2-10(27) であい 情勢
あれはいつだったか。細かい日時は忘れたが、雪風に大きな戦闘もなく、弾薬の使用期限が近づいてた頃ってのは覚えている。
その時には宙賊をまとめられる「親玉」がいて、色々大変だった。というのも、元々宙賊は多数で群れず、なんなら宙賊同士でやり合ったり、警戒網などは数がなくて作れていないところがあった。そんな宙賊を実力でまとめ上げる「親玉」が現れると、独裁的な指揮で宙賊同士の協力体制を作り、そのせいで被害が増えたり、彼らの母港である「違法コロニー」の捕捉が難しくなる。所詮実力で押さえ込んでいるだけだから、手配で始末したり、内部抗争で親玉がいなくなれば、宙賊はバラバラになるが、今回の親玉はうまく隠れているらしく、賞金はうなぎのぼりだった。
僕としても散々だった時期だ。掃討しづらくなった分普通の宙賊の賞金も上がるが、救難信号に駆けつけてみても残骸しか無く、徒労に終わったことも多い。
そんなある日だった。いつもの哨戒中、採掘地帯からの救難信号を拾った。採掘艦が襲われるようになってから、護衛をつけた採掘チームでの作業をするグループが増えたが、指示の食い違いや傭兵の信用の無さ、単純に宙賊の物量など、さまざまな要因により護衛ごとやられるパターンもある。僕のできることは、1隻でも多くを救うために急ぐことだけだった。
採掘地帯にワープアウトした時、まず目に飛び込んできたのは傭兵艦の残骸だった。やはり攻撃力の強いやつから狙われたらしい。今までは護衛持ちと言うだけで抑止力になっていたが…行動が大胆になっている。
次に目についたのは、1隻の採掘艦だった。珍しく生き残りがいて一瞬ホッとしたが、その横をビームが通り抜ける。慌ててマップを見ると、1隻の採掘艦を5隻ほどの宙賊が取り囲んでいる状態だった。
おかしい、そう思った。友軍の信号を出しながら戦闘に割り込み、ついでにいい位置にいた1隻を無力化する。救難信号の時間から考えて、しかも護衛を蹴散らせる戦力を相手に、何故1隻だけ撃破されずにいる?
考えながらも手は止めない。投射機から通信とワープの妨害用の爆雷を投げる。まともな艦ならあまり影響はないが、通信系があまり良くない宙賊艦は、一時的とはいえ送受信ができなくなる。ワープ妨害はその名の通り。通信妨害は最近投げ始めた。逃げられたり、まとめ上げているだろう「親玉」に、雪風のことを知られるのはあまり良くない。
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2024/03/20 投稿




