3-10(51)艦内見学 個室
ダンボール箱を廊下に出し、船室を1つ空にすることが出来た。代わりに廊下が通行止めとなったが、この先は倉庫と弾薬庫しかないので問題はない。
「意外と広いですね〜」
「まぁ色々な機能が詰まっていますし」
部屋を見渡しているベーグルさんを見ながら言う。と、ドアの方を見てベーグルさんの視線が止まった。
「質問いいですか?」
「もちろんどうぞ」
「このドア、頑丈すぎるように見えますが…」
おお、着眼点が鋭い。内心驚きながら答える。
「理由は2つあります。まず侵入者から守るため」
べシーさんもベーグルさんも真剣な目で聞いている。そんなに見つめられても困るんだが。
「そうそう無いだろうけれど、雪風が襲撃された時、避難できるような区画はいくつかあった方がいいので」
このドアは、そう簡単には破られない。
「2つ目は、この部屋が脱出ポッドを兼ねているから。このドアは気密性で、だから頑丈になっている」
他にもリビング横の船室など、普段よくいる箇所のそばには脱出ポッドがある。幸いまだ使ったことはないけれど。
「それは、もしこの艦が沈む時には、私だけ逃すってことですか!?」
「ちょっベーグル落ち着いて」
おぉ、べシーさんが慌てている。珍しい物を見れた。
「もちろん脱出ポッドはこれ1個きりではないですよ。僕の個人用の船室も同じようなシステムになっていますし、リビングの近くにもある。それはそれとして、いきなり脱出する必要ができたとしても、安全に出れるように、ってことです」
一度死んだような身だ。襲撃されて宇宙で行方不明になる覚悟はできている。でもそれは僕の覚悟であって、ベーグルさんの覚悟ではない。聞けば「覚悟はできている」と言うだろうが、それと実際死にかけるのは別だ。死にそうな目に遭って艦を降りるのならいいが、降りるチャンスもなく死なせてしまうのは嫌だ。
たとえ戦闘艦であれ、自分以外の人の安全は、仮にも艦長である自分が保証しなくては。そう思っていたら、べシーさんがニヤつきながらこっちを見ているのに気がついた。
「…何か」
「いや〜?過保護だね〜って思っただけ」
「はぁ…ベーグルさん。本当にこの艦に乗るつもりですか?見ての通り豪華ではないし、部屋だって狭いですよ?」
無駄だろうな、と思っても、万が一を期待して質問してみる。
「はい!安全に気を配っているようですし、確かに豪華じゃありませんけど…でもこれぐらいがちょうどいいです!もちろん艦長さんが許してくれればですけれど…」
「…そーですか〜」
これは覚悟を決めるしかないようだ。
読んでいただきありがとうございます。
誤字報告も感謝です。
2024/07/20 投稿




