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サルベージ艦は今日もゆく〈宇宙文明は事故ばかり〉  作者: 売店部のしまなみ
5-死んだトラップ、生きたトラップ
75/106

5-8(75) 消耗持久戦

「さてさて、初期通報位置はこの辺ですが…」

「レーダーに艦影のようなものはありませんね」


 ダメ元とはいえ、ここまでなんの情報もないと、ベーグルさんと首を傾げることしかできない。


「ちなみに遭難したのはどんな艦なんですか?」

「単艦の装甲輸送艦、つまり重輸送艦ですね。いつもならカフディで食料を積み込んで、我々がきた道を通ってフヨクルフまで行くそうです」


 加減速や回頭の遅い重輸ならば、機雷を引いた後の回避は難しいだろう。場合によっては、素早い雪風でも引っかかるのが機雷だ。


「ん?」

「今のは…レーダーの警報?」


 一瞬、雪風のレーダー警報装置が音を出した。継続的に鳴っていないのは、捜索レーダーを引っ掛けたか一瞬でロック解除されたか。


「方角は…ほぼ正面か」

「行きましょう」

「ですね」


 ひょっとしたら助けに来た艦を狙った罠かもしれない。そうでなくても、獲物を食い終わった宙賊の、あるいは横取りしようとした宙賊の物かもしれない。たとえそうであったとしても。


ーーーーーーーーーー


「居た」


 十数分後、僕らが見たものは、ボロボロになりつつもまだ抵抗している重輸と、それを取り囲む宙賊たちだった。


「すごい、まだ戦ってる」

「いや、あれはだいぶ手加減されていますね」


 ベーグルさんは輸送艦がまだ生きていることに驚いているが、よく見るとそれは違う。重輸送艦は近づく艦に片っ端から攻撃しているが、有効打を出せていない。一方宙賊達は軽く攻撃して、シールドと船体に無視できない傷を負わせている。


「あれは生かされているんです」

「生かされている?」

「そう、沈めずに、弾薬と補給が無くなるのを待っています。負わせている傷も、その回復による大きくエネルギーを消費させるための傷です。致命傷にはならず、かといって無視もできない」


 おおかた、反撃が弱くなってきたあたりで乗り込むつもりだろう。その頃には輸送艦の乗員も疲れ切っているだろうし。


「艦を揺らす物理弾、シールドを貫通し、そのまま船体につっこむけれど貫通しない貫通弾、エンジン近くを焼いてナノマシンを消費させるレーザー…」

「いやですね」

「どれもエネルギーと、乗員の正気を削っていく」


 乗員を消耗させて、艦を航行可能状態で鹵獲したいのだろう。装甲輸送艦だし、武装も使うつもりなのかもしれない。

 ただこの持久戦、こうして救難信号をキャッチされ、位置まで特定されると、一気に不利になるが。

読んでいただきありがとうございます。

誤字報告も感謝です。


2025/04/18 投稿

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