5-2(69) 直通路
この宇宙時代でもモノを大量に輸送するためには、艦で運ぶのが安価かつ確実だ。そして艦がエーテル空間を通る方法は、いくつか存在する。
1つはワープ開放機を使ってエーテル航路に直接出る方法。大規模なコロニー同士を結ぶなら、安全かつ楽だ。なんせ主要航路であるから、治安もいいしオートパイロットが迷うこともない。欠点と言えば渋滞に巻き込まれたり、開放機の点検整備期間には使えないことか。
2つ目は、エーテル航路を使わずに、真っ直ぐコロニー間を進む方法。蛇行するエーテルの流れを使わないので、燃費は悪いが速達性に優れている。渋滞に巻き込まれづらいから時間通りに配送できる。あと、開放機を通らないので移動のログが残らない。
「しかし海軍の見回りも交通量が多い主要航路に割かれるので、この航路はリスクもあります」
「リスクですか…」
雪風は今、カフディからフヨクルフへ向かっている。より細かくいうのであれば、カフディ大型工業コロニーの近辺でエーテル空間に進入し、フヨクルフ集積場に直行する航路をとっている。
「偶然宙賊と遭遇なんてのは稀ですが、何かあっても連絡の受け手がいなかったりで、事故があっても全く気づかれなかったりします」
緊急信号を出してから、しばらく救援が来ないことがあるというのは、船乗りならよく分かっている。そのための数日間の非常食だ。しかし緊急信号への反応・返信がなく、また刻々と備蓄が減ることに、徐々に乗員の精神は蝕まれていく。最終的に乗員同士の争いで沈むなんてのも、無い話ではない。
「そしてこんな薄暗い道なんて、宙賊の絶好の狩場でもあります」
「じゃぁ私たちは襲われるんですか!?」
「いえ、宙賊分布図と海軍の動きの感じ、その可能性はほぼないです」
「なんだぁ。おどかさないでくださいよ…」
ベーグルさんはホッとした様子だった。
エーテル海の航路図にも捜索レーダーにも、今のところはなんの反応もない。他の艦も全く見えないが、それは密度の低い航路ではよくあることだ。
しかし、それだけで安全だと判断するのは宙賊を、そして宇宙を舐めすぎでもある。
「揺れますよ」
返事を待たずに雪風のオートパイロットを解除する。その操作が終わらぬうちに、舵をいっぱいに動かす。
突如、雪風の周りにエーテルの水柱が立った。その飛沫は霧を形成しながら、全力待避をしようとした雪風を包み込む。
飛沫が収まった後、そこに艦はいなかった。
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2025/04/08 投稿




