5-5(72) 遭難信号
「振り込まれましたね」
鉱石塊の移送作業を終え、フヨクルフの運営から入金されたことを確認する。ベーグルさんのアドバイスのおかげで、思ったより早く終わらせることができた。
「というわけで、少しそちらに入れておきますね」
「えぇっ!いいんですか?」
「もちろん。あのナビは結構役に立ちましたから」
天性の空間把握能力とでもいうのか、雪風と牽引している鉱石塊、そして進路上の隙間と先導の小型艇まで、どう動くべきか、どの選択肢が安全かを考え抜かれた進路のアドバイスは、とても役に立った。最初はオズオズと進言していたベーグルさんも、僕らが全面的に頼り始めてからは楽しそうだったしな。
にしても見返してもほぼ最適解のようなルートを指示してくれている。アラを探すならば、小型艇の制動性能はもうちょっと悪いことか?でも安全マージンを充分にとってあるから、接触事故も起きていない。
僕はエンジン出力の相手にかかりきりになれるし、ナビ役居るといいな。AI管制を積むメリットを垣間見た気がする。つかコパイの発展が航法AIだから、当たり前か。
ーーーーーーーーーー
その連絡は、ベーグルさんと今後の予定を話していた時に、何の前触れもなくやってきた。
「で、カフディを経由してから基地に帰り…」
「どうかしましたか?」
ため息をついた僕を見て、ベーグルさんが聞いてくる。
「いえ、今相談した予定が全部パーになっただけです」
そう言いながら、無線機の点滅しているボタンを押す。ガーと吐き出された紙を見て、もう一度ため息。
「何ですか?怖いんですけど…」
「申し訳ないが緊急出港です。準備を…まぁ上陸してないし問題ないですかね?」
「それは平気です。でもなんで…?」
「これ見てくださいな」
その電文には、遭難信号の発信艦とその位置、そしてカフディからの救援指示が添付されていた。
「遭難…」
「えぇ。面倒なことにこの近くでです」
機関始動、緊急出港通達。フヨクルフに直接停泊しているわけではないから、簡単に外宇宙に出ることができる。
「艦長さん、また光ってますよ?」
「同じように点滅しているボタンを押してください。読み上げてくれると助かります」
加速させながら簡易チェック。 フヨクルフの入港管制から受信、グッドラック?
「だいたい同じ内容です。遭難艦を救助せよ。差出人は海軍です」
ベーグルさんが伝えてくれた。
…海軍かぁ。
読んでいただきありがとうございます。
誤字報告も感謝です。
2025/04/14 投稿




