4-4(60) 住民局前の廊下にて
ノックをして少し待つ。反応がない。
「居ないのでしょうか?」
「うーん、あいつが適当な仕事するはずないので、居るはずです。なんとなく想像はつくんですが、勝手に入るのはいささか…」
住民局長のエッジさんとは、それなりに仲がいい。しかしながら、親しき仲にも礼儀あり、というように、入室許可が出ていないのに入るわけにもいかない。倒れたら自動で通報されるから、そういった心配もないし…
ドアの前で立ち往生していると、見知った顔が近づいてくるのが見えた。
「あら、帰ってたのね?」
「お疲れ様ですサナさん、戻りました。これ受領書です」
「いま提出?まぁ良いけど」
ベイスヘの基地へ輸送品を運んだ時の受領書を、ちょうど会えたので提出する。また別に時間取ってもらうのも悪いし、このドック長は、無理なら無理とはっきり言う。
「はい、確認したわ。報酬は振り込んどくわよ」
「分かりました。お願いします」
「えぇ、それは良いんだけれど…」
確認が終わった後、サナさんはベーグルさんを見る。ベーグルさんは僕の後ろで隠れるように立っているけれど、あんまり意味ないですよ。
「その子は?」
「向こうの知り合いの妹さんです。預かってます」
「なるほどね、誘拐?」
「違います」
「冗談よ。よろしくね?」
「よ、よろしくお願いします!」
冗談でもホルスターに手を当てるのはやり過ぎだと思います。ベーグルさんビビっちゃってるし、脅してどうするんですか。
「いちおう諸々の申請に来たんですが…エッジさん居ます?」
「それでここにね。わかった、見てくるわ」
そう言うとサナさんは部屋の中に入って行った。
「あの方は?」
「ここのドック長のサナさんです。解体でドックを使う時など、だいぶお世話になってます」
「そうなんですか。なんか空気がピリッとして、少し怖かったです」
「しっかりしていますしね。でもよく知るようになると、かっこいい人だと思いますよ」
不器用な冗談も考えるとギャップ萌えです、と続けると、ベーグルさんがそっぽを向いてしまった。あれこれ失言?なんで?
ワタワタしているとドアが開き、サナさんが戻ってきた。
「お待たせ。入って良いわよ。あら?」
サナさんがこちらの空気に気付く。
「ありがとうございます。さ、行きましょう?」
「……はい」
ベーグルさんの後ろからドアを通り、サナさんの横を通る時に、こそっと耳打ちされた。
「女心はわかっておいた方がいいわよ?」
無理そうです。
お久しぶりですー
読んでいただきありがとうございます。
誤字報告も感謝です。
2024/10/21 投稿




