2-23(40) 演習 終了
使える設置式レーダーがあらかた破壊されたので、索敵を雪風本体のレーダーで行う必要が出てきた。駆逐艦サイズの艦に載せられるレーダーなんで、設置式と比べるとかなり性能が悪い。そんなレーダーでも、遅いミサイルや無誘導なロケットなら発見できるし、見付けてしまえば避けることができる。
「しっかしこれは酷い」
思わず声が漏れる。そう簡単には陥落しないように考えた小惑星基地が、ほとんど破壊され尽くしている。それなりの大きさの司令部はまだ無事そうだが、それも「まだ」だ。いつ爆散するか分からない。
「おうっ!?」
突然船体がガクッと揺れ、進路がずれる。反射的に被害ランプを確認するが、どの区画も正常だった。つまり、この揺れは被弾によるものではない。
とにかく艦を動かそうとする。本来ならエンジンの寿命を縮める非常出力を出して、船体を強引に動かす。が思ったほど加速しない。しかし非常出力を出した意味はあった。少し前まで雪風がいた空間を、駆逐艦のビームが通過していた。
「いつの間に…」
すぐに周りレーダーを見るが、何もない。しかしカメラを見れば、小惑星の影からのぞいている駆逐艦の主砲を見ることができた。動きづらい原因も分かった。どこからか、アトラクターの青いレーザーが伸びている。
「このっ!」
そのうちの一隻に主砲を合わせ、弾を撃ち込もうとする。しかし発射する瞬間に艦が揺れて、砲弾は明後日の方向に飛んでいった。あーあ、僕もよくやる戦術だけれど、やられる側になると凶悪さがよく分かる。
こちらの攻撃が当たらない事が分かったのか、小惑星に隠れていた敵艦が出てきた。警備艦隊の標準駆逐艦や巡洋艦だ。こちらも精一杯回避軌道を取るが、アトラクターに引かれ、思うように動けない。
「どこからっ!」
被弾部位が増え、さらに機動性が悪くなる。艦内図の被害ランプも緑黄赤とカラフルだ。
当たらない主砲を諦めて、発射管からミサイルを飛ばす。そのミサイルが加速し艦から十分に離れる前に、ビームが当たって爆散した。艦が揺れる。外側の精密機器が衝撃で壊れる。被害ランプが消灯し、外側の区画が破壊されたことを示す。
強引に艦を回す。舳先に当たったビームが穴を開け、空気が抜ける。赤色点滅している被害ランプが、その区画の状態異常を伝える。
衝撃を受け、被害ランプが全部消えた。ランプだけじゃない。モニター、画面、宙図、全部消えている。
「撃沈判定か…」
シミュレーション上で、雪風は沈んだ。
マイペースに…
読んでいただきありがとうございます。
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2024/06/15 投稿




