3-2(43) 買い出し
僕の買い出しは、消耗品の補充だ。と言っても雪風の燃料や弾薬とかではない。あの演習は仮想だから実際は弾の1発、燃料の1滴ーは言い過ぎだが、中央コンピュータとの接続のための艦内電源の分しか使っていない。つまりほぼ減っていない。
たとえ減っていたとしても、カフディの様な工業コロニーの方がずっと安いので、物価の高いベイスヘでわざわざ買う必要がない。もちろん非常時は別だが。
ではどんな消耗品を買うのかと言うと、水食料や服などの、人間用の消耗品だ。こういったものは、多少値段をかけても質が良い方が安心する。悪い水飲んで宇宙で脱水とか笑えない。
買うものを大体メモしていたから、僕の買い物はすぐに終わった。問題はべシーさんの方だ。あっちへふらふら、こっちへふらふら…しかもついていかないと大声出して僕を呼ぶ。僕は保護者か何かか。
「おぉーい、こっちこっち〜」
「今行くからちょっと待って!」
僕も荷物を持ちながらべシーさんを追いかける。え、コロニー輸送システムはどうしたかって?あれは1店舗ごとで輸送してるんだよ。
簡単に説明すると、僕が買った水食料その他は全部同じ店で買ったから、1つの箱に全部詰め込まれて送られている。当然配送料も箱1個分。
ところがべシーさんのようにあちこちで小規模の買い物を繰り返すと、それを持つか、店の数だけ配送料を払うかの2択となる。配送料だって安くはない。ここは商業コロニーで宛先は海軍基地だ。短距離とはいえ宇宙空間も運ぶわけだし。
あとは見た目セルフレジ、機能ポストみたいなシステムもある。通称宅配ボックス。広場とかの公共空間に設置されている。手持ちの荷物と料金を放り込めば、1つの箱に収めて送ってくれるやつ。小規模な買い物を繰り返したとは、最終的にこれを使って、両手いっぱいの荷物を送ってもらうことになる。
で、べシーさんは笑顔で紙袋を僕に押し付けてきた。宇宙時代にも紙袋って存在するんだな。
「最後は宅配ボックス使うけど〜、もっと買うつもりだからそれまで持ってて!」
結局男女で買い物する時、時代が変わっても男は荷物持ちらしい。でも最初に差し出された荷物を受け取った時、驚いた顔をされた。
「ありゃ、本当に持ってくれるんだ。[自分の荷物は自分で持て]ぐらい言われると思った」
「それは持たなくても良いって事ですか?」
「いいや、おねが〜い」
持ってほしいなら余計なこと言わなければ良いのに。ところでコレ何が入っているんだろう。
「これ割れ物だったりしますか?」
「いいや〜多少乱暴でもへーき」
そうですか、と言いながら紙袋を肩に掛けていると、べシーさんが何か言った。
「君ふつーに優しいよね」
「何か言いましたか?」
「いーや、何でもない。次行くよ!」
歩き出したべシーさんについて行く。これは長くなりそうだ。
男女差別と偏見まみれです。まぁあんなに荷物持った男性なんて、もとから創作の中にしかいないのかもだけど。あいにく買い物デートなんて相手すら居ないんで…創作だから見逃してもらえるとありがたいです。
読んでいただきありがとうございます。
誤字報告も感謝です。
2024/06/21 投稿




