、向こうにいる軽巡だよ。103隊が臨時のボスだ』
「…そうか、ありがとう」
どうやらあれは本物の、第103警備艦隊らしい。見間違えではなかった。
…見知った人が相手の方が交渉しやすいと考えよう、うん。ポジティブシンキングだいじ。
とか考えていたら、件の軽巡から通信リクエスト飛んできた。しかもビデオ通話で。
「…もしもし?」
『おそーい!なんでもっと早く出てくれないの!』
通話繋いだ瞬間からはしゃぎすぎじゃないのこの人。スピーカーの音量小さめで助かった。
「姉さん、声うるさい」
『あ、ベーグルも居るね。うん、元気そうで何より』
読んでいただきありがとうございます。
誤字報告も感謝です。
2025/05/10 投稿




