2-15(32) 同郷
「で、なんで着いてくるんだ?」
クローバーの要望通り「お願いしますクローバー様」と言い道を教えてもらったのはいいのだが、なぜかクローバーが僕の隣を歩いている。
「この後の模擬戦の攻略法を教えてもらうためっす」
「教えるわけないだろう…」
「冗談っす。いくらべシーちゃんと仲良くても、部外者を1人で歩かせない方がいい、ってことっす」
あぁなるほど。確かに食堂に行く時「私の目の届く範囲」なら問題ないって言っていたな。つまり誰かを監視につけないといけなかったのか。
「ここっす」
17と書かれたドアの横で止まる。窓みたいな物がなくてもわかるのは、やっぱりちゃんとした軍人さんなんだな。この海軍基地を自分の家みたいに、どこに何があるのか把握しているようだ。
ドアを開けて、ドックの中に入る。係留されている雪風に、無意識のうち「おはよう」と声をかけた。返事があったような気がした。
「…これ、船っすよね」
「サルベージ艦だし当たり前に宇宙艦だが?」
クローバーが発した疑問の意味がわからない。
「そうじゃなくって、プロペラで進むタイプの…いや、なんでも無いっす」
そこまで言われて気づく。雪風は、艦の腹の方に武装がない。艦の後部に液体上での推進機が付いている。これら特徴は、他の宇宙艦には無い。
惑星上での船にしか無い特徴だ。
「貴女は…」
「なんすか?」
「見つけると幸せになれるという植物を知っていますか?」
「!!」
「シロツメクサという植物で、その葉は通常3枚。しかし稀に見つかる葉の変異体は、葉が4枚。この変異体の呼び名を知っていますか?」
「四葉のクローバー…」
確信する。クローバーは地球を知っている。それどころかジンクスまで知っている、ということは…
クローバーがまっすぐこっちを見つめていることに気がついた。
「雪風の艦長さん。あなたも[地球]出身だったりするっすか」
「ええ、あなたもですか…」
どうやら僕とクローバーは、同郷出身だったようだ。
「いつまで地球を覚えていますか?」
「ハッキリとはわからないっす。でも情勢なら少し」
聞くところ、僕がいた時代とそこまで差がないようだ。ついでに生年月日を聞くと、僕よりもクローバーの方が遅いらしい。今の世界で目覚めた日がわからないから、年齢については知らないし、聞いてもいないが。
「クローバー、っていうか名前も自分でつけたんすけどね。幸運に恵まれるようにって。前の名前は書きづらい上に、こっちだと異質っすから」
クローバーは自分の名前に関して、そう言った。
「僕は地球を探している」
腰掛けていたコンテナから立ち、雪風を見ながら言う。
「もし何か役に立ちそうな物があれば、教えてほしい。こっちからも教えるよ」
「了解っす先輩!!」
クローバーが隣で跳ねた。
「…先輩?」
「生まれが私より前っすから!」
えぇ…そんなんでいいんか?
「あ、べシーちゃんに呼ばれたから行くっす。また後で!!」
そう言うとクローバーは17番ドックを出て行った。
…にしても僕の他にも地球出身者がいるとは。驚きだな。
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2024/04/06 投稿
2024/04/07 ドック番号ミスってました…17番ドックに統一します。




